会計の二つの機能をめぐる諸問題

1.利害調整と情報提供

(1)利害調整会計

利害調整

財産・持分をめぐる当事者間での取るか取られるかの利害の線引き

取引ないし契約の当事者間における会計

商法に基づく会計(商法会計)

商法の株式会社会計

取締役vs株主

株主vs株主

株主vs債権者

計算において絶対額が重要

1円まで正確に記録することが要求

(2)情報提供会計

情報提供

企業の状況についての情報を提供すること

目的

情報を提供されたものが企業に関して正しい判断と意思決定が行われるようにすること

近世イギリスの会社会計から

株式の公開→会社の会計情報の公表を促した

証券取引法

有価証券の取引の公正・円滑を目的とした取引法

証券取引法会計

投資者への情報提供を目的とした制度

絶対額ではなく概数による計算・表示が許され得る

企業の全体像についての情報提供であれば、なにも1円までの正確性は必要ない

2.財産の物量計算と資本の価値計算

(1)財産の管理(単式簿記)と資本の管理(複式簿記)

単式簿記

注目する個々の財産の管理を大切にする

複式簿記

全体的に管理するための簿記

全体的な財産=資本

資本中心主義は複式簿記の宿命

(2)物量計算と価値計算

財産の管理に関する計算の基本=物量

物量計算

利害調整会計にとって不可欠

情報提供会計

価値計算

財務諸表が中心

資本

○価値

×物量

本質

価値である利益を求める
効率を競う

3.静態論と動態論

静態論と動態論の論争(資産負債アプローチと収益費用アプローチの論争)

資産・負債・資本の状態の把握を中心ないし起点とすべきか、それとも収益・費用・利益の計算を中心ないし起点とすべきかという論争

貸借対照表が先か、それとも損益計算書が先か

きっかけ

利害調整と並んで情報提供が浮上したこと

4.包括主義と当期業績主義

5.保守主義の原則と重要性の原則

(1)保守主義の原則

保守主義

損失は早めに利益は遅めに計上する会計処理方法を選択するという原則(先憂後楽の原則)

・情報提供会計に不可欠の原則ではない

・利害調整会計に不可欠の原則である

保守主義の原則

企業の継続に資する重要な原則

利害調整会計

企業の継続を仮定し、保守主義の原則を遵守する必然性がある

(2)重要性の原則

会計情報の利用者にとって重要性の乏しいものについては、本来の厳密な会計処理または財務諸表の表示によらないで、簡便な方法によることも認められるという原則

 

利害調整会計

重要性の原則など論外

情報提供会計に固有の原則

6.評価差額の資本直入

 

<参考文献>

安藤英義「会計の二つの機能をめぐる諸問題―利害調整と情報提供―」『一橋論叢』第127巻第4号、20024