会計と真実性

イギリスの1844年会社法

十分であって公正な貸借対照表について規制した最初の公法律

  ↑

どのような一般原則を持って、事業の会計を実施することの理由とし、あるいはそれについての指針としてきたか?

1884年以前において想定されていた会計の機能

商人の諸勘定(ワーダー・トンプソン『会計士大全』1777年、JW・フルトン『英・印簿記』1800年、ジョン・メーアー『近代簿記』1800年、P・ケーリー『簿記原理』1801年)

商人に対して、事業の成果と財政状態についての現在性のある情報を絶えず提供するものでなければならない

真実な財政状態を表示する一つの種類の財務表

  ↓真実なるがゆえ

会社自体にとっても、会社の社員および債権者にとっても、等しく公正な財務表

×真実な財政状態がいくつもある

・「公表目的のための」〈真実な〉財政状態

・「経営目的のための」〈別で、しかも真実な〉財政状態

真実な財政状態の表示が可能なルールとは?

トンプソン、メーアー、ケーリーの文献

財の手元有高を原価で評価すべきであると主張

それ以前それ以後(ハーストクラット・ステファンズ『イタリア式簿記』1735年、リチャード・ヘイズ『完全簿記』1741年、ロバート・ハミルトン『商学通論』1788年)

資産の売却市場価格が妥当な評価方法

「現在の価格」(メーアー、モリソン)

・市場に存在する多様な商品項目を現在価値で示した一覧表

・多くの大商業都市において、この種の一覧表が、週に1,2回一般に公表されていた

在庫品の市場価格

富または富有度の測定値に、したがって債務支払能力、ないしはそれとは別な第三者との取引能力に適切

市場価格

商人の真実な財政状態の表示のために妥当な基礎

1844年以降において想定された会計の機能

19世紀中葉以後

株式会社への投資額、投資者数および債権者数が急速に増大

  ↓

会計の理想的な目的ないしは機能についての記述のなかに何らかの変化が生じた?

財務諸表の機能

企業の財務的事実の真実な表示

・企業の財政状態について定期的に「真実を告げた」ことがすでに実証されている資産評価のルールを確立することによって、自分たちが行った理想的機能についての記述を一貫して展開することを怠ったこと

  ↑

経営者、投資家ないしは債権者が、自らの行動の指標として財務諸表上の数値を利用する際の、その利用の仕方についての確たる記述がほとんど見当たらない

・財務諸表に対する責任は、取締役および役員に帰属すると考えられていたために、彼らが何らかの方法で、企業にとって良いことであるとか、株主にとって利益になるだとか、一応の口実を設けて、諸規則を自分で作り出し、それを正当化してゆくこと

 ↑

確固たる歯止めが何ら加えられていなかったこと

多数かつ多様な状況下における、多数の会社の多数の取締役

 +

何が真実かつ公正な表示であるかを判断する自由

=極めて多様な規則ないしは規則の前提条件

⇒混乱

財務諸表の機能に関する法の認識

実務会という混乱の世界

機能についての「理想に関する」記述

→効果を発揮すると期待することはほとんどできない

事業の世界

適切な財務的事実を発見することのできる理想の世界はない

イギリスの裁判所が下した諸判決

財務諸表

株主または債権者のいずれかに対して誤報を与えるようなものであってはならない

種々の異なる規則

会社の事業について真実かつ正確な財務諸表が得られるなどという含みはなかった

財政状態についての計算書を解釈するにあたって、絶対に欠かせない事項の一つ

日付

→特定日付における真実な記述

現金の額、売掛金の額、負債の額は、いずれも当該日付における「真実な」額

現在性をもたない金額も、期待値も

当該日付における真実な額ではない

 

<参考文献>

R・J・チェンバース著、塩原一郎訳『現代会社会計論』創成社、19774