アカウンタビリティーの国民意識

会計へのアプローチ

黒澤清

・制度論的アプローチ

・公理論的アプローチ

・批判論的アプローチ

・情報論的アプローチ

ヘンドリクセン

・演繹的アプローチ(公理論的アプローチ)

・帰納的アプローチ

・実用主義的アプローチ(慣習法的アプローチ)

・伝達理論的アプローチ

・論理的アプローチ

・行動科学的アプローチ

・社会学的アプローチ

Accountability Approach

経営者の奉仕責任の意識(Accountability, Stewardship

英米においては国民性的背景を持った一つの社会通念

我が国においてはそのような観念なり通念は存在しなかった

Accountability

正確な訳がない

→この言葉が示している観念を社会が必要と認めてこなかった

共和的な都市の産物

絶対主義的村落社会のものではない

アカウンタビリティーと会計

アカウンタビリティー・アプローチ

会計の本質的目的がアカウンタビリティーにあると考え、そこに依拠しつつ現行の会計実務を理解し、改善していこうとするもの

Accountability

利害関係者が企業に対して資金や財産を提供している事実に基づいて、企業がこれら委託された財産を保全し、適切に管理・運用し、財産受入から払出までの間において、委託された財産がいかに運用・保全されたかの顛末を説明する義務もしくは責任

会計の担っている最も基本的な職能

会計主体の財産の運用保全に対するこの会計責任のいきさつを明らかにすること

記録、計算、報告といった一連の会計行為

それ自体の目的を有しているものではない

会計の本質的目的は外部的に付与される必要がある

→付与された会計の本質的目的に従って、記録、計算、報告がなされる

会計の本質的目的

アカウンタビリティーの明確化

→この目的を遂行するために記録、計算、報告がなされる

R.J.チェンバース

Accounting

報告客体が限定されず公衆一般を想定

情報伝達的(Informative Communication)な目的

Accountability

特定の人もしくは団体を想定

感情伝達的(Emotive Communication)な目的

共通の語源を有する

会計の主観性からの開放および個人相互間または社会の伝達様式における役立ちは、この見解の採用の結果として生じるものであると明確に区別

井尻、AICPA1973

アカウンタビリティーこそが会計を社会や組織における他の情報システムから区別するもの

アカウンタビリティーを本質的目的とした会計の性格

アカウンタビリティーに本質的目的を求める会計

会計システムによって提供される情報の背後

アカウンタビリティー関係が存在する

情報開示の基準

・情報の利用者に「知る権利(Right to Know)」があるかどうか

・情報の提供者に「会計責任(Accountability)」があるかどうか

報告主体と報告客体との関係は必ずしも強調的であるとは限らず、利害の衝突の可能性が潜在的にもしくは顕在的に存在

  ↓

会計情報の提供者たる経営者の判断や恣意性をできるだけ排除

会計情報の作成(基本的要因)

高度に標準化

検証可能なもの

客観性能力と検証能力を兼ね備えた数値

歴史的原価、投価原価

意思決定を本質的目的とした会計

情報利用者の意思決定において有用であるといった属性のみで情報選択(制度化)

必然的な利害の衝突がない

→経営成績を実際より良く見せる必要がなく、また、自己の利益を強調する必要もない

P.バード

非監査義務

会計情報

釈明能力を有する数値で記録されることが要請

その基本的資料もしくは検証力ある客観的証拠(Verifiable and Objective Evidence)を提供

信頼性を高める

委託者および受託者以外の独立の第三者による基礎的資料もしくは証拠に基づく会計記録の成否もしくは適否の判断

監査の機能

従業員、代理人、受託者および代理人が彼らに委託された価値に関するアカウンタビリティーを果したかどうかの決定に関するもの(保証機能(Assurance Function

アカウンタビリティーを本質的目的とした会計

監査はプロセスにおける最終過程

意思決定に奉仕することを目的とした会計

情報監査

利用者の有用性を強調した結果

経営主体の利害

利用者に公表される情報の内容を密接に結びついているという事実
公表される情報
経営主体の経営結果を実際よりもよく見せる方向に修正される傾向にあるという事実

アカウンタビリティー概念とその拡大化の論議の整理

原始的な意味でのアカウンタビリティー

委託された財産がいかに管理・保全されているかの顛末の釈明責任を意味し、委託・受託の関係(Stewardship Relation)から生じるもの

委託財産の管理・保全を内容とするスチュワードシップ(Custody Stewardship)に基づくアカウンタビリティーの概念

  ↓

経営受託(Managerial Stewardship)すなわち営利企業の利潤追求活動とそれから生じた利益を正確に測定し、その結果を体系的な情報として伝達し解釈することを内容としたアカウンタビリティーへ

アカウンタビリティー概念を厳密に区分(四形態:P.ローゼンフィルド)

(1)現金の物的保全に限定するもの

(2)資産の利用に関する報告と理解するもの

(3)資産の効率的・経済的もしくは有効的な利用に関する報告と理解するもの

(4)期待目標達成に関する報告を理解するもの

・原始的アカウンタビリティー;(1)、(2)

・伝統的会計;(4)

⇒スチュワードシップ=アカウンタビリティー関係は成立する

企業環境の変化に即応した現代的アカウンタビリティーの在り方

・多様化した利害関係者に焦点を合わせ、アカウンタビリティーの客体の量的拡大論としてアプローチする方法

・企業活動の複雑化に焦点を合わせ、アカウンタビリティーの内容の質的拡大論としてアプローチする方法

 

<参考文献>

北川道男『英国会計制度の国際化』199210月、高文堂、P1127