商法(会社法)
T会社の概念
会社とは、商法または有限会社法によって設立された、営利社団法人である(52条、54条、有1条)
営利性
会社は営利を目的とする事を要する(52条、有1条)
1.会社が対外的企業活動によって利益を得
2.その企業活動から生じた利益を社員に分配する
社団性
会社は全て社団である(52条、有1条)
社団〜共同の目的を有する複数人の結合体
*合名・合資会社は社員数2人以上(94条4号・147条)
*株式・有限会社は1人会社可
法人性
会社は全て法人である(54条1項、有1条2項)
会社自体が社員とは独立して権利義務の帰属主体となる
U会社の種類
4種類の会社
合名会社
会社債務につき会社債権者に対して直接連帯無限の責任を負担する無限責任社員のみからなる会社である(80条)
合資会社
無限責任社員、および、会社債権者に対して直接ではあるがその出資額を限度とする有限責任を負担する有限責任社員からなる二元的組織の会社である(146条・157条)
株式会社
社員は直接会社債権者に対し責任を負わず、ただ各自が有する株式に引受価額を限度とする有限の間接責任を負担するにすぎない社員(株主)のみからなる会社である(200条1項)
有限会社
株主と同様に自己の出資金額の限度において責任を負担するにすぎない間接有限責任社員のみからなる会社である(有17条)が、特定の場合、社員は填補責任を負担する(有14条・15条・54条)
人的会社、物的会社
人的会社
社員数が少なく、社員の個性が濃厚であって、社員の人的信用が会社の信用の基礎となる
物的会社
社員数が多く、社員の個性が稀薄で、会社財産が信用の基礎となる
公開会社、閉鎖会社(閉鎖的会社・非公開会社)
定款で株式の譲渡を制限している会社(204条1項但書)を閉鎖会社、それ以外の会社を公開会社
親会社、子会社
親会社とは、他の株式会社の発行済株式総数の過半数にあたる株式または他の有限会社の資本の過半にあたる出資口数を有する会社をいい、当該の他の会社または有限会社が子会社である(211条の2第2項)
大会社、中会社、小会社
大会社〜資本5億円以上、負債200億円以上(商特2条)
小会社〜資本1億円以内(商特22条)
V会社の能力
会社は法人であるから(54条、有1条)、全て権利能力(法人格:権利義務の帰属主体となる資格)を有する
性質による制限
自然人に特有な身体生命に関する人格権および親族法上の権利などを享有しえない
法令による制限
会社は他の会社の無限責任社員となることができない旨を定めている(55条、有4条)
定款の目的による制限
会社の権利能力は定款所定の目的(63条1号・166条1項1号)によって制限を受ける
W株式会社の概念
株式会社の本質的特徴
1.社員の地位が均等に細分化された割合的単位を示す株式の形式をとる
2.社員は株式の引受価額を限度とする出資義務を負うだけで、会社債権者に対して何ら責任を負わない(株主有限責任の原則)
株式制度
株式とは、均等に細分化された割合的単位の形をとる株式会社の社員たる地位をいう
株主有限責任の原則(間接有限責任)
株主は、会社に対して株主の引受価額を限度とする出資義務を負うにすぎず、会社債権者に対して何ら責任を負わない(200条1項)
資本制度
資本の意義
資本とは、会社財産を確保するための基準となる一定の計算上の数額をいう
資本制度の趣旨
会社財産を確保するため
資本制度の概要
株式会社は資本の額は1000万円以上(最低資本金制度:168条の4)
登記と貸借対照表により資本の額を公示する(188条2項6号)
*資本は計算上の数額であって、会社が現実に保有する会社財産とは異なる
資本三原則
資本充実・維持の原則
資本の額に相当する財産が現実に会社に拠出され、かつ、保有されなければならないとする原則
資本不変の原則
いったん定められた資本額を任意に減少することを認めないとする原則
資本確定の原則
資本の額に相当する株式の引受がすべて確定していなければならないとする原則
*新株発行の場合には、資本確定の原則が放棄されている
株式
株主平等の原則
株主は、株主としての資格に基づく会社との法律関係については、原則としてその有する株式の数に応じて平等の取扱を受ける
*議決権(241条1項)、利益配当請求権(293条本文)にて解釈
株式譲渡自由の原則
株主は、その有する株式を原則として自由に譲渡することができる(204条1項本文)
必要性〜資本維持の原則より
許容性〜所有と経営の分離により(254条2項)問題なし
機関
所有と経営の分離(254条2項)
意義
機関とは、会社の意志および活動を実現すべきものとして、法により定められている自然人または会議体をいう
@
株主総会
総株主により構成され、会社の基本的事項につき会社の意志を決定する株式会社の必要的機関(230条の10)
A
取締役会
取締の全員をもって構成され、その会議における決議によって業務執行に関する会社の意志を決定するとともに、取締役の職務執行を監督する株式会社の必要的機関(260条1項)
B
代表取締役
会社の業務執行を行い、対外的に会社を代表する株式会社の必要的常設機関(261条1項)
C
監査役
取締役の職務執行の監査にあたる株式会社の必要的常設機関(274条1項)
商法特例法上の大会社については、監査役会すなわち監査役全員によって組織される調節機関が要求される(商特18条の2第1項)
新株発行に関する制度
資本充実の原則、資本充実規制より、募集設立の出資に関する規定の多くが新株発行に準用されている(280条の14)
計算に関する制度
営利性と会社債権者の利益保護との調整を図るため、会社の純資産から資本や準備金などの額を控除した配当可能利益の範囲において利益配当を行わなければならない(290条1項)
資本減少
資本減少とは、会社財産を確保するための基準となる一定の計算上の数額である資本の額を引下げることをいう(375条以下)
T総説
会社設立に関する立法主義
一般会社〜準則主義
準則主義とは、法人の設立に関し予め一定の要件を定め、この要件を充たすときに、当然に法人格を取得する立法主義である
特殊会社(ANAなど)〜特許主義
株式会社の設立
会社の設立とは、法律の規定する手続によって法人たる会社を設立させることである
会社の設立手続の概観
実態形成手続
・
根本規則の確定(定款の作成)
・
社員の確定
・
会社財産の確定
・
機関の具備
法人格取得手続
・
設立登記(57条、有4条)
設立の方法
発起設立
会社設立において発起人のみが定款に定めた「設立ニ際シテ発行スル株式総数」(166条1項6号)を全部引き受けて会社を設立する方法
募集設立
発起人がその一部の株式のみ引受け、残部の株式については一般から株式引受人を募集して会社を設立する方法
*設立手続の流れ
発起設立
1.
定款の作成(166条)
2.
株式発行事項の決定(168条の2)
3.
発起人の全部引受(170条1項)
4.
発行価額全額の払込(170条1項)
現物出資全部の履行(172条)
5.
取締役・監査役の選任(170条)
6.
裁判所の選任した検査役による調査(173条)、取締役・監査役による調査(173条の2)
7.
設立登記(57条)
募集設立
1.
定款の作成(166条)
2.
株式発行事項の決定(168条の2)
3.
発起人の一部引受(169条)
4.
株主の募集(174条)
5.
申込(175条)
6.
割当−引受の確定(176条)
7.
発行価額全額の払込(177条1項)、現物出資全部の履行(177条3項)
8.
創立総会の開催(180条)
9.
取締役・監査役の選任(183条)
10.
裁判所の選任した検査役による調査(181条)、取締役・監査役による調査(184条)
11.
創立総会における報告・変更(182・185条)
12.
設立登記(57条)
U発起人
発起人の意義
発起人とは、定款に発起人として署名したものをいう(判例・通説)
発起人の資格
制限はない
*無能力者、法人も可
発起人の数
1人でもよい(165条)
発起人組合
民法上の組合(民667条)
定款に署名した者のみが組合員
設立中の会社
意義
完全な会社の原型(前身)と解し、設立中の会社と成立後の会社とは実質的に同一のものである(同一性説)
権利能力なき社団
設立中の会社の効用
設立中の会社は、形式上法人格を有さないから、発起人が会社設立のために取得・負担した権利義務は、形式上発起人に帰属する。しかし、それらの権利義務は、実質的には設立中の会社に帰属するものであるから、設立登記により会社が成立すれば、形式的にも当然に成立後の会社に帰属し、特別の移転行為も権利義務の承継手続も必要としない
設立中の会社と発起人組合の関係
発起人組合は、会社の成立によって解散する(民682条)
設立中の会社の機関としての権限内の行為については、設立中の会社の機関としてなすものと解される
V定款の作成
定款の意義
定款とは、実質的意義においては、会社の組織・活動に関する根本規則であり、形式的意義においては、このような根本規則を記載した書面である
定款の作成
発起人による作成(165条)
発起人全員が署名または記名捺印(166条1項)
公証人の認証(167条)
定款の記載事項
絶対的記載事項(166条1項)
定款に必ず記載する必要があり、その記載を欠くときは、定款全体が無効となる重要な事項
・
目的(1号)
・
商号(2号・17条)
・
会社の発行する株式の総数(3号)
・
額面株式を発行するときは1株の金額(4号)
・
会社の設立に際して発行する株式の総数ならびに額面・無額面の別および数(6号)
・
本店の所在地(8号)
・
会社が公告をなす方法(9号)
・
発起人の氏名・住所(10号)
相対的記載事項(168条1項)
定款に記載しなくても定款自体の効力に影響はないが、定款に記載しなければその効力が認められない事項
・
発起人が受けるべき特別の利益、および、これを受ける者の氏名(4号)
特別の利益とは、発起人の会社設立企画者としての功労に報いるために与えられる特別の財産上の利益であり、発起人の報酬と異なり、通常会社の継続的負担となるもの
・
現物出資者の氏名、出資の目的たる財産、その価格、これに対して与える株式の額面・無額面の別、種類および数(5号)
*現物出資とは、金銭以外の財産をもってする出資をいう
・
会社成立後に譲り受けることを約した財産、その価格および譲渡人の氏名(6号)
*財産引受とは、発起人が会社のために会社の成立を条件として、特定の者から一定の財産を譲り受けることを約する契約をいう
・
発起人が受くべき報酬の額(7号)
*発起人の報酬とは、発起人が設立の労務に対して一次的に支払われる金銭である
・
会社の負担に帰すべき設立費用(8号)
*設立費用とは、発起人が支出した会社の設立のために必要な費用
任意的記載事項
W株式発行事項の決定
株式発行事項の取扱
株式総数および額面・無額面の別および数、額面株式の1株の金額〜定款(168条1項4号、6号)
株式の申込期間、払込期日、払込取扱銀行など〜定款作成後に、発起人の多数決(民670条)
発起人全員の同意を要する事項(168条の2)
株式の種類および数(1号)
株式の発行価額(2号)
株式の発行価額中資本に組入ざる額(3号)
X発起設立と募集設立
発起設立
株式総数の引受(社員の確定)
設立に際して発行する株式総数(166条1項6号)の発起人による引受
方式〜書面(169条)
出資の履行(会社財産の確定)
・
金銭出資は、遅滞なく引受価額の全額の払込をなすことを要する(170条1項)
・
払込取扱金融機関においてなすことを要す(170条2項)
・
設立登記の申請の際に、その払込取扱金融機関の作成した株式払込金保管証明書(189条1項)を添付することを要する(商登80条10号)
・
現物出資の場合も、払込期日に出資の目的たる財産を全部給付することを要する(172条本文)
取締役・監査役の選任(機関の具備)
・
株式の引受後、遅滞なく(170条1項)
・
発起人の議決権の過半数をもって(170条3項)
*資本多数決(170条3項・241条1項)
・
3人以上の取締役を選任(255条)
・
取締役会を開いて、代表取締役を選任(261条1項、188条2項8号)
*最初の取締役の任期は1年(256条2項)
*最初の監査役の任期は1年内の最終の決算期に関する定時総会終了まで(273条2項)
設立経過の調査
検査役の調査
取締役は、変態設立事項(168条1項)を調査させるため、原則として裁判所に検査役の選任を請求しなければならない(173条1項)
*@現物出資および財産引受の定款で定めた価格の総額が、資本の5分の1を超えず、かつ、500万円を超えない場合(173条2項前段)
