外資系企業の税法

1)税制改革の歴史

戦後の税制改革の歴史を概括

1950

国民党時代の煩雑な税制を整理統合した

流通勢と所得税が合わさった工商業税は依然として残存していた

1953

社会主義経済の発展に伴う流通構造の変化による流通、工商税の修正が行なわれた

1958

左翼思想による工商税の統一化と簡素化が行なわれ、土地改革のため農業税の統一化が図られた

1973

文化大革命による資本主義的工商税の煩雑性排斥があり、工商税の再統一が行なわれた

1980年代

1978年三中全会の国内経済活性化政策と対外経済開放政策により、税制改革が開始された

1994

1993年三中全会の経済改革方針により渉外税制と内国税制の統一化が図られ、中央政府税と地方税を分離する分税制の導入が決定された

1980年代の税制改革

国内経済活性化政策、対外開放政策と密接に結びついていた

国内経済活性化政策

企業自主権の拡大と経済責任制の導入が検討

経済責任制

工場長の導入、経営請負制度の導入、破産法の制定等によって実施

対外経済開放政策の変遷

合弁企業優先

沿海地域戦略

輸出振興と先端技術の導入

生産型企業の重視

3次産業の門戸開放

基本政策が税制改革に与えた影響

国内経済活性化政策

国営企業の利改税があり利潤上納制から納税制への移行

  ↓

中国企業の法人形態別の企業所得税法が体内税法として創設

1994年の税制改革

1993年三中全会の経済改革方針によるもの

社会主義市場経済化政策が基本政策

社会主義市場経済化

マクロ・コントロールが重視

市場機能による資源の適正配分を目標

租税制度、財政制度、金融制度、企業制度、価格制度における中央統制管理が強化

租税制度改革

分税制の導入による中央財政の強化、体内税制と渉外税制の統一化等を目的

財政制度改革の課題

財政の複式予算化、公共予算、国有資産経営予算、社会保障予算の独立化、銀行借入でなく国債発行による財政赤字の補填等

金融制度改革

金融政策決定機構の創設、人民銀行の中央銀行家、政策銀行としての国家開発銀行と輸出信用貸付銀行の創設、専用銀行の商業銀行化、農村と都市の協同組合の銀行化等

為替制度

二重為替制度制から為替レートの統一、全国為替調整センターの確立、中央銀行の市場介入による中央統制管理棟により準変動相場制への移行

企業制度改革

国有企業の経営改善として行政と企業の分離、所有と経営の分離の徹底化、経営権、人事権、生産量決定権、価格決定権等の自主権の強化

組織改革として台中国有企業の全額出資会社か、有限会社化、株式会社化が実施

小規模国有企業については経営請負制、経営リース請負制、協同組合化が検討

総公司の持分会社化、大企業のグループ化

価格制度改革

統一価格の限定化、自由価格の増加、生産財の二重価格制の廃止等

労働制度改革

賃金分配体系と社会保険制度の見直し、労働契約制の普及と就職斡旋制度の確立

↑の基本政策に基づいて1994年の税制改革の方針

税制改革の基本原理

税法の統一、租税負担の公平性確保、税制の簡素化、合理的な分権性、理に適った分配関係、分配構造の規範化

1980年代の税制上の諸問題

租税の不公平製が存在

例)個人所得税:外国人と中国人でまったく別の所得税法が適用

例)流通税:体内税法と障害税法で不公平性があり市場競争を阻害する要因

市場競争の阻害要因

企業種類別の企業所得法

国利企業、集団企業、私営企業と外資系企業では基本税率も異なっていた

税制の統廃合の必要性

同種類の税法が重複

同種税法間のアンバランスが基本的に存在

例)中国企業:利改税の矛盾

税引後利益の上納額の負担が企業によって偏重
税法の名目上の税率は高いが、実際の税負担は低いという現象

租税徴収管理上の不備

権限の中央集権化と地方分散化が拮抗

徴収手続が不明確、不徹底

中央政府を無視した地方政府の減免優遇措置

中央政府と地方政府の租税収入が地方に偏重

政府と企業の個人の所得分配も合理的ではなかった

税法の国際化も問題

→各国の租税条約との矛盾を解消し、税法も合理的にする必要

2)現行租税体系

外国投資企業、外国企業、外国人に対してのみ適用されている税法(3つ)

外国投資企業及び外国企業所得税法、都市不動産税暫定条例、車両船舶鑑札使用暫定条例

現行の租税体系:1994年の税制改革により骨格

中国の租税体系

1980年代に始まった国内経済活性化政策と外資導入政策

 ↓に基づいて

外資導入政策を国内経済と切り離して促進する必要性

→中国企業と中国人のための国内税制と外資系企業と外国人のための渉外税制に完全に分離した形で体系が構築

 ↓

外資系企業による経済発展が次第に国内経済に重要な影響

中国企業が次第に産業競争力を持つ

中国企業と外資系企業に分離していた租税体系

課税の公平性等の観点から多くの矛盾が顕在化

1994年の税制改革では初めて内外税制の統一

流通税の分野

中国企業

増値税、営業税、産品税、特別消費税等が課税

外資系企業

工商統一税が課税

流通税におけるないし企業と外資企業の税法の統一

→それまでの流通税はすべて廃止

新たに増値税、消費税、営業税の暫定条例が公布

中国企業と外資系企業の両者共通の税法

個人所得税の分野

中国人と外国人で全く異なる個人所得税が適用

1994年の税制改革で統一

企業所得税の分野

内外税法の統一の前段階

国有企業、集団企業、私営企業等の中国企業の種類別に存在していた内資企業の企業所得税法

⇒統一

税率も外資系企業と同一の税率

将来の企業所得税における内外税法の統一の基礎を確立

分税制の確立

分税制

それまで地方政府にのみ設置されていた徴税機関

→中央政府の徴税機関である国家税務局と地方政府の徴税機関である地方税務局に分離分割

中央政府が自ら国税等を徴税できる国家税務局を創設

徴税体制を中央徴税機関と地方徴税機関の2つに分けた体制

税金

国税(中央税)、地方税、中央地方共通税に明確に区分

分税制の導入

それまで地方政府が徴収していた税金を請負上納制等の仕組みにより中央政府に上納されていた税収

→中央政府が直接国税等を徴収することにより、中央政府の税収を恒常的に増加させる

中央政府と地方政府の税収比率

4:6→6:4

社会主義市場経済化路線

財政と経済におけるマクロ・コントロール機能が重視

中央政府の財政収入の安定とその地方政府に対する財政の再分配機能を強調

中長期的な中西部開発、貧困地域への財政支援等を促進するため

→中央政府と地方政府の税収構造を改革したもの

国税(中央税)と地方税または中央共通地方税の区分

まだ確定していない

今後の税制改革等を通じてさらに変動していく可能性が高い

 

<参考文献>

近藤義雄『中国現地法人の経営・会計・税務 第2版』中央経済社、20021月、P8995