予算統制に伴う問題とその解法

組織の存続

社会的需要を有する財および用益を効率的に供給し続きけることができるか否かに依存

組織目的の達成

経済計算に基づいた組織活動を通してなされる

組織活動の優位性

活動の量的側面に主たる関心を持つ経済的合理性の概念および過程に深く関係

経済的合理性

手段と目的およびその関係を問題にする

目的の内容を特定化することまではできない

予算概念

経済的合理性から直接発生したもの

組織活動の経済的効率の向上を第一義的な目的

予算

計量的に表現された計画

個人および組織活動の有効性および能率の改善に貢献するための財務的手段

組織活動を財務モデルによって包括的に表すことができる

→組織計画を統一的な意思共通の尺度によって評価するだけでなく、計画の達成状態を計数的に捉えることが可能

計数的かつ体系的な調整を通して組織活動の効果的な達成を可能にする総合的な経営用具

予算

係数によって組織活動を表している

→財務モデルによってはあく可能な要素だけに基づいて問題点ないし好ましさの程度を指摘するに過ぎない

組織構成員が組織活動から受ける心象や状況認識といった非会計的な要素を予算から知ることはできない

予算の機能の発揮

×単なる組織設計図ないし「無情で非人間的な数値の羅列」

○組織行為成員の積極的な同意によって支えられていなければならない

予算の効用

組織で働く人々に対して最大限の質的活動を可能にする時間および財政的保証を与えること

会計情報の限界

組織

複雑な部門化ないし専門家という手段を通して克服するところ

組織は大規模複雑化

包括的な統制システムが必要

システムが有効に機能するため

情報の伝達が必要不可欠な要素

組織における情報の流れ

フォーマルな情報システム

唯一の包括的なシステムが会計情報システム

専門化された諸活動および資源に見られる異質な要素を結合し、そして比較することを可能にする「金額」という唯一の公分母を用いている

インフォーマルな情報システム

会計

業績に関する精密で明確な測定を行い、純利益という点数によって組織活動の結果を評価

計数によって表現できる要素に限定

→これだけによって適切な業績評価を行うことはできない

会計情報

問題点の指摘はできてもその原因を明らかにすることはできない

EX) 原価際の原因が当該部門の活動にあるのか、それとも他の部門の活動にあるのかを知ることはできない

会計責任と管理可能性とが一致していない

原因ないし過程より結果が重視される

会計情報システム

形式的合理性によって導かれた組織目的達成責任の可分性及びか賛成を基本的な前提

状況の多様性および豊富さを会計情報システムによって正確に把握することは不可能

各部門を単位として個別的に作成された会計報告書によって組織内に後半に存在する問題点ないし矛盾を指摘することはできない

組織構成員の行動

それが及ぼす全期間に渡って評価されるべき

将来の利益との対応において初めて意味を持つ

→初期に巨額の支出を伴うのに対してその効果が短期的に現れないプロジェクトは敬遠され、将来の利益が現在の費用によって否定されることになる

予算の二面性

予算

組織の業務予定を物量単位および金額によって要約した財務計画

種々の活動水準が費用・収益・現金流動に及ぼす影響を表す財務モデル

組織活動を改善するための経営用具

主たる目的

統制―計画に対する統制(フィードフォワード)および業績に対する統制(フィードバック)―にある

流動性および収益性という二つの矛盾する財務目的の統合に関係

相互依存の関係

財務流動性が確保されて初めて収益性はその意味を有する

収益性が確保されなければ財務流動性そのものの意味がなくなる

財務流動性

資金の一部を支払手段として留保

インプット環境から組織を守る緩衝装置の役割

収益性

資金を組織活動に投入して利益をあげること

組織目的の有効性と能率(アウトプット環境へ積極的な働きかけと組織活動の経済性)を問題にする

金銭的な要素

両者の統合を可能

予算の量的側面の確信的な要素

特定の組織目的が達成されたか否かの判断

組織の財務環境に基づいて決定

予算の量的側面

組織活動の成果を具体的に示した点数と密接に関係

予算編成

経済的論理(希少資源をもっとも有効に利用する方法の選択)と密接に関係している

予算の執行および統制

人生哲学、態度、感情、および専攻といった質的側面が重要な役割を果たす

人間行為の本質と深くかかわっている

予算は量的側面画質的側面と適切な関係を維持することができたときに初めて積極的な意味を有することができる

組織活動に関する的確な理解および正確な分析に基づいた予算

重要なコミュニケーション手段として機能

組織構成員間のコミュニケーション連結環の役割

組織による公正な評価

組織活動を二面側面(変化の程度(量的側面)、変化の方向(質的側面))から分析する必要

予算を業績評価の有意義なシステムとするため

前提条件として組織活動画質的用件を満足しているか否かを厳しく吟味する必要が

予算の行動的側面

二つの基本的な役割

設定された目標水準とそれに関連して発生する費用との間の調整を包括的に決定するための用具としての役割

実績測定および業績評価を内容とする統制過程における「ものさし」としての役割

予算

客観的で非人間的な記号

 ↓人間がそれを利用すると

各人の哲学および感情がそれに投影される

組織

特定の組織構成員の存在を必要とせず、それ自体が独自の生活と存在価値を持っている

組織構成員の交代は単なる職務担当者の交代を意味

業績評価

組織構成員の個人目的を達成する場合にも最も重要な要素

業績評価と個人目的との間の関係

業績の数量基準

組織活動の量的側面

明確かつ客観的

評価が容易

質的側面

曖昧で主観的

→業績評価において重視

⇒予算は組織構成員にとって拘束服以外の何ものでもない

欲求不満、疑惑、および敵対心を想起させる

組織

個人と組織との間の対立ないし不一致は避けて通ることはできない問題

上司の継続的な圧力によって根本的な解決を見ないまま押さえつけられてしまう傾向

組織構成員の職務への関心を失わせる

責任転嫁や利己的行動をもたらす

組織と個人との間の対立を拡大する

組織活動の質的改善における重要な課題

個人と組織との間の拮抗関係を緩和するための措置を見出すこと

個人行動

目的志向的

事故の希望、願望、意図、必要、および欲求などに基づいた独自の個人目的を持っているのが普通

組織

個人にとって単なる手段

事故の利益増大を可能にする好ましい個人的評価を獲得するための手段

組織構成員が直面する基本的な問題

事故の個人目的を有効に達成するために以下に上司に好ましいし印象を与えるか

客観的な業績評価基準

計数化できない業務および長期的な活動の結果を適切に把握できるところまで発達していない

組織構成員

業績評価に用いる数値基準に好ましい影響を及ぼす行動だけを選択するという利己主義的な傾向を示す

組織全体には逆機能になる行動をとる

予算

組織内の行動的な意味合いによって常に制約されている

行動的な意味合い

予算統制の目的を経済的論理だけに求めることは不可能にする

参加的予算

組織構成員による目的の受容および責任の拡大を促進するための重要なアプローチ

組織構成員の行動的な問題

個人行動と組織性かとの間の曖昧さにその原因

予算システム

組織目的の達成における制約を克服するための最善の方法を見出すのに役立つ

管理者と非管理者との間の敵対心および対立を生み出す圧力手段として機能

 

<参考文献>

伊藤善朗『予算統制システム―その有効性に関する研究―』同文館、1993年、P103117