A現物出資または財産引受の目的たる財産が、取引所の相場のある有価証券で、定款で定めた価格がその相場を超えない場合(173条2項後段)
B現物出資または財産引受の目的たる財産が、不動産であって、定款に記載されたそれらの事項が、相当であることにつき弁護士の証明を受けた場合(173条3項)
@ABの場合は除く
取締役・監査役の調査
@会社の設立に際して発行する株式の総数の引受があったか否か
A株金全額の払込および現物出資の全部給付があったか否か
B現物出資および財産引受の目的たる財産の総額が少額であるか、取引所の相場のある有価証券であって検査役の調査を要しない場合(173条2項)において、財産の価格につき定款の定めた価格(168条1項5号、6号)が相当であるか
C不動産の現物出資および財産引受につき検査役の調査を受けることを要しない場合における弁護士の証明書(173条3項)を調査(173条の2第1項)
募集設立
株式の引受(社員の確定)
発起人による株式引受
会社が設立に際して発行する株式のうち1株以上を、書面により引き受けなければならない(169条、175条2項9号)
株主の募集(174条)
法定事項を記載した株式申込証の作成、申込はこれによらなければならない(175条)
株式の申込
株式申込の方法
株式申込証による(175条1項)
株式申込(引受)の瑕疵
心理留保においても申込有効(175条5項)
会社成立後、錯誤あるいは株式申込証の法定記載事項を欠くこと、もしくは、詐欺、強迫を理由として、その引受の取消を主張できない(191条)
*無能力者は可(民4条・9条・12条)
仮設人・他人名義の株式申込
他人の承諾を得ないで勝手に他人名義を使って株式申込をなした場合、商法は、実際に株式を申込んだ者に、株式引受人としての払込義務を負わせる(201条1項)
他人と通じて、その他人名義で株式申込をなした場合も、その他人と実際上の申込人に払込に関する連帯責任を負わせる(201条2項)
株式の割当および引受
発起人は株式の割当を自由に決定することができる(割当自由の原則)
割当により、株式申込人は株式引受人となり、払込義務を負うことになる(176条)
出資の履行(会社財産の確保)
株式の割当がなされると、発起人は遅滞なく、会社の株式申込証に指定した払込場所(175条2項10号)に、発行価額の全額の払込をさせなければならない(177条)
払込をしない場合、強制執行をすることができ、失権手続も定めている。
*現物出資の給付も同様、全部給付(177条3項・172条)
検査役の調査
定款に変態設立時効(168条1項)を記載したときは、発起人は、これについて調査をさせるために、原則として検査役の選任を裁判所に請求しなければならない(181条1項)
*発起設立と同様、173条2項・3項、181条2項については調査を受けることを要しない
創立総会
・設立中の会社の最高意志決定機関
・株主総会の規定が準用(180条3項)
召集
召集権者は発起人
払込・給付の後、遅滞なく召集(180条1項)
召集手続などは株主総会の規定準用(180条3項・232条1項・2項、233条)
決議方法
出席した株式引受人の議決権の3分の2以上にして、かつ、引受のあった株主総数の過半数に当たる多数(180条2項)
権限
単に設立手続の経過だけでなく、会社設立に至った事実上の経過及び会社事業の見込など、設立に関する一切の事項について発起人の報告を聴き(182条)、取締役および監査役を選任する(183条−機関の具備)
選任された監査役は、引受、払込・給付などについて調査し、創立総会に報告しなければならない
弁護士の証明書も同様
創立総会は、変態設立事項を不当と認めたときは、これを変更することができる(185条1項)
総会召集の通知状に議題として記載されてなくても、定款変更または会社の設立廃止の決議をすることができる(187条1項、2項)
Y変体設立事項に関する規制
発起人が受ける特別の利益及び報酬(4号、7号)
発起人が受けるべき特別の利益(4号)とは、発起人の会社設立企画としての功労に報いるために与えられる特別の財産上の利益であり、報酬(7号)とは、発起人が設立の労務に対して一時的に支払われる金銭である。
設立費用(8号)
意義
設立費用とは、発起人が支出した会社の設立のために必要な費用
規制の趣旨
設立費用は、会社設立のために必要な費用であるから、本来、成立後の会社が負担すべきものである。しかし、発起人の出費を無制限に認め、その費用をすべて成立後の会社の負担にすると、会社の財産的基礎が害されるおそれが生じる。
規制の例外
・
公証人の定款認証手数料および払込金融機関に支払う取扱手数料(168条1項8号但書)
・
設立登記の登録免許税
定款の記載を欠く場合の取扱
発起人が負担
会社成立後未払いの設立費用債務の帰属
現物出資(5号)
意義
金銭以外の財産をもってする出資
規制の趣旨
現物出資は金銭出資と異なり、出資の目的物たる財産の価格評価が必要である。その際に、過大評価して出資者に対して不当に多くの株式を与えるならば、会社の成立当初から、資本額にあたる現実の会社財産は保有されず、資本充実の原則に反し、また、株式引受人間での不平等も生じる
財産引受(6号)
意義
発起人が会社のために会社の成立を条件として、特定のものから一定の財産を譲り受けることを約する契約
規制の趣旨
財産引受においても、目的物を過大に評価し多額の対価を与えるならば、会社の財産的基礎を危うくし、健全な会社の設立を図るという法の趣旨に反することになる。また、財産引受が自由に認められると、現物出資の潜脱手段として利用される危険性が大きい
定款の記載を欠く場合の取扱
無効(168条1項柱書)
現物出資および財産引受に関する特例
現物出資および財産引受に関する検査役の調査特例
・
少額免除
資本の5分の1を超えず、かつ、500万円以内(173条2項前段、181条2項)
・
有価証券に関する免除
取引所の価格が定款で定めた価格以上の時(173条2項後段、181条2項)
・
不動産に関する免除
弁護士の証明、不動産鑑定士の鑑定評価
検査役の調査が免除される場合のフォロー
取締役・監査役の調査
不当なる事項がある場合
発起設立〜各発起人に通告(173条の2第2項)
募集設立〜創立総会に報告(184条12項・173条の2第1項1号)
発起人及び会社成立当時の取締役の不足額填補責任
目的物の価格が定款の価格より不足する場合は、発起人、取締役は連帯してその不足額を支払う義務を課せられる(192条の2第1項)
Z設立登記
設立登記手続(57条・188条)
発起設立の場合には173条または173条の2の設立手続終了の日から、募集設立の場合には創立総会終結の日または185条もしくは187条4項の手続終了の日から、2週間以内に、会社の本店所在地において登記しなければならない(188条1項、商登1条)
設立登記の効力
会社の設立(57条)、法人格の取得
発起人に形式上帰属していた権利義務が実質・形式ともに会社に帰属
株式引受人が株主となる
株式引受の無効・取消に制限
株式引受人は、会社の成立後は、錯誤もしくは株式申込証の要件の欠陥を理由として引受の無効を主張し、また、詐欺もしくは強迫を理由として株式の引受を取消すことができなくなる(191条)
権利株譲渡の制限の解除
権利株とは、会社成立前または新株発行の効力発生前の株式引受人の地位をいう。この権利株の譲渡は、会社に対して効力を生じないが(190条)、会社成立後はこの制限はなくなる
株券の発行
会社は成立後は遅滞なく株券を発行しなければならない(226条)
[設立関係者の責任
発起人・取締役の責任
資本充実責任−引受・払込・給付担保責任
会社の設立に際して発行する株式について、会社成立後も引受のない株式、株式の申込が取消された株式があるときは、発起人及び会社成立当時の取締役が、これを共同して引き受けたものとみなされる(引受担保責任:192条1項)
この場合、連帯して払込をなす義務を負う(203条1項)
会社成立後も発行価額の払込、または、現物出資の給付がなされていない株式があるときは、発起人等は、連帯して払込をなし、または、給付未決済財産の価額に支払をなす義務を負う(払込・給付担保責任:192条2項)
払込をなした発起人・取締役の株式売渡請求
払込や給付をなした発起人等は、本来株式引受人である未払の株主に対して、求償権を行使することができる(民703条、704条)
発起人等は、本来の株式引受人に対して、その払込または支払の時より6ヶ月内に限り、株式の引受価額を売買価格として、その株式を自己に売渡すべきことを請求することができる(192条3項)
資本充実責任−不足額填補責任
現物出資または財産引受の目的物の会社成立当時の実価が、定款所定の価格に著しく不足するときは、発起人等は、会社に対して連帯してその不足額を支払う義務を負担する(192条の2第1項)
*検査役の調査を受けた場合には、その財産の現物出資者および譲渡人でない発起人および取締役は、その財産について本条1項の填補責任を負わない(192条の2第2項)
任務懈怠に基づく損害賠償責任
発起人は、会社に対し善管注意義務(民644条)を負う
それゆえ、その任務を怠った発起人は、会社に対して連帯して損害賠償責任を負う(193条1項)
*総株主の同意がないかぎり免除することはできない(196条・266条5項)
*責任追及のため、株主は代表訴訟を提起することもできる(196条、267条〜268条の3)
会社成立の場合−第三者に対する責任
発起人が、会社の成立に関し任務を怠った場合において、悪意または重過失があったときは、第三者に対しても連帯して損害賠償責任を負う(193条2項)
会社不成立の場合
会社の設立手続に着手したが設立登記まで至らず、会社が法律上も事実上も成立しなかった場合
発起人は会社の設立に関してなした行為について連帯してその責任を負い(194条1項)会社の設立に関して支出した費用は全て発起人の負担となる(194条2項)
擬似発起人の責任
定款に発起人として署名した者でなくても、株式申込み証、目論見書、株式募集の広告、その他株式募集に関する文書に自己の氏名及び会社の設立に賛助する旨の記載をなすことを承諾した者を擬似発起人といい、発起人と同一の責任を負う(198条)
取締役・監査役の責任
検査・調査の任務を怠った場合、会社または第三者に対して損害賠償責任を負う(266条1項5号、266条の3、277条、280条1項)。そして、発起人もまた責任を負うときは、連帯して損害賠償責任を負わなければならない(195条)
払込取扱金融機関の責任
払込取扱金融機関
発起設立
発起人が指定した払込取扱銀行または信託会社にしなければならない(170条2項)
募集設立
払込取扱銀行または信託会社の指定は、株式申込証の法廷記載事項であり(175条2項10号)、株式申込人または引受人の株式の払込は、指定された払込取扱場所にしなければならない(177条2項)
いったん指定した払込取扱銀行または信託会社を変更し、または、払込金の保管替をするには、裁判所の許可を受けなければならない(178条)
払込取扱金融機関の保管証明責任
発起人または取締役の請求により、払込金保管証明書を発行しなければならない(189条1項)
払込金保管証明書は、会社の設立登記の際に、添付書類の1つとして要求される(商登80条10号)
払込金保管証明書を発行した払込取扱金融機関は、その証明した金額について払込がなかったこと、または、その返還に関する制限をもって会社に対抗できない(189条2項)
株式の仮装払込
預合
会社設立または会社成立後の新株発行に際して、発起人・取締役が、払込取扱金融機関と通謀してその金融機関から金員を借り入れ、これを株式払込金として会社の預金に振替、その借入金を返済するまではその預金を引出さない旨を約すること
預合罪、応預合罪として刑罰が科される(491条)
見せ金
発起人・取締役が、払込取扱金融機関以外のものから借入れた資金を現実に同機関に払込み、会社成立後または新株発行の効力発生後、直ちにそれを払い戻して借入金の返済に充当すること
預合と見せ金の中間形態
発起人・取締役が第三者からではなく、払込取扱金融機関から借り入れをしてこれを株式の払込にあて、会社成立後または新株発行に効力発生後、直ちにその払込金を引出して、借入金の返済に充てる方法
\設立の瑕疵
設立の瑕疵の3態様
会社不成立
会社の設立手続に着手したが設立登記まで至らず、会社が法律上も事実上も成立しなかった場合
*いつでも、誰でも、どのような方法でも、会社の不成立を主張することができる
会社不存在
設立登記はあるものの、設立手続が現実に全く存在しないか、たとえ存在してはいても瑕疵の程度が著しく、法的に存在ありと評価できない場合
