国際会計基準と中国の会計基準との比較研究

IASに関する概況

会計基準

財務諸表を作成するための規則

ある企業の財務書評が特定日の財政状態及び特定年度の営業成績と財政状態の変動の結果を、継続的に適用され、一般に認められた会計原則に準拠して、適正に表示しているという場合に依拠するルール群

国際的な会計基準

各国の会計基準の国際的な統一化

企業会計基準群の地方語からの脱皮

IASC

世界の80余か国、会計士団体120余がメンバー

*台湾の会計士団体は1984年にそのメンバー

  ↓原因

中国の会計士団体は入っていない

国際会計基準の国際的調和の流れ

図1(P74

中国における会計規制の構造

1949年の建国時

旧ソビエト連邦をモデルにして制度化された統一的会計制度に若干の修正が加えられたもの

計画経済の要求により制定されたもの

1985年会計法の公表

順次、会計制度が整備

ex1986年「中外合併企業会計制度」が制定

それに対して会計条例などがあわせて約160部制定
→経済改革の進度とともにこのような会計規制が適応できない

1989年「会計基準草案」

1990年「会計基準綱案」

1991年「基本基準草案」

1992年「企業会計準則」「企業財務通則」

企業会計準則の実行規則として業界別企業会計制度も同時に実施

改革された中国の会計規制

会計法、企業会計準則、企業財務通則、業界会計制度、企業会計制度及びいろいろな「条例」や「規定」などが存在

新会計法

すべての社会部門に適用

構成

総則、会計計算、会計の監督、会計機関と会計員、法律責任付則(30条)

現行会計規制体制

図2(P75

会計計算規制体系計画

図3(P75

具体準則内容

図4(P75

準則と通則

中国における会計制度と財務制度の体系のつながり

通則

財務管理規制

準則

会計計算規制

→両方で企業の資金に関する調達・使途及び記録ルールを制限

通則の目的

企業財務行為なし財務活動を規制し、財務管理と経済計算を強化する(通則第1条、第2条)こと

「企業財務管理の基本原則は、企業内部に財務管理制度を確立し、健全に運営し財務管理の基本的に仕事を改善し、企業の財政状態を忠実に表示し、法律によって国家税収を計算し上納し、投資者の権益が侵されないことを保証する。」(通則第4条)

準則

会計情報の質量を編住して、会計要素の認識・計量・記録と報告などを原則的に規制

通則

企業意思決定的なもの

通則と準則

一部が重複

企業内部における部門の設立

財務部門と会計部門が分立

会計部門は財務部門の下

準則や通則レベルの下

業界レベルの企業会計制度と財務制度

IASと中国会計基準の比較…類似点

1.会計方針の開示(表1(P77))

中国固有の前提

会計記録方法には「会計記帳には貸借記帳法(複式簿記)を使う」(準則第8条)

少数民族自治区では当該少数民族の文字を同時に使ってもよい。外資系企業の増加傾向を考慮して、外国投資企業と外国企業は同時に今ひとつ別の外国の文字を使ってもよい(準則第9条)

2.棚卸資産(表2(P80))

定義(IAS2号)

a)通常の営業過程において販売を目的として保有されているもの

b)このような販売を目的とする清算の過程におあるもの

c)原材料や貯蔵品の形態をとり、生産の過程または役務を提供するにあたって消費されるもの

(第4項)

測定原則と方法

原因

株式会社のなかの国有資産の保護

原価配分方法

図5(P81

個別法

適用範囲や標準処理及び代替処理の条件などをつけていない

IAS34

a)棚卸資産の評価にあたって採用した会計方針
b)棚卸資産の帳簿価額の合計金額及びその企業に適した分類ごとの帳簿価額
c)正味実現可能価額で計上した棚卸資産の帳簿価額など

IAS36項(後入先出法の場合)

a)第21項に従って得られる額と正味実現可能価額とのいずれか低い額
b)貸借対照表日現在のカレントコストと正味実現可能価額とのいずれか低い額

3.減価償却の会計(表3(P83))

中国会計の特徴

減価償却の範囲については詳しい

4.収益

中国基準は収益についてIAS基準から取り入れた

IAS改訂基準の前に完成

IAS改訂基準と少し違う

表4(P85

5.流動資産及び流動負債の表示

中国基準はIAS13号から移したもの

会計概念、基本原則、財務諸表の構成

中国基準とIASは相違点があまりない

資産、負債、資本などの定義

IASと対応

財務諸表作成資料の完全性・検証可能性及び内容の真実性・正確性・完全性・明瞭性・適時性

IASCの枠組みと対応

貸借対照表・損益計算書の項目及び並び順序

国際慣行と対応

中国基準とIASの比較研究…相違点

概念、原則以外の細かい所では

違う点が少なくない

1.研究開発費

表5(P88

表6(P89IAS9号研究開発費のポイント

IAS

研究費…費用として処理

開発費…条件

→満足…資産として処理
→満足しない…費用として処理

中国

研究開発費の項目

会計上に示されていない

研究と開発とは分けない

これに関する費用

「株式会社施行会計制度」第56
→管理費用
「通則」第27
→管理費用

研究開発の費用

利益処分の3基金の一つとして企業発展基金
税引き後利益から積み立てたもので資本勘定科目に入る(日本の法定準備金のようなもの)

