7章 会計研究−学際的展開−

1.理論形成−文化と統合−

自然科学における発展のプロセス(ボナー)

・創造プロセス(膨張)

建設的でまた進歩的

・抑制プロセス(収縮)

創造プロセスのチェック、指導、および誘導の特質

発展の5つの側面(バラドウニー)

(1)起源

(2)進歩的分化

(3)体系化

(4)統合

(5)進歩的分離

会計教育

理論会計学と臨床会計学の分野の必要性

社会科学の側面における研究の分化の要請

2.会計パラダイムの源流

(1)情報化社会における会計の意義

ビーバー(1960年代終わり)

財務報告の最近の動向

(1)財務会計の重点が経済的利益観点から、情報的観点に移行しつつあること
(2)財務報告環境の複雑性と財務情報の専門家による利用が、以前より強調されるようになったこと
(3)財務報告制度の選択が、社会的選択の性格をもつことが認識されるようになったこと

  ↓これらの主張の指摘

(1)予測情報、情報の先取性の意義

(2)情報価値の認識

(3)社会報告会計への指向性

  ↓具体的傾向
(1)会計処基準の国際化傾向
(2)非財務的・定性的情報の重要性
(3)ミクロ・マクロ情報の総合
(4)情報のミニ化現象
(5)経営活動の社会性

(2)会計の制約要因

動態的役割(アーリントン)

 会計は、経済的効率性の受動的な用具であるという考え方を変えることが可能である。相ではなくて、会計の歴史は、技術的な合理性も必然的な発展をも反映することのないところの、経済的、政治的、偶発的な相互事象の複雑な巣として理解される。

会計の役割

 技術発展、国際化というような経済発展、政治的状況の変化、さらには社会・文化的環境要因の変化にみられる偶発的な事象の発生など、会計に対する多様な制約要因のあり方によって大きく影響される

(3)会計の基本的機能−富の主体間配合機能−

@富の配分機能

リトルトン

会計は経済学と統計学に最も密接に関係して発展してきたもの
 経済学は、富の創造および消費の場合の人間活動について、多くの異なったまた時として相反する理論を総合した原理の一体であると考えられる。その関心の中心は富である。富に関する側面は、会計の関心の中心においてもまた見出される。

資源の効率的な配分に関する会計の役割

利用者−情報提供アプローチあるいはエイジェンシー理論として分類される

会計専門家の新しい役割(レーマン)

 会計専門家と行政当局、経営者、株主、年金投資家、時価所有者、節約的預金者、保険政策支持者、その他の多くの利害関係者との間の論議は、結局、所得と富の配分についてのコンフリクトである

将来指向的会計の役割

 政府、企業、個人という経済主体が、グローバルな意味での限定された環境資源の公正で適切な活用を最大目標に掲げて、その中で最大公約数としての市民生活向上に向かって所得、さらには富の最適な配分を指向していくもの

文化会計

 そうした目標を指向して政府、企業、個人という経済主体による積極的な情報開示が要求される

A経済主体のパラダイム

会計(ブラメット)

 体系的な記号処理であって、それは個人、組織および社会が、(1)目的を表明し、(2)こうした目的を達成する努力を監視するのを支援するための計画やフィードバック情報を提供し、(3)合法的な利害関係者に対して、高度に真実性のある業績・状況会計責任情報を提供すること

会計の情報機能(レーマン)

 個人、企業および政府が社会資源を効率的に配分する場合の決定的なリンクである

対象

企業および政府等の非営利組織を網羅
  ↓
これまでのミクロ的な会計観からミクロ組織相互の関連性、全体的(マクロ的)な組織の効率性という方向への概念の推移
→伝統的な受託責任会計概念から効率的な資源配分への重点移行という指向の流れ

会計学の研究対象

これまで
主として経済活動の担い手としての企業
高度情報化社会
 企業、政府さらに個人の三者の相互的均衡発展を指向するような組織のあり方、すなわち存立要件が要請

会計研究

 伝統的な企業中心から、これを政府・自治体および非営利組織や国際化を指向する個人の市民生活をもその対象に組み込むことが必要
ex)政治家を含む公職者の資産公開や政治資金の管理問題、個人生活に関する経済的意思決定における会計の役割など

伝統的な会計学

 技術的側面においても、また研究領域の範囲においても社会科学の経済、社会、心理学等に比べて、著しく狭小なもの

3.文化的レベルと会計

(1)企業・政府・市民−トライアングルの変遷−

歴史的背景

(1)明治維新以後、特に第二次世界大戦終結までを軍事対立の時代とすれば、政府が企業や市民を支配した時代

(2)現代は経済対立の時代、そこでは支配力を持った企業とこれを抑制しようとする政府との対立の時代

(3)国際化時代の将来の課題としては、経済主体感想後すなわち政府、企業と並んで、注目を浴びるにいたった市民の三者の競合、すなわち文化対立の時代への家庭

民主的社会経済の活性化

(1)金権政治を中心とする強力な中央集権政治からの脱却

(2)政治資金供給源としての企業の体質の改善

(3)巨大な企業としての政府、自治体および諸種の非営利組織の財務面における公正性と適正性や市民生活に立脚する研究領域の積極展開

 

<参考文献>

木下照嶽、中島照雄、柳田仁『文化会計学−国際会計の一展開−』税務経理協会、20026