*いつでも、誰でも、どのような方法でも、会社の不存在を主張することができる
設立無効
会社設立の要素である実態形成手続と設立登記をともに備えながら、そのどこかに、瑕疵(無効原因)がある場合
*商法は、法的安定性の確保および法律関係の画一的確定を図るため、設立無効の訴えの制度を定めている(428条)
設立無効原因
客観的原因に基づく瑕疵
客観的瑕疵とは、設立における行為が強行法規または会社の本質に反する場合、すなわち、法の要求する準則に反する場合である
*ex)絶対的記載事項の欠陥など
主観的原因に基づく瑕疵
主観的瑕疵とは、社員個人の主観的事情に基づくもの、すなわち、社員の設立行為が無効あるいは取消しうべきものである場合
*ex)社員の設立行為の錯誤など
設立の瑕疵の取扱
合名会社・合資会社・有限会社
客観的瑕疵による設立無効(136条、147条、有75条1項)のほかに、主観的瑕疵による会社自体の設立無効(136条)、および、設立取消が認められている(140条、141条、147条、有75条1項)
株式会社
株式引受人の主観的瑕疵は、単に個々の株式引受の無効・取消となるにすぎず(ただし、175条5項、191条)、主観的瑕疵は直ちに会社設立自体の無効・取消とはならない
設立手続の客観的瑕疵が問題
設立無効の訴えの制度
無効主張の可及的制限
設立無効の主張期間
会社設立の日(設立登記の日)から2年以内に限り、提起することができる(428条1項)
設立無効の主張権者
株主、取締役、監査役に限られる(428条2項)
商法特例法上の子会社の監査役は除かれる(商登25条)
設立無効の主張方法
訴えによってのみ主張することができ、他の方法では主張できない(428条1項)
会社の本店所在地の地方裁判所の管轄に属し(428条3項・136条3項・88条)、訴えの提起があったときは、遅滞なくその旨を公告しなければならない(428条3項・136条3項・105条4項)
既在状態の尊重(無効判決の遡及効阻止
設立無効判決は、会社、株主及び第三者との間に生じた権利義務には影響を及ぼさないものとして、無効判決の遡及効を否定する(428条3項・136条3項・110条)
設立無効判決が確定した場合、その旨の登記をなし、会社は解散に準じて清算をしなければならない(428条3項・137条、138条)
法律関係の画一的確定(無効判決の対世的効力)
設立無効の判決が確定したときは、その判決は、訴訟当事者のみならず、第三者に対しても効力を有するものとして、設立無効判決に対世的効力を認める(428条3項・136条3項・109条1項)
同一目的の訴訟が複数提起された場合、矛盾した判決が下されないように、弁論および裁判の併合がなされる(428条3項・136条3項・105条3項)
T株式の概念
株式の意義
均等に細分化された割合的単位の形を取る株式会社の社員たる地位をいう
株式の法的性質
株式とは株式会社なる社団法人の社員の地位(社員権)であるとされ、株主は、この社員たる地位(社員権)に基づいて、会社に対して種々の権利を有し、義務を負う
株式の不可分性と共有
株式不可分性の原則
原則として1単位の株式を単位未満に細分化することはできない
例外:端株制度(230条の2以下)
株式の共有
株式が数人の共有に属するときは、共有者は、株主の権利を行使すべき代表者1人を定めなければならず(230条2項)、これを定めないときは、会社は共有者の任意の1人に対して、通知または催告をなせば足りる(203条3項)
U株主の権利・義務
株主の権利の意義
株主の権利(株主権)とは、株主が株主たる地位に基づいて有する種々の権利である。この株主権は包括的な権利であるから、株主権の中から1つの権利だけを取出して、独立に譲渡することはできない
しかし、株主総会で決議された配当金支払い請求権のような具体的な権利は、株主権とは別個に独立して譲渡することができ、また、差押の対象となる
株主の権利の分類
自益権
株主が会社から経済的利益を受けることを目的とする権利
ex)利益配当請求権(290条、293条)、利息配当請求権(291条、293条)など
共益権
株主が会社の経営に参与することを目的とする権利
ex)議決権(241条)など
単独株主権
1株を持つ株主でも行使できる権利
少数株主権
会社の発行済株式総数のうち、一定割合または一定数以上の株式を保有する株主のみが行使できる権利
特殊の株式
普通株・優先株・劣後株
会社は、利益もしくは利益の配当、残余財産の分配について、それぞれ内容の異なった数種の株式を発行することができる(222条1項)
・
優先株、劣後株(後配株)、普通株
・
参加的優先株、非参加的優先株
・
累積的優先株、非累積的優先株
発行手続
定款をもって、各種の株式の内容および数を定めなければならない(222条2項)
各種の株式の内容および数は、株式申込み証および株券にも記載しなければならず(175条2項4号、280条の6第5号、225条6号)かつ、登記しなければならない(188条2項3号)
償還株式
株式の発行当初から、一定期間内に配当可能利益をもって消却されることが予定されている特定の種類の株式を償還株式という(222条1項)
その種の株式についてのみ消却がなされる点で、すべての株式について平等になされる株式の利益消却(212条1項但書)と異なる
償還方法
任意償還〜株主と会社との合意によって償還株式を買入れて消滅させる
強制償還〜株主の意思にかかわらず償還して株式を消滅させる
発行手続
予め定款をもって、償還株式の数および内容(償還の時期、価額、方法など)を定めておかなければならない(222条2項)
償還によって株式が消滅し、その数だけ会社の発行済株式総数が減少するので、変更登記をしなければならない(188条2項5号、商登86条)
再発行の可否
株式が消滅しても再びその発行権限を行使できないとする
転換株式
ある種類の株式から他の種類の株式へ転換できる権利(転換権)が認められた株式を転換株式という(222条の2)
発行手続
定款をもって、株主がその引き受けた株式を他の種類の株式に転換することを請求できる旨、および、転換により発行すべき株式の内容を定めなければならない(222条の2第1項、2項前段)
転換の条件および転換請求の期間は、定款に定める必要はなく、設立に際しては発起人全員の同意をもって、成立後については定款に株主総会がこれを決定する旨の定めがある場合を除き、取締役会の決議で定めることができる(222条の2第3項)
請求期間内は、転換によって発行すべき株式の数を、未発行株式として留保していなければならない(222条の2第3項)
転換請求手続
株主名簿の閉鎖期間中を除いて、転換請求期間中はいつでも転換を請求できる(222条の5第3項)
請求者は、請求書に転換しようとする株式の数および請求の年月日を記載してこれを署名し、かつ、株券を添付してこれを会社に提出することを要する(222条の5第1項、2項)
*転換請求権は、転換請求がなされたときに効力が生ずる。ただし、利益または利息の配当については、定款をもって、請求がなされた時の営業年度または前営業年度の終りにおいて転換があったものとみなすことができる(222条の6)
*転換株式の転換があると、新旧両株式の発行済株式数は増減し、資本が増加する場合があるから、その旨の変更登記が必要である(222条の7)
議決権なき株式
定款をもって、利益配当について優先的内容を有する株式についてのみ、議決権なき株式を発行できる(242条1項)
発行手続
優先株に関する発行手続きが要求される
少数の議決権ある株主の独裁的支配を防ぐため、議決権なき株式は、発行済み株式総数の3分の1を超えて発行できない(242条3項)
議決権なき株式を有する株主の権利
・
優先配当を受ける旨の議案が定時総会に提出されないときはその総会から、その議案が定時総会において否決されたときはその総会の終結のときから、優先配当を受ける旨の決議あるまでは、議決権を有する(242条1項但書)
・
創立総会(180条3項、345条3項)、特殊株主総会(345条3項)、および、株式譲渡制限を定めるための定款変更決議(348条2項)においては議決権を有する
・
株主総会の召集通知をなす必要はないが(232条3項)、このような株主も、株主総会に出席・発言できる総会参与権を有し、また、議決権以外の共益権を原則として有する
株主の義務
資本充実の原則の要請から、出資義務の内容は、財産出資のみに限定され、会社成立前または新株発行の効力発生前に全部の履行をしなければならない(170条1項、172条、177条1項、3項、280条の7、280条の9、280条の14)
V株主平等原則
意義
株主は、株主としての資格に基づく会社との法律関係については原則として有する株式の数に応じて平等の取扱を受ける
内容的平等〜それぞれの株式の内容は原則として同一でなければならない
取扱の平等〜それぞれの株式の内容が同一である限り同一の取扱をしなければならない
根拠
明文の規定はないが、議決権(241条1項)や利益配当請求権(293条本文)が具体的な権利の側面から株主平等の原則を定めていると解釈できる
効果
商法上の基本原則として強行法規制を有し、これに反する定款規定や株主総会・取締役会の決議、さらには、代表取締役の行為は、法定の例外に該当する場合を除き無効となる
機能
株主平等原則は、多数決の濫用から少数派株主を保護するという重要な機能を有する
株主総会や取締役会において多数決で可決された事項でも、それが株主平等原則に反する場合にはその決議の効力が否定され、その結果、少数派株主の利益が保護されることになる
例外
内容的平等の例外
数種の株式(222条)、転換株式(222条の2)、議決権なき株式(247条1項)
取扱の平等の例外
・
少数株主権の要件(232条の2、237条、293条の6など)や株主の権利行使に際しての株式保有期間の要件(267条、272条など)
・
単位株制度(S56改正附則16条以下)
単位未満株は自益権のみで共益権を制限している
・
端数株の処理(217条1項、220条、377条1項、416条3項、280条の4第1項但書、280条の9の2第2項など)
解釈上の問題
日割配当
利益配当は、持株数に応じてなすことが要するとされる(293条)がこの点で日割配当は株主平等原則に違反?
株主優待制度
各株式の内容が同一である限り同一の取扱がなされるべきである株主平等原則に反する?
W額面株式と無額面株式
額面株式
意義
額面株式とは、定款に1株の金額の定めがあり、かつ、株券に券面額(額面金額、株金額)が記載される株式をいう(166条1項4号、225条4号)
額面株式の券面額は、均一であることを要し(202条1項)、会社の設立に際して発行する額面株式の券面額は5万円を下ることはできない(166条2項)
会社成立後は、定款変更により(166条1項4号、342条、343条)、券面額を引下げることができる
発行価額に関する制限
額面株式の発行価額は、券面額未満となること(割引発行)が許されない(202条2項)
資本組入に関する制限
原則として発行済み株式の発行価額の総額が資本となる(284条の2第1項)が、発行価額の2分の1を超えない額を資本に組入ないことができ(同条2項本文)、この資本に組入ない額は、払込剰余金として資本準備金となる(288条の2第1項1号)
額面株式の場合は、少なくとも券面額相当分は資本に組入れなければならない(284条の2第2項但書)
現行法における券面額のもつ機能
資本の最低限度額を画する機能
無額面株式
意義
定款にも株券にも券面額の定めがなく、株券上にその表章する株式数のみが記載される株式
発行価額に関する制限
無額面株式の発行価額については、額面株式のような制限はない
ただ、設立に際して発行する無額面株式について、その発行価額の最低額を5万円とする制限がある(168条の3)
資本組入に関する制限
額面株式と同様
会社の設立に際して発行する無額面株式については、5万円は資本に組入れなければならない(284条の2第2項但書)
額面株式と無額面株式の同一性
両株式は、同一の権利内容を有し、商法も両株式を原則として同一に扱っている
会社は、定款で特に制限しない限り、額面株式または無額面株式のいずれか一方、又は、双方を発行することができる(199条)
額面株式と無額面株式の相互転換
額面株式と無額面株式の間では、相互転換が認められる
相互転換は、@取締役会の決議による場合と、A株主の請求による場合がある
額面株式と無額面株式の相互転換がなされても、資本の額は当然には変動しない(284条の2第4項)
取締役会の決議による転換(213条1項)
株主の請求による転換(213条2項)
1.
