中国会社法上の監査役会制度

統一会社法制定まで

1949101日:中華人民共和国が樹立

建国後

旧ソ連の計画経済モデルに従って、国有経済体制を打ち立て、国有経済において厳格な指令計画制度が実行

その後

非社会主義的経済セクターはほぼ消滅

公有制が国民経済全体の唯一の基盤

経済主体:国有企業が主要形態

計画経済下

市場原理は否定

物質の生産から分配に及ぶすべての経済活動を国家の指令によって機能

企業における統治制度は行政のコントロールに組み込まれていた

企業においては所有と経営が分離していない「両権混在」

「両権混在」がもたらす一つの重要な帰結

政府が国家管理者の機能と国有資産所有者としての機能を同時に持ち、国家管理の行政機能と企業の経済機能が混在していること

→「政企混在」

企業における所有と経営という両権の不分離

企業に対する過重な行政的管理

→経営に対する無責任という状態

⇒経済的非効率性が生じた

企業の経済機能を無視

企業の経営・監督管理は行政機関によって行なわれる

→中国の企業が大半が赤字

70年代後半から始まった経済体制改革の中心課題

過重な行政的管理による非効率的国有企業に対する改革

企業改革において導入された経営方式

株式制は他の経営方式より大きく発展してきた

株式制試行

様々な会社をいかに規制すべきかという新たな問題に直面

株式制導入の試行

一部の地方ととりわけ経済特別区及び沿海経済技術開発区に指定された地域

→地方立法が先行

この時期の株式制導入の試行活動

全国的な統一政策及び法規制がなく、株式会社に対して、特に株式会社における重要な内部機関制度に対して正しい認識が形成されていないという状態

株式制試行企業に対するアンケート(1989年:国務院法制局)

多くの会社

株主総会、取締役会、監査役会といった機関制度を採用しておらず、非規範的なものばかり

一部の会社

株式会社の内部機関として株主総会と取締役会のほか、一般に「監査役」ではなく、「監査役会」があるという認識

19931229日:第8時全国人民代表大会常務委員会第5回会議

中華人民共和国最初の統一会社法が採択

*監査役会

中国の会社の内部における新たな機関として法定

統一会社法における機関構成

中国統一会社法

法定機関

株主総会、取締役会、監査役会

株主総会

会社の最高意思決定機関

取締役会の構成員たる取締役と監査役会の構成員たる監査役の選任・解任権、会社の定款の制定及び変更権、会社の計算書類に対する審議・承認権、投資計画及び利益分配の決定権など(第103条)

取締役会

会社の業務執行機関

株主総会の決議の実施、業務執行に関する意思決定及び実施、経理の選任・解任など

取締役会において選任される取締役会会長

会社の法定代表者

取締役会において選任される経理

会社の業務執行の担当者
会社定款の規定又は取締役会の授権に従って、会社の日常経営管理の統括を行う

監査役会

会社の監督機関

一定の割合で株主と従業員代表によって構成

株主総会に対して責任を負う

会社の定款及び法規定に基づいて取締役会及び経理の業務執行を監督

会社の財務会計を監査

会社の利益及び会社の業務執行の適法性を保証

小規模会社

免除(第52条、第124条)

中国における会社の機関

旧三会(党委員会、従業員代表大会、組合)

 ↓

新三会(株主総会、取締役会、監査役会)

統一会社法上の監査役制度

監査役会は取締役会との関係

両者が同列な機関であると位置付けられている

株式会社の場合

会社の規模の如何を問わず、すべての株式会社において、その設置が要求

監査機関の職務権限

監査役の単独でお行使しうるものではなく、監査役会によって行使される

*監査役の取締役会への出席権を除く

監査役会

完全な合議制機関

監査役会の構成員

3人を下回ってはならない(第52条、第124条)

監査役の任期

取締役と同様に一回の任期につき三年を超えてはならない

任期満了の際再選を妨げない

監査役の資格

制限なし

一定の欠格事由及び兼任禁止の規定(第57条、第58条)

監査役の選任・解任

従業員代表大会によって選任・解任

*従業員代表の監査役

取締役と同様に株主総会の普通決議において出席株主の過半数をもって選任・解任

中国会社法上における監査役会制度の問題点

統一会社法上の監査役会に関する規定の欠如

監査役会による監査の実効性が妨げられて、効果的な監査が行なわれていない

 

<参考文献>

王炎「中国会社法における監査役会制度の問題点について―日本法との比較を通じて―」『龍谷大学大学院法学研究』第3巻、20019月、P2123