企業会計原則における一般原則の会計学的考察

我が国の企業会計原則の立案にあたっての参照文献

サンダース、ハットフィールド、ムーア「会計諸原則の要約」

ex)資本取引と損益取引との区別の原則、継続性の原則、保守主義の原則

一般原則についての会計学的考察

現在企業会計原則に列挙されている諸原則を離れて、一般原則はいかに在るべきかまたその具体的内容はどうなければならないかを論ずる取り組み方

AAA会計原則における「基本的仮定」等の一般的命題

アメリカにおける会計原則の討論

AAA1936年から1957年までにわたって公表してきた一連の会計原則

1936年「試案」

株式会社会計特にその財務報告書表の意義、それに対する会計原則の役割・意義・課題、この「試案」の体系的構成、及び、そこでの会計原則展開にあたっての基本的な仮定もしくは態度が表明

1941年「改訂版」

「序言」

「改訂版」作成の意図、その体系、会社会計諸表の意義及びその当面する諸困難、会計原則もしくは基準の役割・課題など

「基本的仮定」

財務諸表の役割の達成を可能にするための会計原則ないし基準の必要性及びそれに対する首尾一貫した理論性の要請とが簡潔に表明

1948年「改訂版」

1941年の「序言」における態度が5つの命題に要約されて簡潔に再確認

1957年「改訂版」

「序論」

会計とくに株式会社の財務諸表の意義・役割などを述べてそれがこの会計原則要綱の対象である旨を指摘

「基礎概念」

会計諸慣行の根底にある「企業実態」、「企業の継続性」、「金額的測定」、及び「実現」の諸概念について

AAAの会計原則

会計とくに財務報告諸表の役割、その役割の達成にあたって会計原則が必要な理由、会計原則の提言に関する基本的な態度などが明らかにされている

*我が国の企業会計原則のように

損益計算諸原則と貸借対照表原則とを通ずる一般原則をまず冒頭に掲げるという形式をとっていない

企業会計原則

その成立及び発展の背景との関連などがとくに重視されている

AAA

財務諸表の社会的機能の重要性、及び、会計原則(基準)の立場あるいは基本的性格についての主張が積極的に表明されている

→企業会計原則

単にその成立あるいは修正の事情を説明する前文的なものだけでなく、財務諸表の機能とくにその社会的、公共的意義と会計原則の立場とを明確に表明する部分が、その本文の内容に盛り込まれるべき

イリノイ大学グループの報告書における公準の規定

会計原則の研究においてみられる顕著な傾向(1970年代)

公準、基礎概念、仮定などを元にして試みられる演繹的なアプローチ

→具体的な処理及び表示の原則を提示する前に、公準あるいは基礎概念を提示する

ex)イリノイ大学、スタディー・グループ「基礎的会計公準及び会計原則」

会計原則一般的基礎となる降順あるいは基礎概念を企業会計原則の本文の中に盛り込むことの必要性

我が国の企業会計原則

会計原則そのものが直接的に、実務からの機能として導き出されるという理解

→演繹的アプローチに見るような、公準あるいは基礎概念の提示は不要

演繹的アプローチを我が国の企業会計原則にどう取り入れるかが我々の課題

企業会計原則の一般原則に対する若干の提言

(1)その「序言」その他の形で冒頭に、会計とくに財務諸表の役割、会計原則の意義、その役正常の困難性、会計原則がとるべき立場などを説明している部分をその本文の一部に挙げているものが見受けられるが、この点をわが企業会計原則においても考慮する必要はないのかという点

(2)公準、基礎概念その他をかかげて演繹的に会計原則を取り上げようというアプローチが一般的に有力となり、会計原則の冒頭でもそれらに触れようという試みが増えているが、この点を我が国の企業会計原則でも考える必要なないか

→企業会計原則における一般原則とは別個の問題

一般原則

単に共通的な原則というだけの意味ではなく、基本的あるいは基礎的な原則という意味を含んでいることが明らか

原則の一般原則

あまりにも単純であって、他の原則を説明するカギを提供するという面が弱い

同じ水準で並列的に考えることが適当でないと思われるものが混在している

ex)資本取引と損益取引との区別

→期間損益計算中心の会計構造観などにも触れるべき

ex)正規の簿記の原則、名両性の原則、継続性の原則及び一般原則

これらの技術的一般原則については、技術の発展によってその意味内容が変わってくる

ex)真実性の原則と安全性の原則

単純にこれを併記しても無意味
→両者の関係が明らかにされねばならない
会計の役割は何かを論ずること
→この両者に関係が明らかになる

モデル

T 序言

株式会社財務報告諸表の意義と会計原則の機能

U 財務報告会計の公準及び基本原則

実際発生取引の原則、実現の原則、収益費用対応の原則、利益と資本との区別の原則、など

V 財務報告会計の技術原則

正規の簿記の原則、表示明瞭性の原則、継続性の原則、単一性の原則など

 

<参考文献>

中島省吾「企業会計原則における一般原則の会計学的考察」『会計』第100巻第1号、森山書店、19717