会社が額面株式及び無額面株式の双方を発行している場合に限って認められる
2.
定款で別段の定め(株主の転換請求を全面的にまたは部分的に排除する旨の定め)がなされている場合には、その定めによって制約される
無額面株式を額面株式に転換する際の制約
資本の額が額面株式1株の金額(券面額)に発行済株式総数を乗じた額に満たないときは、許されない(213条3項)
X株式の譲渡
意義
売買・贈与・交換などの法律行為により株主たる地位(株式)を移転すること
株式が譲渡されると、株主たる地位に包含される会社に対する一切の法律関係が、一体として包括的に移転する
株式を譲渡するには、その旨の意思表示のほかに、株券を交付(占有を移転)することを要する(205条1項)
*株券を占有するものは、適法な所持人と推定される(205条2項)
*株式譲受人が会社に対して権利を行使するには、株主名簿の名義書換が必要となる(206条1項)
株式譲渡自由の原則
株主は、その有する株式を原則として自由に譲渡することができる(204条1項本文)
必要性
出資の払戻は原則として認められず、株主の投下資本回収は、原則として株式譲渡による換金の方法に限られることになるから
許容性
所有と経営が分離している(254条2項)ので、株式が譲渡され、株主が交替しても通常は会社経営に影響を及ぼさない
株式譲渡自由の制限
原則として法律の規定に基づかなければ、制限することはできない
法律による制限
時期による制限
権利株の譲渡制限(190条、280条の14第1項)
権利株とは、会社成立前または新株発行の効力発生前における株式引受人の地位をいう
この権利株の譲渡は制限される
株券発行前の株式譲渡制限(204条2項)
株式発行前の株式の譲渡は制限される
自己株式の取得および子会社による親会社株式取得制限
定款による制限
閉鎖会社における、閉鎖性の維持を目的に、会社が定款をもって株式の譲渡につき取締役会の承認を要することを定めることを認めている(204条1項但書)
譲渡制限の公示
定款で株式の譲渡制限をしたときは、株券にその旨を記載し(225条8号)、また、株式申込証にもその旨を記載し(175条2項4号の2、280条の6第5号)、かつ、その旨の登記をしなければならない(188条2項3号)
定款変更手続
定款を変更して株式の譲渡制限を定めるには、総株主(無議決権株主を含む)の過半数にして、発行済み株式総数の3分の2以上の多数の賛成が必要(348条1項、2項)
*通常の特別決議の要件(343条)より加重
転換社債を発行しているときは、転換請求期間の経過前には譲渡制限の定款変更決議はできない(348条3項)
株式買取請求権が認められている(349条)
譲渡制限のあるときの株式譲渡の手続
譲渡承認請求(204条の2第1項)
・
会社が譲渡を承認すれば、有効
・
承認しないときは、請求日から2週間以内に書面で、その旨を通知しなければならない(204条の2第2項)
・
会社が2週間以内に通知をしないときは、承認とみなされる(204条の2第4項前段)
先買権者指定請求(204条の2第1項)
会社は、請求日から2週間以内に先買権者を指定し、それを書面で通知しなければならない(204条の2第3項)
通知しないときは承認とみなされる(204条の2第4項後段)
会社は、会社自信を買受人に指定することができる(204条の3の2第1項)
先買権者は、通知があった日から10日以内に、株主に対し、書面で株式を自己に売却すべき旨を請求することができる(204条の3第1項)
譲渡制限違反の株式譲渡の効力
株券不所持制度を利用している場合(226条の2)
株式に譲渡には、株券に交付を要するので(205条1項)、株券不所持制度(226条の2)を利用し株券を所持していなければ、株式の譲渡はできないことになる
契約による譲渡制限
定款による株式の譲渡制限(204条1項但書)を利用せず、会社と株主間、株主相互間または株主以外の第三者と株主との間の個別的契約で、株式の譲渡を制限する場合
単位未満株の譲渡制限(S56年改正附則18条2項・3項、205条1項)
単位未満株の譲受人の名義書換請求は認められない(同改附18条3項)
Y自己株式の取得規制
自己株式取得禁止の趣旨
資本維持の原則に反し会社の財産的基礎が害される
出資の払戻がなされたのと同様になるから
株主平等原則に反する
会社支配の不公正を招く
会社が自己株を取得した分だけ総会における議決権の総数は減少し、株主総会で多数を占めるのに必要な株式数は自己株式取得前に比べて少なくてすむことになり、間接的には取締役の会社支配を強化できることになるから
株式取引の公正を害する
・
不当な株価操作に用いられる
・
内部者取引(インサイダー取引)により株式取引の公正を害する
自己株式取得が許される場合
株式の消却のためにするとき(210条1号)
・
資本の減少の規定に従ってなされる場合(212条1項本文、375条以下)
・
定款の定めによって行う利益償却ないし償還株式の消却の場合(212条1項但書、222条1項)
・
定時総会決議による株式の消却(212条の2)
・
公開会社において定款で授権された範囲内で認められる取締役会決議に基づく株式の消却(株式消却特3条1項)
合併または他の会社の営業全部の譲受によるとき(210条2号)
会社の権利の実行にあたりその目的を達成するため必要なるとき(210条3号)
強制執行や和解などをなす際、債務者が自社株以外に目ぼしい財産を有しない場合
株主の株式買取請求権の行使に応じて株式の買取をなすとき(210条4号)
・
端株の場合(230条の8の2第2項)
・
営業譲渡の場合(245条の2)
・
閉鎖会社への定款変更の場合(349条1項)
・
合併の場合(408条の3第1項)
・
簡易合併の場合(413条の3第5項)
・
有限会社への組織変更の場合(有64条の2第1項)
定款に株式譲渡制限規定のある会社において、会社が先買権者に指定され、かつ、売渡請求をしたとき(210条5号)
取締役または使用人に譲渡するためにするとき(210条の2)
ストック・オプションや従業員株主制度のため
定款に株式譲渡制限規定のある会社による株式の相続人からの取得(210条の3)
自己株式の地位
株式消却のために自己株式を取得した場合には、遅滞なく株式失効の手続をなし、それ以外の場合も相当の時期に株式を他に処分する必要がある(211条)
取次的取得や信託的取得などのように、会社名義であっても他人の計算で取得した場合には、その目的を達するのに必要なかぎりで保有し続けることができる
共益権について
議決権、少数株主権、帳簿閲覧権、総会決議取消の訴えの提起権、その他共益権も、行使できない
利益配当および利息配当請求権(293条但書)・中間配当請求権(293条の5第6項)
もたない
残余財産分配請求権(425条)
もたない
株式併合・株式分割(214条以下、218条以下)
株式併合または株式分割の効果は、自己株式にも及ぶ
自己株式の質受
発行済株式総数の20分の1の範囲内では自由に質受できる
取締役・使用人に譲渡するための自己株式の取得
従業員持株会等への譲渡
会社は正当の理由があるときは、使用人に株式を譲渡するために、10%を超えない範囲において自己株式を取得することができる(210条の2第1項)
ストック・オプション制度の意義(H9改正導入)
会社が特定の取締役や使用人に対して、一定数の自己株式を一定の期間(権利行使期間)内に、予め定めた価額で取得または引き受けることのできる権利を、付与する制度
既発効の自己株式を会社から取得することができる方式(自己株式方式)と新株引受権を付与される方式(新株引受け権方式またはワラント方式)がある
会社は自己株式方式がワラント方式かのいずれかを選択することができ、その双方を同時に併用することは許されない(210条の2第5項、280条の19第5項)
定時総会の決議
従業員持株会等への譲渡目的の場合
取締役は、使用人に株式を譲渡することを必要とする理由を開示して、そのために買受けるべき株式の種類、総数および取得価額の総額につき、定時総会の普通決議を経なければならない(210条の2第2項1号)
*10%という枠は、使用人に譲渡すれば復活しそうであるが、一営業年度内に取得できる株式総数および取得価額は株主総会で決められるので、再度の取得はできない
自己株式の取得方法にかかる決議
公開会社については、市場買付によるか、または、公開買付によらなければならない(210条の2第10項)普通決議で足りる(210条の2第7項)
非公開会社については、会社は特定の株主から、相対取引により自己株式を取得することになり、株式の売主についても特別決議による承認を得なければならない(210条の2第7項)
この決議においては、売主となる株主は特別利害関係者として議決権を行使できず、この者の議決権の数は出席した株主の議決権の数には参入されない(210条の2第7項・204条の3の2第3項、4項)
非公開会社の株主は、定時総会の召集通知に議案の要領として特定の売主名を記載してある、そのうえに、自己をも売主として加えることを、会日より5日前までに取締役に対して書面によって請求することになっている(210条の2第8項、9項)
ストック・オプションの目的の場合
取締役または使用人の氏名等についての決議
オプションを付与さられる取締役または使用人の氏名、その者がオプションを行使したときに会社が譲渡すべき株式の種類、数および譲渡価額、権利行使期間ならびに権利行使についての条件につき、定時総会の普通決議を得なければならない(210条の2第2項3号)
ストック・オプションの権利行使期間の終期は、10年以内の日とされているので(210条の2第4項)、オプションを付与された者がその地位を失ったときも権利行使ができるのか、その者が死亡したときに相続人が権利行使を行使できるのかなどの権利行使の条件についても、定時総会で定めるべきことになる
自己株式の取得方法に関する決議
従業員持株会等への譲渡の場合と同様
取得の数量・財源および期間
数量規制
@
従業員持株会等への譲渡の目的とAストック・オプションの目的のための双方を合わせて、発行済株式総数の10%まで自己株式を取得することができる(210条の2第1項)
財源規制
貸借対照表上の純資産額より、290条1項各号の金額および定時総会において利益より配当しもしくは支払うものと定めまたは資本に組入た額の合計額を控除した額、すなわち、中間配当限度額の範囲を超えることができない(210条の2第3項)
取得期間の規制
決議後最初の決算期に関する定時総会の終結の時までである(210条の2第6項、210条の2第2項1号)
@
の場合は、会社が株式を買受けたときから6ヶ月以内に従業員持株会等に譲渡しなければならない(211条)
A
の場合は、会社は次の定時総会の終結のときまでに、取締役または使用人にオプションを付与しなければならない(210条の2第11項・210条の2第2項1号)
利益消却のための自己株式の取得
212条の2の意義
会社が利益焼却を容易に行うことができるようにするために、H6年改正により、減資を伴わずまたは定款の規定によらずに、株主総会決議により、利益による消却のために自己株式を取得することを認めた(212条の2)
取得の手続
会社は、定時総会の決議をもって、株式を買受けてこれを消却することができる(212条の2第1項)
この総会では、決議後最初の決算期に関する定時総会の終結のときまでに、買受けるべき株式の種類、総数および取得価額の総額について(普通)決議をなす
取得方法に関する決議は、従業員持株会等への譲渡の場合と同様である
株式消却特例法による利益消却
公開会社について、年度の途中でも、経済情勢の変化などに応じて機動的に株式の消却を実施することができるように、H9年に「株式の消却の手続に関する商法の特例に関する法律」が制定された
定款の定め
公開会社は定款をもって「経済情勢、会社の業務又は財産の状況その他の情報を勘案して特に必要があると認めるときは取締役会の決議によりその株式を買受けて消却することができる」旨を定めることができる(株式消却特3条1項)
取締役会の決議
定款で定めた株式数の範囲内で、取締役会は買受けるべき株式の種類、数および取得価額の総額について決議をしなければならない(株式消却特3条4項)
取締役会の決議により消却のために株式の買受けができる期間は、決議後最初の定時総会の終結の時までである(株式消却特3条6項)
閉鎖会社の自己株式取得
譲渡制限株式の取得
・
株主の先買権者指定請求に対し、会社自身を指定して、自己株式を取得することができる(210条5号)
・
株式の相談の場合に、相続人から自己株式を取得することができる(210条の3)
会社が売渡請求をする場合
数量規制