→会計上の国際慣行に比べてかなり異なっている

2.工事契約

中国

進行基準と完成基準の選択適用

表7(P91

3.退職給付コスト及び退職給付制度

中国の退職給付制度

国際慣行とかなり違う

→会計処理も違う

表8(P93

中国の退職金給付システム(3つ)

@退職の前に退職金を積み立てない方式

A死ぬまでの月払い

B退職保険基金の少ない「企業自身保険」方式

退職給付

1993年前

「現支現記」の方法で会計処理
退職の前に退職金を積み立てないで、退職したときから毎月、企業が退職者に支払うもの
定年の年齢にならなければ、退職金がつかない
退職金
中国の定年補助金
その月に発生した費用
営業外支出に記入

1993年:準則の実施

営業外支出から管理費用として記帳
勘定科目
労働保険費

労働保険費に入っている退職費(二つ)

掛金建制度

契約社員に対するもの

給付建制度

一般社員に対するもの

2種類の従業員が存在

二重退職給付制度も存在

4.IASにない中国基準(表9(P95))

株式

額面:資本金

額面超過金:資本準備金

額面超過金を広い範囲で使うつもり

無額面株式はないという実体

国家資本金

国有資産の保護さらに国有企業の支配を強化することが原因

利益準備金

純利益の8%を留保

期間費用の項目

特別

労働組合経費…2%

社員教育経費…1.5

職員福利費…14

留保割合が政府で限定

招待費も売上高によって支出上限が限定

製造原価と期間費用の分離

製品原価への乱計上や責任不明瞭などの歴史

利益を会計構成要素の一つとする(中国の特色)

利益を会計要素に例示し、計算方法を明示する

中国の会計実務伝統を継続すること

経営結果の明瞭性の確保

統計の便宜

利益配分を重視すること

営業利益の計算公式

営業収益−営業原価−期間費用―各種税と付加費

各種税と付加費

付加価値税、資源税など税金と教育付加費

→企業にとって多税種、社会負担(中国の特色)

中国の会計報告

財務諸表と財務状態説明書

財務諸表

貸借対照表・新駅計算書の月次、四半期と年度の作成及び多数の明細表

企業の対外と体内会計報告を分けない

生産原価と費用の明細表

利益分配表(利益処分使途)、比較財務諸表(前期、後期比較方式)の作成

財務状態説明書

中国特有のもの

企業の清算経営状態、取引契約の実行状態、利益の実現と分配状態、資金の増減と回転状態、いずれかの計画と予算、税金の上納状態、各種財産、物質の変動状態、当期あるいは時期の財政状態に重要な影響をもたらす事項と説明すべきその他の事項

→企業経営成績を評価・予測

企業経営者の責任の評価

マクロ経済計画の情報として、政府への役割が重視

*会計計画(予算)と予測の開示

国際会計基準では認められない

中国の特色

5.中国基準に採用されていないIAS

表10(P97

併合中や改定計画中のIAS

中国にとってはその併合、改訂の定着あるいは完成まで待つつもり

IAS12号、17

中国では税務の会計が統一されていない

基準作成の時間差の問題

1993年後半改訂公表されたIAS

1992年作成された中国基準はIAS旧基準に一致

関連会社の概念を明文化していない

中国「準則」の適用対象は広すぎる

今後の中国会計基準の方向

中国基準の主な欠点

中国会計基準とIASの相違点

財務諸表の範囲は広すぎ、内部管理用、外部報告さらに政府への報告も含まれる

「基準+規定」はIASの「標準処理+代替処理」と違う

記帳方法は科学性が足りない

個別規定が多いので、準則の一括性はなくなる

個別規定も合理的ではない

中国独自基準がまだ多い

中国基準に未採用のIASがまだある

会計管理上にも問題

会計監督が厳しくない

会計事務管理職には門外漢が多い

会計従事者の参加意識が弱い

複数の行政機関から企業に対して命令が出る

会計規定に属しないものが会計規制に入る

その他

会計規制の適用対象問題

財務制度の制約問題

具体準則と業界会計制度の矛盾

会計員の二重身分(監査と会計の未分業)問題

中国会計基準の改善

IASからの準則内容の補充

会計基礎の設立

有価証券に対する低価基準を適用

棚卸資産に対する低価基準を適用

1年以内に期限がくる長期債務を流動負債に入れること

研究開発会計の設立

会計規制体系の整備

会計準則の置かれている現状

図6(P101

中国の現実の経済体制

市場経済に完全に移行したわけでなく、計画経済の側面が混在する一種の二重構造

“三次元”の会計報告書体系

1の次元
社会全体公開への報告書
2の次元
政府官庁への報告書
3の次元
企業社内報告

 

<参考文献>

董力為「国際会計基準(IAS)と中国の会計基準との比較研究」『流通経済大学大学院経済学研究科論集』第3号、19957