インタビュー 情報サービスの財務・会計を巡る研究会・会長(早稲田大学教授)加古宜士氏 変化を前提にした契約を考えよ

ユーザー企業とITベンダー

「目に見えない」ソフト/サービスを間に挟んで

互いが疑心暗鬼に陥っていた

研究会

「騙し合いでも指摘なのか」と感じるほど妙な雰囲気

ITベンダー側

「俺たちは悪くない。ユーザー企業が『こんなことができればいいなあ』だけで発注するからだ」

ユーザー企業

「何かといえばコンサルティングになり、金額が発注時よりどんどん高くなる」

IT取引の特異性

優れたシステム

ユーザー企業とITベンダーの共同作業によってできている

問題

適切な原価計算の基準と収益の計上基準があいまい

⇒コストをどう決めるか

適切な原価計算の基準

IT業界ではどんなコストがかかっているかが全く不明瞭

理由

ソフト開発という製造業的名業務

コンサルティングというサービス的な業務

→渾然一体

⇒区別しなければコストは把握できない

システム構築の全プロセス

コストを把握する仕組みを真剣に考える必要

収益の計上基準

複数の形態が区別されていない

1.ハードやパッケージ商品などを扱って仲介手数料を得る商社的な取引
2.パッケージ商品を自社開発する製造業的な取引
→明確に区別されなくてはならない

IT業界の実態に対応した会計基準

研究会が出したガイドラインを参考

→企業会計基準委員会が作成

ソフト/サービスの特性

「目に見えない無形物」、「要求に合わせ変化する」

→国内では通用

⇒「日本企業は袋の中で手を握るようなアンフェアな体質だ」とのイメージ

→国際競争力の面で負ける

*建設や自動車といった他業界も経済活動の大部分は無形化

「要求に合わせ変化する」

変化したならしたで、その事実を記録しようということ

会計基準における収益の考え方

取引事実の検証

変更に伴う経済活動が存在したという証拠

実現主義

完成引渡時の条件を決めておくこと

→契約上の対価が確定した時点で一連の取引が決着したことになる

IT業界向けの会計基準作りの課題

 

参考文献:加古宜士「インタビュー 情報サービスの財務・会計を巡る研究会・会長(早稲田大学教授)加古宜士氏 変化を前提にした契約を考えよ」『日経コンピュータ』637号、日経BP社、20051017