会社を先買権者に指定したときと後述の相続のときとを合わせて発行済株式総数の5分の1までである(204条の3の2第7項)
財源規制
採集の貸借対照表上の純資産額より293条の5第3項各号の金額および同条1項により株主に分配した額の合計額を控除した額を超えない範囲とされている(204条の3の2第5項)
株主の相続の場合
株主総会の特別決議により、株主の相続人から、相続の開始後1年内にその株式を買取ることができる(210条の3第1項、3項)
数量規制および財源規制
会社が先買権者となって取得する場合と同様(210条の3第2項・204条の3の2第5項)
自己株式の取得と取締役の責任
営業年度の終りにおいて、貸借対照表上の純資産額が290条1項各号の金額の合計を下るおそれがあるときは、取締役はいずれの場合であれ、自己株式を取得してはならない(210条の4第1項)
この規定に違反した取締役は、会社に対して損害賠償の責任を負う(266条1項5号、210条の4第2項、3項、212条の2第6項、7項)
Z子会社による親会社株式の取得
親会社株式取得の禁止
子会社は、一定の例外的な場合を除き、親会社の株式を取得することはできない(211条の2第1項)
親会社・子会社の定義
親会社〜他の株式会社の発行済株式総数の過半数にあたる株式又は他の有限会社の資本の過半にあたる出資口数を有する会社
子会社〜親会社によってその発行済株式総数の過半数又はその資本の過半にあたる出資口数を保有されている株式会社又は有限会社
*孫会社も親会社の子会社とみなされる(211条の2第3項)
趣旨
子会社による親会社株式の取得が、実質的に自己株式取得禁止の脱法行為になり、210条が空洞化されるおそれがあるため
禁止規定の適用範囲
・
子会社の名で子会社の計算で親会社株を取得する場合
・
子会社の計算で第三者名義で親会社株を取得する場合
*親会社の計算で子会社名義で親会社株を取得する場合は、親会社の自己株取得にあたる
禁止の例外
法律上の例外
・
合併又は営業の全部の譲渡による取得(211条の2第1項1号)
・
会社の権利実行の目的を達するため必要な取得(211条の2第1項2号)
解釈上の例外
株式を無償で取得することは、禁止されない
資本の空洞化を生じる危険はなく、かつ、議決権が停止されるため(241条3項)、親会社における取締役の経営支配の固定化の手段として濫用される危険がないから
親会社の処分
例外的に許容される場合であっても、子会社は、取得した親会社の株式を相当の時期に処分しなければならない
株式会社または有限会社が子会社となったことを知ったときに、親会社の株式を保有している場合も同様(211条の2第2項)
適法に取得した親会社株式の法的地位
議決権はないので(241条3項)、これを前提とする共益件(総会召集権、株主提案権など)は認め得ないが、その他の共益権(定款、取締役・総会の議事録閲覧権など)は認められる
自益権は、すべて認められる
[株式担保
株式担保化の方法
株式の質入
略式質
当事者間における質権設定の合意と質権者への株券を交付することによって成立し、第三者に対抗するためには株券を継続して占有することを必要とするものである(207条1項、2項)
登録質
当事者間の質権設定の合意と質権者への株券の交付に加え(207条1項)、質権設定者である株主からの請求により、質権者の氏名および住所を株主名簿に記載し、かつ、その氏名を株券に記載することを要するものである(209条1項)
株式の譲渡担保
略式譲渡担保は、担保権設定者に担保の目的で株券を交付し(205条1項)、担保権者が株券を継続して占有する場合であり、登録譲渡担保は、そのうえに、株主名簿も担保権者の名義に書換える場合である(206条1項)
株式の質入・譲渡担保の制限
・
発行済株式総数の20分の1を超える自己株式を質受することは、原則として禁止(210条)
・
権利株および株券発行前の株式の質入または譲渡担保は、当事者間では有効であるが、会社に対して効力を生じない(190条、204条2項、280条の14第1項)
・
定款による譲渡制限のある株式の場合(204条1項但書)、株式の質入自体には、取締役会の承認を要しないが、質権の実行によって競売により株式を取得した者は、会社に対し、取得の承認または買受人の指定を請求する必要がある(204条の5)
株式の質入・譲渡担保の効力
質権者・担保権者の権利
・
債権の担保として受取った株券を被担保債権の弁済を受けるまで留置する権利(民362条2項・347条)
・
弁済期に弁済がなければその株券を換価処分してその代金から他の債権者に優先して自己の債権の弁済を受ける優先弁済権(民342条)
・
物上代位権(民362条2項・350条・304条)
*商法は、質権者の物上代位の効力の及ぶ目的物の範囲について、株式の消却・併合・分割・転換・買取によって株主が受けるべき金銭または株式に及ぶと定めている(208条)
残余財産分配請求権
商法は、登録質権者について規定するにすぎない(209条1項)が、登録譲渡担保、略式質、略式譲渡担保の場合も同様に認められる
利益配当請求権
登録質は明文によって、質権者は会社より利益もしくは利息の配当を受け、他の債権者に優先して自己の債権の弁済に充てることができる(209条1項)。会社から受けるべき金銭については、被担保債権の弁済期が到来していれば、登録質権者は直接受取って優先的に自己の債権の弁済に充当できるが、被担保債権の弁済期が到来していないときには、会社に対してその金額を供託させることができる(209条2項・民367条3項)
\株券
株券の意義・性質
意義
株券とは、株式すなわち株主権を表章する有価証券をいう
法的性質
非設権証券性
株券は、既に発生した株主権を表章するものであって、株券を作成することによって株主権が発生するものではなく、会社成立時(57条)、または、新株の払込期日の翌日(280条の9第1項)から効力を生じ、株主権が発生する
要因証券性
株券には法定の事項を記載しなければならないので(225条)、株券は要式証券である
様式性は手形などと異なり、厳格には解されてなく、記載事項を欠いていても、株券の本質的事項でないかぎり、株券には有効である
非文言証券性
株券は、その記載どおりの効力を生じるものではないから、文言証券ではない
無記名証券性
株券は、意思表示と株券の交付(占有の移転)のみにより譲渡され(205条1項)、裏書等の手続は不要とされる
株券の記載事項
株券には、法定事項を記載して、代表取締役がこれに署名(記名捺印)しなければならない(225条)
法定記載事項
会社の商号
会社成立の年月日
額面株式の場合は一株の金額
数種の株式があるときはその株式の内容
転換株式の内容・転換請求をすることができる期間
株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨を定めたときはその旨
番号
株券発行の年月日
株式の数
株主の氏名
株券の発行
株券発行の時期
会社は、成立後または新株の払込期日後、遅滞なく株券を発行しなければならない(226条1項)
会社の成立前または新株の払込期日前に株券を発行することはできず、発行してもその株券は無効である(226条2項、3項、498条1項15号)
会社が、株券発行を懈怠した場合についての罰則規定はない
株券不所持の制度
株式の長期保有を意図する株主が、株券を喪失する危険を防止するために、商法は、株券不所持の制度を設けた(226条の2)
制度の概要
定款で株券不所持の制度を採用しないと定めていないかぎり、株券の所持を欲しない旨を会社に申出ることができ、既に発行されている株券がある場合は、これを提出することを要する(226条の2第1項)
株式を不発行とする場合
会社は、遅滞なく、株式を発行しない旨を株主名簿に記載し、これを株主に通知しなければならない(同条2項)
この場合には、会社は、株券を発行できず、会社に提出された株券は、発行しない旨が株主名簿に記載された時点で無効となる(同条3項)
株券を銀行または信託会社に寄託する
会社は、遅滞なく、株券を銀行または信託会社に寄託した旨を株主名簿に記載したこと、または、寄託したことを株主に通知しなければならない(同条2項)
株券発行の請求
株券不所持の申出をなした株主は、いつでも株券の発行または返還を請求することができる(同条4項)
その際、株券の返還請求は、会社に対してしなければならない(同条4項但書)
費用負担
銀行または信託会社へ株券を寄託した場合に要する費用は、会社の負担となる(同条5項)
株券を発行する場合は、その発行費用を株主に負担させることができる(同条5項但書)
株券保管振替制度(株券等の保管及び振替に関する法律)
一般の株主(顧客)は証券会社等(参加者)を通じて株券を保管振替機関に集中預託して、株主名簿上はこの機関の名義とし、参加者が保管振替機関に口座を持ち、顧客は参加者に口座を持ち、預託株式の譲渡等は口座間の振替記帳によって決済される
株主の会社に対する権利の行使や会社から株主への各種の通知や配当金の支払等については、実質株主名簿を作成することが要求され、これに基づいて処理される
株券の資格授与的効力(推定的効力)
株券を占有するものは適法な所持人と推定され(205条2項)、このように実質的権利者と推定されるものを形式的資格者という
ただし、形式的資格者は推定されるにすぎないので、会社がこの推定を覆し、その者が無権利者であることを立証すれば、権利行使を拒絶することができる
株券の善意取得
株式取引の安全を図り、もって株式の流通を促進するため、商法は、善意取得制度を設けて(229条・小21条)株券を占有する形式的資格者から、悪意または重過失なく株券を譲受ける限り、株券の譲受人は善意取得により有効に株式を取得し、株主となることが認められる
要件
有効な株券の存在
譲渡人が無権利者であること
譲渡契約に基づき株券の占有を取得したこと
譲渡人の無権利者に譲受人が善意無重過失であること
相続・合併などによる取得の場合には善意取得は成立しない
効果
譲受人は株式を原始取得し、真実の株主から株券の返還を請求されても株券を返還する義務を負わない
株券の喪失
株券を喪失した場合、喪失者はそのままで株主としての権利を行使し、または、譲渡することができない
株券の喪失者は、会社に対して株券の再発行を請求するには、裁判所に公示催告を申立(公示仲裁777条以下)、株券を無効とする除権判決を得なければならない(230条)
公示催告手続
公示催告の申立は、会社の本支店所在地を管轄する簡易裁判所に書面または口頭でなす
公示催告を広告し、所持人がいる場合は公示催告手続を打切り、公示催告期日(期間6ヶ月以上)までに申立がない場合は除権判決が下る
除権判決の効力
公示催告期間が経過しても権利の届出をする者がいないときは、裁判所は除権判決をすることができる
消極的効力
除権判決は、証書を無効と宣言するものであって、株券は将来に向かって無効となる
積極的効力
除権判決を得た者は、会社に対して株券を再発行を請求することができる(230条2項)
]株主名簿
意義
株主名簿は、株券及び株主に関する法定の事項を記載する会社の帳簿である(223条)
商法は、会社の事務処理の便宜及び株主の利益を図る技術的制度として、株主名簿制度を定めている
閲覧・謄写
取締役は、株主名簿を本店に備置かなければならず、株主及び会社債権者は、これを閲覧・謄写することが認められている(263条)
正当の目的を有しない場合、あるいは、営業に支障を生ぜしめるような場合には、会社は拒絶することができる
株主名簿の効力
名義書換の確定的効力
株式の移転には、取得者が、その氏名・住所を株主名簿に記載しなければ、自己が株主であることを会社に対抗することができない(206条1項)
質権の登録
株式の質入に際し、質権設定者の請求により、質権者の氏名・住所を株主名簿に記載し、かつ、その氏名を株券に記載するときは、登録質として特別の効力が認められる(209条)
通知・催告の宛先
会社は、株主名簿に記載してある住所に宛て、通知または催告をすればよい(224条1項)
株主名簿上の住所に宛てて出した通知・催告が、5年間継続して到達しなかった場合には、会社はその者に対し、通知・催告をすることを要しない(224条の2)
利益・利息の支払場所
会社の株主に対する利益配当・中間配当または建設利息の支払は、株主名簿もしくは端株原簿に記載された住所において行うことを要する(会社の配当する利益または利息の支払に関する法律1項、4項)
株主名簿の閉鎖と基準日
商法は、会社の事務処理の便宜を考慮して、株主名簿の閉鎖と基準日の制度を設けている(224条の3)
株主名簿の閉鎖(名義書換停止)
会社は、議決権を行使し又は利益配当を受けるもの、その他株主または質権者として権利を行使すべきものを定めるために、一定期間株主名簿の記載の変更を行わないことができる(224条の3第1項前段)
