目標達成に役立つ予算管理制度
中長期経営計画、年度予算管理制度を採用しない理由
@過去の数字をまとめることで精一杯で、計画を立てる時間・人材・ノウハウが無い
A計画が有効に機能する方法論が確立していない
B特に予算編成段階のシミュレーション・システムを持たないため、その編成に時間がかかり、合理性が確保できない
1.中古車販売業における計画経営の実態
中長期経営計画
組織に長期的な方針と経営目標・経営戦略を与えることにより、短期的な行動に指針を与えて「成り行き経営」や「思いつき経営」の危険から会社を守る効果
策定のプロセスを通じて経営上の問題点の発見を容易にするほか、経営幹部に参画意識を与え、社員全員を動機付ける
企業予算
将来のT何期の一定期間における一企業の全体及び各部門の経営目標、それを達成するための経営計画・方針等を、財務的な数値を通して表現する総合的な期間企画
予算管理制度
企業予算そのものだけでなく、その編成過程での全社的な経営目標と各部門目標及び各部門相互間の目標の調整活動、策定された予算を実際に達成させるための指揮・監督活動、予算と実績の差異分析を通じた是正措置など
2.159万円の“RAV4”と原価企画の考え方
原価企画
主として製造業における製品企画において、企画ないし開発・設計段階で原価逓減の可能性を模索し、目標とする利益を確保しようとするマネジメントの手法
フィードバックよりもフィードフォワードを重視
最初から目標利益を確保できる原価を企画して、そのため企画ないし開発・設計段階で、部品終了・工程の削減と単価の両面から、原価逓減の可能性を徹底的に追求する
「最初に販売数量と販売価格ありき」
3.原価企画の考え方の年度予算への応用
CVPの構造計画を立てるためのアプローチ
@予測費用+目標利益=計画売上高
外部環境(マーケットの事情)よりも自社の期待を優先
予測される費用と自社の目標利益の合計額をまかなうには、これだけの売上高または粗利を稼ぐ必要があるというアプローチ
×:計画はどうしても精神主義的または観念的になりやすく、掛け声はよいが、実際の結果は大幅な目標不達という危険
A計画売上高−予測費用=目標利益
×:自社の従来のコスト構造を変革する「原価企画」の発想が欠ける
B計画売上高−目標利益=許容費用
外部環境(マーケットへの適応)を重視して計画した売り上げから目標利益を控除し、許容費用を企画するアプローチ
予算編成段階でフィードフォワードに目標利益の達成方法まで企画するので、予算の期中変更を最小限にとどめるとこの期待
4.予算管理制度の目的ないし役割機能
予算管理の目的ないし役割機能
@予算の計画機能
A予算の調整機能
B予算の統制機能
中販店における予算管理制度の目的ないし役割
@支出を統制し、浪費と不正の防止に役立てる
A予算・実績の差異分析により、作業能率や利益の管理に役立てる
B管理責任者別の業績管理に役立てる
Cセグメント別の業績管理に役立てる
D戦略的プログラミングや目標管理と明確で論理的な関連を持たせ、目標達成に役立てる
5.計数中心の予算は有効に機能しない
6.参加型予算と店長、工場長への権限委譲
参加型予算
強制によるよりも動機付けの方法によるほうが、自らの自覚を高めて利益目標等の達成に結びつきやすい
・目標管理制度
・予算管理制度
トップダウンの目標とボトムアップの目標を調整することが必要
7.複数の店舗と整備部門をもつ中販店の予算体系
目標管理に役立ち、経営目標達成につながる予算の体系
@予算は、売上高だけでなく、売上原価、販売費及び一般管理費、営業外損益、設備投資と資金に関する予算を含む、総合予算であること
A予算は、全社合計でなく、各店舗、工場、間接部門の部門別予算を総合したものであること
B予算は、年間合計ではなく、季節変動をも折り込んで月別予算に配分されること
C目標利益は、社長からトップ・ダウンで示された目標と、各部門が自発的に打ち立てた目標とを調整したものであること
D売上高予算は、台数と平均販売単価だけでなく、売り上げの内訳項目別に細分し、また車種別・価格大別などのセールス・ミックスを考慮して、戦略または改善目標が明確に出来るものであること
E売上高予算は、売上予算×平均粗利率によるのでなく、売上原価の内訳項目別に細分し、また車種別・価格大別・粗利区分別・販売地区ないしチャネル別などのセールス・ミックスを考慮して、戦略または改善目標が明確に出来るものであること
F販売費及び一般管理費予算は、過去の意思決定により決定済みで短期的には変更できない固定費(コミッテッド・コスト)と、戦略的な経営判断により変更可能な固定費(マネジド・コスト)とに区分して編成され、管理されること
8.総合予算の編成とそれによる管理のプロセス
9.予算編成 管理のシミュレーション・モデル
実務的には
あらかじめ固定費や共通費負担額などの概算額をつかんでおき、売上高予算と売上原価予算について何度かシミュレーションを繰り返す
10.販売予算編成に当たっての留意点
@外部環境=マーケット=を認識する
A商品力と価格戦略
B顧客満足
Cプロセス重視の販売活動へ業務革新
D店長の真似人メント力、リーダーシップ、意思決定力が売上高を決める
*営業マン一人ひとりの個人的能力
商品知識・事務能力・販売話法など知識・技術に関連する能力
人間としての基本的な教養・接客態度・意欲・家庭環境などの精神的側面
⇒総和として結果に表れる
売上原価予算
注意すべき点
在庫の長期化による値下げにより、当初計画した粗利率を達成できない商品が発生する
対処法
1.小売中心主義を貫き、正常な財庫期間を超えた長期在庫は値下げしても商品化のコストを追加しても、最後は小売する
販売努力により成果と在庫の値下損を区別するべき
2.一定の正常な在庫期間を超えた在庫は長期在庫として認識し、オークションでの業半による在庫調整ないし在庫入れ替えをする
値下損は業販損益として具現化
業販損益を予算化することで販売努力による成果と在庫の値下げ損を区別できる
仕入高予算
計画仕入と在庫管理
目標利益
利益の絶対額 or 利益率
本社費及び部門共通費を負担する前の利益 or 本社費・共通費負担前の利益
許容費用
<参考文献>
柏原信夫『中古車販売業の経営・経理ハンドブック(第2版)』中央経済社、2000年、P267〜290