制約
権利行使者の確定のために限られる(224条の3第1項)
閉鎖期間は、最大3ヶ月に制限される(224条の3第2項)
会社は、定款を持って名簿閉鎖期間を指定しなかった場合には、株主に知らしめるため、2週間前に公告しなければならない(224条の3第4項)
基準日
会社は、株主名簿の名義書換は停止しないで、そのかわり一定の日において、株主名簿に記載された株主もしくは質権者をもって、権利を行使できる株主もしくは質権者とみなすことができる(224条の3第1項後段)
制約
権利を行使する日の前3ヶ月以内の日を定めなければならない(224条の3第3項)
定款をもって基準日を指定しなかった場合には、株主に知らしめるため、2週間前に公告しなければならない(224条の3第4項)
両制度の併用
名簿閉鎖と基準日は、併用することができる
名義書換制度
株主名簿の名義書換は、株主名簿の記載を真実の株主関係に合致するように改めて、変動する株主と会社の関係を円滑に処理しようとする制度である
名義書換の手続
株券の提示により、名義書換の請求ができる
適法な名義書換の請求に対し、会社が正当な理由なく拒絶した場合に、会社は損害賠償の責任を負い、かつ、罰則の制裁が課される(498条1項1号)
株主名簿の名義書換効力
名義書換の確定的効力
名義書換の確定的効力とは、株式の取得者は、株主名簿の書換を受けない限り、会社に対して株主であることを主張できないことをいう(206条1項)
名義書換の資格授与的効力(推定力)
名義書換の資格授与的効力とは、株主名簿に記載された名簿上の株主は権利行使のつど株券を提示して実質的株主であることを証明しないで、株主の権利を行使できることをいう
名義書換の免責的効力
名義書換の免責的効力とは、株主の資格授与的効力を反映として、会社は株主名簿の記載に基づいて名簿上の株主に権利行使を認めれば、たとえその者が真実の株主でなかった場合にも免責されることをいう
*失念株
株式譲受人が、株式を譲受けたあと、株主の書換を失念したところ、会社から株主割当による新株の発行があった場合に、株主名簿上の株主である株式譲渡人に割当てられた新株を狭義の失念株という
これに対し、利益配当金、合併交付金などについて所定の期日まで名義書換を失念した株式を広義の失念株という
]T株式併合・株式分割
株式併合
株式併合とは、数個の株式を合わせて従来よりも小数の株式にすることをいう
株式併合と会社財産・持分・資本額との関係
株式併合がなされると、発行済株式総数は減少し、会社財産に対する一株当たりの純資産額は大きくなるが、会社財産自体に変動は生じない
株式併合は、株式数の増減をもたらすのみで、資本額の変動とは当然には連動しない
ただし、資本減少の方法としてなされた場合には(377条)、資本減少手続が同時になされるので、資本額は減少する
株式併合をなしうる場合
@
最終の貸借対照表による一株あたりの純資産額が5万円未満の株式を5万円以上にする場合(214条1項)
A
資本減少の方法としてする場合(377条)
B
会社の合併にあたり、解散会社又は新設会社の株主に存続会社または新設会社の株式を割当てる準備としてなされる場合(416条3項)
併合手続
決定機関(株主総会)
株式併合の場合には、株主に重大な不利益をもたらす可能性があるので、株主総会の特別決議を必要とする(214条1項)
株主等に対する通知・広告
会社は、株主を併合すること、一定期間内(1ヶ月を下りえない)に株券及び端株券を会社に提出するべきこと、ならびに、併合に適する株式の数を記載した株券は会社に提出を要しない旨を決議した場合(214条2項)はその内容を広告し、かつ、株主および株主名簿に記載ある質権者には格別に通知することを要する(215条1項)
株式併合の効力は、株券および端株券の提出期間満了のときに生じる(215条2項)
株券の読替と新株券の交換請求
併合に適するか部数の株券は会社に提出することを要しない旨を決議した場合には(214条2項)、併合に適する株式の数の記載のある株券は、併合後の株式の数を記載した株券とみなされる(215条4項)
*この場合も、併合前の株券を所持するものは、これを会社に提出して、新株券の交付を請求できる(215条4項)
端株券の処理
株式併合により1株に満たない端数が生じる場合、端株原簿に登録される端株を除いて、会社はその部分につき新たに発行した株式を競売し、かつ、その代金を株主に対して交付しなければならない(217条1項)
また、競売に買えて、取引書の相場のある株式はその相場で売却し、取引所の相場のない株式は裁判所の許可を得て競売以外の方法によってこれを売却することができる(217条2項)
端株券について、会社の定めた一定の期間内(215条1項)に提出がないときは、その端株に応じてその代表を建前の端株主に交付することを要する(217条4項)
株式分割
株式分割とは、既存の株式を細分化して従来よりも多数の株式にすることをいう
株式分割と会社財産・持分・資本額との関係
株式分割がなされると、発行済株式総数は増加するが、増加した株式は、持株数に応じて無償で株主に付与される
それゆえ、株式分割をしても、会社財産に変動を生じることはない
株式分割は、株式数の増加をもたらすのみで、資本額の変動とは当然に連動しない
ただし、株式分割と同時に準備金の資本組入(293条の3)等をなせば、資本額が増加する場合もあり得る
株式分割をなしうる場合
・
授権株式数の範囲内であること(166条1項3号)
・
分割後の1株あたりの純資産額は5万円以上であること(218条2項後段)
*額面株式1株の金額に分割後の発行済株式総数を乗じた額が資本額を越える場合には制限される(218条2項前段)
分割手続
決定機関(取締役会)
株式分割は、株主に重大な不利益をもたらすものではないから、その決定は、取締役会の決議で足りる(218条1項)
株主等に対する通知・広告
株式分割にともない券面額を引下げる場合には、株券の記載事項に変更がある為、旧株券を提出させる必要がある為、会社は、株式分割をする旨、および、1ヶ月を下らない一定の期間内に株券を会社に提出すべき旨を公告し、かつ、株主および登録質権者には格別に通知しなければならない(220条・215条)
*株券及びは株券提出が必要でない場合
・
無額面株式を発行している会社が、無額面株式を追加発行する場合
・
額面株式を発行している会社が、券面額を変更せずに、額面株式又は無額面株式を追加発行する場合
・
株式分割のため券面額を引下げるが、取締役会の決議により株券・端株券の提出を要しない旨を定めた場合(218条3項)
この場合、会社は、株式分割をなす旨、および、会社が定める一定の日において株主名簿に記載のある株主が株式分割により株式を受ける権利を有すべき旨をその2週間前に、公告しなければならない(219条1項)
そして、分割したときは、一定の日に株主名簿に記載された株主および質権者に対して、その株の受ける株式の額面・無額面の別、種類及び数を、遅滞なく通知しなければならない(219条3項)
券面額の変更と株券の読替
株式分割により、額面株式の券面額を変更する場合、会社は、株式分割の決定についての取締役会決議において、株券及びは株券を会社に提出することを要しない旨を定めることができる(218条3項)
この場合、株主が所持する株券・は株券は、当然、分割後の1株の金額を記載した株券・は株券とみなされる(219条4項)
*分割前の株券を所持する者は、これを会社に提出して、新株券の交付を請求することができる(220条、215条4項)
]U端株・単位未満株
端株
端株とは、1株に満たない端数で、1株の100分の1の整数倍にあたるものをいう(230条の2)
端株制度の適用会社
S56年改正商法施行語に設立された会社、および、同法施行前に成立した会社のうち額面が5万円以上であるか、又は、1株あたりの純資産額が5万円以上の会社に適用される
端株原簿への登録
新株発行、株式併合又は株式分割によって、1株の100分の1の整数倍にあたる端株が生じたときは、会社は、その定める期日までに記載を欲しない旨の申立があった場合を除いて、その端株の額面・無額面の別、種類および1株に対する割合、端株取得の年月日等を端株原簿に記載しなければならない(230条の2)
端株主の権利
共益権は認められない
自益権は認められる
法律上当然に認められる権利(230条の4)
・
株式の消却、併合、分割、会社の合併によって金銭又は株式を受ける権利
・
会社解散の場合の残余財産分配請求権
定款によって与えられる権利(230条の5前段)
・
利益配当(中間配当)請求権、利息配当請求権
・
新株、転換社債、新株引受権附き社債の引受権
権利行使の方法と投下資本の回収
端株原簿に記載のある端株主は、端株原簿の記載に基づいて権利を行使することが認められる(230条の7第1項)
端株券を有するものは、端株券を会社に供託した上で行う必要がある(230条の7第3項)
端株の譲渡は制約される(230条の8の2第1項)ので、端株主の投下資本回収の為、は株主には株買取請求権が認められる(230条の8の2第2項)
端株主が株主となる場合
登録端株主の場合(230条の8第1項)
・
その端株と合わせて1株となる端株を原始取得した場合
・
その端株と合わせて1株となる端株券を会社に提出した場合
端株券を有する端株主の場合(230条の8第2項)
・
合計して1株となる端株券を会社に提出した場合
単位未満株
単位未満株制度とは、株式を一定数にまとめたものを1単位とし、単位株には本来株式について認められるすべての権利を認めるが、単位未満の株式には自益権だけを認め、共益権は認めないとする制度である(s56年改正附則16条以下)
単位株制度の適用会社
s56年改正商法施行前に成立した会社であって、自主的な株式併合などにより、すでに額面が5万円以上となっているか、又は、1株あたりの純資産額が5万円以上となっている会社には、端株制度が適用される(同附則6条3項)
既存の上場会社は強制適用
非上場会社も定款で任意に単位株制度を採用することができる(同附則15条1項)が、その後その定めを廃止することはできない(同附則15条2項)
1単位の株式数
原則として5万円を額面株式の株金額で除した数であり、定款で単位を定める場合でも、1単位あたりの純資産額が5万円を下るような株数にすることはできない(同附則16条)
*単位株とは、1単位に満たない株式のすべてをいうため、1単位の100分の1未満の単位未満株もあり得る
単位未満株主の権利
・
利益配当(中間配当)請求権、利息配当請求権
・
株式の消却、併合、分割もしくは転換又は会社の合併により、金銭又は株式を受ける権利
・
新株、転換社債又は新株引受権附社債の引受権
・
残余財産分配請求権
・
株券の再発行を請求する権利(同附則18条1項)、株式買取請求権(同附則19条)
権利行使の方法と投下資本の回収
株主名簿の記載に基づいてなされる
新たに単位未満株を取得したものに対する名義書換は禁止される(同附則18条3項)
原則として株券の発行禁止(同附則18条2項、4項)
単位未満株主の投下資本回収を保証するため、株式買取請求権が認められる(同附則19条)
機関
T総説
所有と経営の分離
会社は、合理的経営を確保するため、所有と経営を制度的に分離する
株式会社の経営は、取締役に一任され(260条、261条)、他方、株主はその全員で株主総会を構成し、会社に関する基本的事項の決定に参加するにすぎない(230条の10)
加えて、有能な人材を広く求めることができるようにするため、取締役を株主に限ることは禁止されている(254条2項)
機関の意義
機関とは、会社の意思および活動を実現すべきものとして、法により定められている自然人または会議体をいう
株主総会
株主総会とは、株主により構成され、会社の基本的事項につき会社の意思を決定する株式会社の必要的機関をいう(230条の10)
取締役会
取締役会とは、取締役の全員をもって構成され、その会議における決議によって業務執行に関する会社の意思を決定するとともに、取締役の職務執行を監督する株式会社の必要的機関をいう(260条1項)
代表取締役
代表取締役とは、会社の業務執行を行い、対外的に会社を代表する株式会社の必要的常置機関をいう(261条1項)
監査役
監査役とは、取締役の職務執行の監査にあたる株式会社の必要的常置機関をいう(274条1項)
商法特例法帖の大会社については、監査役会すなわち監査役全員によって組織される調節機関が要求される(商特18条の2第1項)
機関の分化
商法は、個々の取締役には機関たる地位を認めず、取締役全員から構成される取締役会を業務執行に関する意思決定機関として定めている(260条1項前段)
取締役を3人以上(255条)の会議体とすることにより、取締役相互の協議と牽制に基づく意思決定を保証している
@
経営の合理化(効率化)
取締役会は会議体であるため、自ら業務執行にあたることはできないため、実際の業務執行・代表行為を担当する必要的常置機関として、代表取締役が置かれる(261条1項)
A
経営の適正化
代表取締役には権限が集中するため、代表取締役の職務執行について、取締役会に監督権限を認めている(260条1項後段)
株主に対しても、解任権(257条1項)や決算の承認権(283条)などにより、株主総会を通じて代表取締役(取締役)を監督する権限を認め、各種の監督是正権も認める(267条1項、272条など)
株主に代わって業務執行機関以外の第三者的立場から、常時、取締役の職務執行を専門的に監査する必要的常設機関として、監査役が置かれている(274条1項)
その結果、業務執行機関と監査機関とが分化する
U株主総会
株主総会の権限
法令・定款に定める事項に限り、決議することができるものとされた(230条の10)
主な決議事項
@
会社の組織・営業の根本的変更に関する事項
ex)定款の変更(342条1項)、資本減少(375条1項)、解散(404条2号)、会社の継続(406条、406条の3第3項)、合併(408条1項)、営業譲渡(245条1項)
A
株主の重要な利益に関する事項
ex)計算書類の承認(283条1項)、一定の自己株取得(204条の3の2第1項、210条の2第2項、210条の3第3項、212条の2第1項)、取締役・使用人に対する新株引受権付与(280条の19第2項)、有利発行(280条の2第2項)
B
機関の選任・解任に関する事項
ex)取締役・監査役・清算人の選任・解任(254条1項、257条1項、280条1項、417条1項但書、426条1項)、少数株主が召集した株主総会における検査役の選任(237条3項)
C
会社役員の専横防止に関する事項
ex)取締役・監査役の報酬の決定(269条、279条1項)
D
法規制の潜脱を防止するための規定
ex)事後設立(246条)
定款による権限拡大
取締役会から株主総会への権限委譲
株式会社の本質または強行法規に反しない限り、取締役会の決定事項は、定款で株主総会の決議事項とすることができる
*
株主総会の招集(231条)と業務執行すべての決定(260条1項)は株主総会権限となしえない
取締役会への権限委譲の禁止
法定の株主総会決議事項は、定款をもってしても、これをほかの機関の決定に委ねることはできない
株主総会の招集
代表取締役による召集
取締役会の決議による場合
代表取締役は、原則として、取締役会による株主総会召集の決定(231条)に基づいて、株主総会を招集する
株主総会召集の決定は取締役によってなされ、代表取締役はその決定の執行として株主総会を招集することになる
*
取締役会の決議を経ずに代表取締役が召集した株主総会で決議がなされた場合には、召集手続きの法令違反として、決議取消原因(247条1項1号)となる
*
代表取締役以外の者が召集した株主総会は、法的に有効な株主総会と評価されず、決議不存在原因(252条)となる
裁判所の命令による場合
裁判所は、総会検査役(237条の2第1項)または検査役(294条1項)の調査の結果の報告があった場合において、必要があると認めるときは、代表取締役に株主総会を招集させることができる(237条の2第3項前段、294条2項)
少数株主による召集
6ヶ月前から引続き発行済株式総数の100分の3以上にあたる株式を保有する株主は、会議の目的たる事項および召集の理由を記載した書面を取締役に提出して、株主総会の招集を請求することができる(237条1項)
*
この請求があったにもかかわらず、@会社が遅滞なく召集手続をなさないか、A請求のあった日から6週間以内の日を会日とする株主総会の召集通知が発せられないときは、少数株主は裁判所の許可を得て自ら召集することができる(237条2項)
召集時期・召集地
定時総会
毎年1回一定の時期に開催、年2回以上利益配当をなす会社は、毎決算期ごとに開催(234条)
臨時総会
必要あるごとに随時召集
場所は、定款に別段の定めがある場合を除き、本店の所在地またはこれに隣接する地でなければならない(233条)
召集通知
株主名簿閉鎖後または基準日現在の名簿上の各株主に対し、会日より2週間前に召集通知を発することが必要がある(232条1項)
会社は株主名簿上の株主の住所またはそのものが会社に通知した住所に宛て通知すれば免責される(224条1項)
住所に宛てた通知が5年間継続して到達しないときは、以後、会社はこの者に通知する必要がない(224条の2第1項)
議決権を有しない株主に対しては、通知する必要はない(232条3項)
召集通知には、日時・場所のほか、会議の目的たる事項を記載する必要がある(232条2項)
通常、議案までは記載しないが、定款変更や営業譲渡などを会議の目的たる事項とする場合には、議案の要領の記載まで要求される(342条2項、245条2項)
議決権
株主総会の決議に加わる権利
一株一議決権の原則
各株主は、原則として1株につき1個の議決権を有する(241条1項)
例外
議決権なき株式(242条)
議決権なき株式は、発行済み株式総数の3分の1を超えて発行することができない(242条3項)
*
株式譲渡制限をする為の定款変更(348条2項)、有限会社への組織変更(有64条1項)、優先配当がなされていない場合(242条1項)は議決権を行使できる
自己株式(241条2項)
自己株については議決権が休止するものとする(241条2項)
会社間の相互保有株式(241条3項)
名簿閉鎖中・基準日後に転換などにより発行された株式
新株発行が株式総会の召集の為の株式名簿の閉鎖期間中または基準日後になされたときは、その新株発行により株主となったものは、その期間内またはその株主総会において、議決権を有しない(341条の6,341条の18)
単位未満株
共益権たる議決権は認められない(S56改附18条1項)
自己株式取得に関する株主総会の特別決議において売主の有する株式(204条の3の2第3項、210条の2第7項、210条の3第3項、212条の2第4項)
議決権の行使
議決権の代理行使
議決権は、必ずしも株主自身が行使する必要はなく、代理人によっても行使することができる(239条2項本文)
議決権の不統一行使
株主は、株主総会における決議に際し、自己の有する議決権の一部を賛成に、残部を反対に行使することができる(239条の2第1項)
*
議決権を不統一行使するためには、会日より3日前に書面でその旨および理由を会社に通知しなければならない
*
株主が信託を引き受けたこと、その他、他人の為に株主を有することを理由とする場合を除き、会社は、株主が議決権を不統一行使するのを拒むことができない(239条の2第2項)
書面投票
資本の額が5億円以上または負債の合計額が200億円以上の株式会社であって、かつ、株主数が1000人以上の会社の場合には、株主総会の召集通知に法務省令で定める参考書類を添付し(商特21条の2)、さらに、株主が議決権を行使するための書面(議決権行使書面)を添付しなければならない(商特21条の3)
利益供与の禁止(294条の2)
議事運営
議長の選任・権限
通常は定款で定めている
定款で定めていないときは、株主総会で議長を選任する(237条の4第1項)
議長は、株主総会の秩序を維持し、議事を整理する職務権限を有し(同条2項)、議事運営に関する議長命令に従わない者など、株主総会の秩序を乱すものを退場させることができる(同条3項)
議題・議案
株主総会における議題・議案の決定権は、取締役会が有・する(231条)
・議題提案権
6ヶ月前より引続き発行株式総数の100分の1以上または300株以上の株式を有する株主は、会日より6週間前に書面で一定の事項を株主総会の議題となすべきことを取締役の請求することができる(232条の2第1項)
・議案提案権
議題提案権の持株要件を具備する株主は、会日より6週間前に、書面で取締役に対し、会議の目的たる事項につきその株主の提出する議案の要領を、株主総会の召集通知に記載することを請求することができる(232条の2第2項本文)
株主から議案の要領を召集通知に記載する旨の請求があった場合には、取締役は、原則としてこれに応ずべき義務がある
*
議案が法令もしくは定款に違反するとき、同一の議案につき過去3年以内の株主総会で議決権の10分の1以上の賛成が得られなかったときは、会社は拒絶できる(232条の2第2項但書)
取締役・監査役の説明義務
取締役および監査役は、株主総会において、議案に関する事項について株主から質問があった場合には、原則として説明しなければならない(237条の3第1項本文)
説明を拒みうる場合(237条の3第1項但書)
・
株主が説明を求めた事項がその株主総会の会議の目的たる事項と関係がないとき
・
説明することによって株主の共同の利益を著しく害するとき
・
説明をなすために調査を要するとき
株主が株主総会より相当の期間前に、書面によって株主総会で説明を求めるべき事項を通知したときは、拒むことはできない(237条の3第2項)
・
その他、正当な理由があるとき
総会検査役
6ヶ月前より引続き発行済み株式総数の100分の1以上にあたる株式を有する株主は、株主総会の召集手続および決議方法を調査する総会検査役の選任を、裁判所に請求することができる(237条の2台1項)
検査役は調査の結果を書面により裁判所に報告し(同条2項)、裁判所は必要があると認められるときは代表取締役に株主総会の召集を命じる(同条3項)
議事録の作成・備置
株主総会の議事については議事録を作成することを要し、10年間本店に、その謄本を5年間支店に備え置き、株主・会社債権者の閲覧・謄写に応じなければならない(244条)
延会・継続会
延会〜延期によって後日行われる株主総会
継続会〜続行によって後日行われる株主総会
総会屋対策
総会屋
会社の株式を取得して、会社に金品を共用し、その供与を受けると、株主総会において一般株主の発言を抑えて会社側の議事の進行に協力し、会社が金品の供与を拒むと、株主総会において議事の進行を妨害して議場を混乱させるような者
総会荒し等に関する贈収賄罪
株主総会における発言や議決権の講師に関して、不正の請託を受け財産上の利益を収受・要求・約束したものは、5年以下の懲役または500万円以下の罰金に処せられる(494用1項1号)
財産上の利益を供与・申込・約束したものも同様に処せられる(494条2項)
利益供与の禁止(294条の2)
会社は、何人に対しても、株主の権利の行使に関して財産上の利益を供与してはならない(294条の2第1項)
株主の権利行使に関する推定(294条の2第2項)
違反した場合の民事上の効果
・
会社が株主権の行使に関して財産上の利益を供与したときは、その利益の供与を受けたものはその利益を会社に返還する義務を負う(294条の2第3項)
・
利益供与禁止規定に違反して財産上の利益を供与した取締役もまた、その供与した利益の価額につき、会社に対し弁済責任を負う(266条1項2号)
・
供与を受けたものに対して会社が返還を請求しない場合、又は、取締役の責任を会社が追及しない場合には、株主は、代表訴訟により、会社に代わって責任を追及することができる(294条の2第4項・267条)
違反に対する刑事上の制裁
取締役・監査役又はそれらの者の職務代行者もしくは支配人その他の使用人が、株主の権利行使に関して会社の計算で財産上の利益を人に供与したときは、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられる(497条1項)
情を知ってその利益の供与を受け、又は、第三者にこれを供与させたものも同様に処せられる(497条2項)
株主総会の決議
普通決議(239条1項)
@
発行済株式総数の過半数にあたる株式を有する株主が出席(定足数)
A
その出席株主の議決権の過半数をもってなす決議
*
議決権のない株式は、この場合の発行済株式総数に含まれない(240条)
*
会社は、定款で別段の定めをすることができる(239条1項)が、および監査役の選任については、定款をもってしても、定足数を発行済株式総数の3分の1未満に引下げることは許されない(256条の2、280条1項)
特別決議(343条)
@
発行済株式総数の過半数にあたる株式を有する株主が出席(定足数)
A
その出席株主の議決権の3分の2以上にあたる多数を持ってなす決議
*
定足数を排除したり、軽減することはできない
特殊の決議
特別決議よりさらに要件が加重された決議
@
取締役の利益相反取引に関する責任免除
発行済株式総数の3分の2以上の多数(266条6項)
A
株式譲渡制限をする為の定款変更
総株主の過半数であって、かつ、発行済株式総数(議決権のない株式を含む)の3分の2以上の多数の賛成(348条)
*
取締役・監査役・発起人・精算人の責任免除
総株主の同意(266条5項、280条1項、196条、430条2項)、株主総会の開催を前提としない
資本多数決の原則とその限界・修正
資本多数決とは、株式会社の必要的機関である株主総会において採用される多数決原理をいう
少数は株主保護の必要性
商法は、資本多数決の原則に限界を設け、さらには、資本多数決の原則を修正し、加えて、株主に各種の監督是正権を認めている(267条、272条など)
資本多数決の原則の限界
資本多数決によって、法令・定款に違反する決議がなされた場合や株主の本質的利益に関する権利を侵害するような決議がなされた場合、あるいは、株式数に応じた平等の取扱を要求する株主平等原則に反する決議がなされた場合には、当該株主総会決議は無効もしくは取消の瑕疵を帯びることになり、少数派株主は、必要に応じて株主総会決議の効力を争うことができ、株主総会決議そのものを否定することが認められる(247条、252条)
資本多数決議の原則の修正
累積投票制度(256条の3)
取締役選出に関する累積投票制度が設けられている(256条の3)
*
定款をもって累積投票を全面的に排除することが認められている(256条の3第1項)
取締役の解任訴訟提起権(257条3項)
株主総会では、特別決議により、いつでも取締役を解任することができる(257条1項、2項)
解任決議が否決された場合には、少数株主権として当該取締役の解任訴訟提起権が認められている(257条3項)
解散判決請求権(406条の2)
会社は、特別決議によって解散することができる(404条2号、405条)
@
会社の業務上著しい難局に直面し、会社に回復できないような損害を生じ、又は、生じる恐れがある場合、A会社財産の管理又は処分が著しく不適当である為会社の危機に瀕しているような場合には、発行済株式総数の10分の1以上にあたる株式を有する株主は、裁判所に対し会社の解散を請求できる(406条の2)
株式買取請求権
株主の利益に特に重大な関係のある特定の決議が多数決によって成立した場合、反対株主に決議の影響を受けない価格での株式買取請求権が認められる
株主総会決議の瑕疵
商法は、法的安定性の確保および法律関係の画一的確定を図るため、決議不存在確認の訴え・決議無効確認の訴えの制度を定めることにより(252条)、妥当な法的処理を図っている
決議取消・決議無効・決議不存在・原因
手続的瑕疵のうち、重大なものは決議不存在となり、比較的軽微なものは決議取消の訴えによって処理される
内容的瑕疵のうち、重大なものは決議無効となり、定款に違反するものは決議取消の訴えによって処理される
決議取消の訴えの制度
取消原因(247条1項)
・
召集の手続又は決議の方法が、法令もしくは定款に違反し、又は、著しく不公正であったとき
・
決議の内容が定款に違反するとき
・
特別利害関係を有する株主が決議に加わったことにより、著しく不当な決議がなされたとき
取消主張の可及的制限
決議取消の主張機関
決議取消の訴えは、株主総会の決議の日から3ヶ月以内に限り、提起することができる(248条1項)
決議取消の主張権者
決議取消の訴えを提起できるのは、株主、取締役、監査役に限られる(247条1項)
*
商法特例法上の子会社の監査役は除かれる(商特25条)
決議取消の主張方法
決議取消は、訴えによってのみ主張することができ、他の方法では主張できない(247条1項)
決議取消の訴えは、会社の本店所在地の地方裁判所の管轄に属し(247条2項・88条)、この訴えの提起があったときは、会社は、遅滞なくその旨を公告することを要する(247条2項・105条4項)
濫訴の防止
株主が決議取消の訴えを提起した場合には、裁判所は、会社の請求により相当の担保を提供することを株主に命じることができる(249条1項本文)
法律関係の画一的処理(決議取消判決の対世的効力)
決議取消判決が確定した場合には、その判決は対世的効力を有し、第3社に対しても効力を有する(247条2項・109条2項)
*
原告敗訴の場合において、会社を困惑させる目的だけの為に訴えを提起したなど、悪意又は重大な過失にするときは、原告は会社に対し連帯して損害賠償責任を負う(247条2項・109条2項)
決議取消判決の遡及効
決議取消判決のうち、合併決議に関しては特則があり(415条3項・110条)、合併決議が判決により取消され、無効となっても遡及効は阻止される
しかし、合併のように督促のないその他の株主総会決議事項について決議取消判決が確定すると、設立無効判決などと異なり、株主総会決議は決議のときに遡って無効となると解されている
裁量棄却
決議取消の訴えが提起された場合において、その瑕疵が召集の手続又は決議の方法に関するほうり又は定款違反であって、その違反する事実が重大でなく、かつ、決議に影響を及ぼさないと認められるときは、裁判所は請求を棄却することができる(251条)
決議無効確認の訴え
決議無効の場合には、決議取消の場合のように主張方法などに制限はなく、一般原則により、いつでも、誰でも、どのような方法でも、決議無効の主張をすることができる
決議不存在確認の訴え
決議無効の場合と同様
V取締役
取締役は、株主総会で選出されるが(254条1項)、各個の取締役自体は会社の機関ではない
取締役は、会社の機関である取締役会の構成員として、会社の経営に関する意思決定をなし、かつ、他の取締役の職務の執行を監督するに過ぎない
取締役の中から代表取締役が選出される為(261条1項)、取締役たる地位を失えば代表取締役たる地位を当然に失うという意味で、取締役は、会社の機関である代表取締役の前提としての地位ともなる
取締役の選任・終任
定款による制限
会社は、定款をもってしても、取締役の資格を株主に限ることはできない(254条2項)
取締役の欠格事由(254条の2)
@
禁治産者又は準禁治産者
A
破産の宣告を受け復権していない者
B
商法、商特法および有限会社法に定める罪により刑に処せられ、その執行を終わった日、又は、執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者
C
B以外の罪により禁固以上の刑に処せられ、その執行を終わるまでの者、又は、その執行を受けることがなくなるまでの者(執行猶予中の者を含まない)
未成年者と法人
未成年者は欠格事由とされない
法人は取締役になれない
監査役との兼任禁止
取締役は、当会社又は親会社の監査役を兼ねることができない(276条)
取締役の任期
取締役の任期は2年を超えることができない(256条1項)
*
会社成立後の最初の取締役の任期は1年を超えることができない(256条2項)
*
取締役の任期は、定款をもって、その任期中の最終の決算期に関する定時総会の終結する日まで伸長することができる(256条3項)
取締役の選任
取締役の員数は3名以上でなければならず(255条)、その選任は株主総会でなされる(254条1項)
*
会社設立の際は、発起人(170条)又は創立総会(183条)が選任する
*
取締役選任の株主総会決議においては、定款をもってしても定足数を発行済株式総数の3分の1未満とすることはできない(256条の2)
累積投票制度(256条の3)
取締役の氏名は登記事項であるから(188条2項7号)、被選任者が取締役に就任した場合、会社はその旨を登記しなければならない
取締役の終任
任期の満了、取締役の死亡・破産・禁治産、会社の解散など
取締役と会社との関係については、民法の委任に関する規定が適用されるから(254条3項)、取締役はいつでも一方的意思表示によって辞任することができる(民651条1項)
*
会社にとって不利な時期に辞任した取締役は、会社に生じた損害を賠償しなければならない(民651条2項)
取締役の解任
株主総会における解任決議
会社は、株主総会の特別決議をもって、いつでも取締役を解任することができる(257条1項、2項)
*
任期の定めがある場合に、正当の事由なくしてその任期満了前に解任された取締役は、会社に対して解任により生じた損害に賠償を請求できる(257条1項但書)
少数株主による取締役解任の訴え
6ヶ月より前より引続き発行済株式総数の100分の3以上にあたる株式を保有する少数株主に限り、解任決議の秘訣の日から30日以内において、裁判所に問題の取締役の解任を求めて訴えを提起できる(257条3項)
取締役終任の登記
取締役の氏名は登記事項であるから(188条2項7号)、取締役の終任について、会社は変更登記をしなければならない(188条3項・67条)
仮取締役と取締役職務代行者
仮取締役
@
欠員の原因が任期満了又は辞任によるとき、これらの者は、後任取締役が就職するまで、なお取締役の権利義務を有するものとされる(258条1項)
A
取締役の死亡又は犯罪による欠格などの場合には、裁判所は、株主、取締役、使用人、会社債権者などの利害関係人の請求により、一時取締役の職務を行うべきものを選任することができる(258条2項)
善管注意義務と忠実義務
取締役と会社との関係には、民法上の委任に関する規定が適用される(254条3項)
・
民664条による善良な管理者の注意義務(善管注意義務)を負う
・
254条の3による忠実義務を負う
競業避止義務
対象
取締役が自己又は第三者のために行う、会社の営業の部類に属する取引である
規制の内容
取締役が、自己又は第三者のために、会社の営業の部類に属する取引をなすことは、原則として禁じられる(264条1項)
例外
取締役会の事前の承認
競業取引をなす取締役(競業取締役)は、競業取引に先立ち、取締役会に当該取引に関する重要な事実を開示し、承認の判断に必要な資料を提供した上、その承認を得なければならない(264条1項)
*
その際、競業取締役は、特別利害関係人として、取締役会の承認決議に参加できない(260条の2第2項)
取締役会への事後の報告
取締役会の承認の有無に関わらず、競業取引をなした取締役は、遅滞なくその取引に関する重要な事実を取締役会に報告しなければならない(264条2項)
違反の効果
競業避止義務に違反する取引の効力
取締役会の承認の有無は、競業取引の効力に影響しない
介入権の行使
取締役会の承認を経ずに、取締役が自己の為に競業取引をなしたときは、取締役会は、その取引を会社のためになしたものとみなすことができる(264条3項)
介入権は、競業取引のときから1年以内に行使しなければならない(264条4項)
損害賠償責任
取締役会の承認を経ずに、取締役が、自己又は第三者のために競業取引をなした場合には、その取締役は会社に対して法令違反に基づく損害賠償責任を負う(266条1項5号・264条1項)
競業取引により取締役又は第三者が得た利益の額は、会社の被った損害額と推定される(266条4項本文)
*
介入権を行使した場合には、この推定規定は適用されない(266条4項但書)
利益相反取引
265条は、取締役の利益相反取引を原則とし、例外的に取締役会の承認をもって許容するという事前的規制をなしている
利益相反取引の範囲
・
取締役が自己または第三者のために会社となす取引(直接取引)(265条1項前段)
・
取締役以外の者との間で会社と取締役との利益が相反する取引(間接取引)(265条1項後段)
規制の内容
取締役会の事前の承認
取締役が利益相反取引をなすには、事前に取締役会の承認を経なければならない(265条の2第2項)
*
承認決議に際し、当該取締役は特別利害関係人にあたり、決議に参加できない(260条の2第2項)
取締役への事後の報告
取締役会の承認の有無に関わらず、利益相反取引をなした取締役は、遅滞なくその取引に関する重要な事実を取締役会に報告する義務を負う(265条3項)
違反の効果
取締役の責任
取締役会の放任を経ずに利益相反取引がなされた場合、取引に関与した取締役は、法令違反に基づく損害賠償責任を負う(266条1項5号・265条1項)
承認をえてなされた場合に、結果として会社に損害が生じたときは、取引に関与した取締役およびその承認決議に賛成した取締役等に損害賠償責任が生じる(266条1項4号、2項、3項)
取締役の報酬
報酬の意義
269条にいう「報酬」とは、取締役がその職務執行の対価として会社から受ける給付をいう
取締役と会社との関係には、委任の規定が適用され(254条3項)るが、取締役に対し報酬を与えることについての明示または黙示の特約が含まれていると解されている
規制の内容
取締役の報酬は、定款または株主総会の決議をもって、その額を定めなければならない(269条)
*
多くの会社は株主総会決議の方法によって定めている
取締役の会社に対する責任
取締役と会社の関係
取締役と会社との間には委任に関する規定が適用されるので(254条3項)、取締役は会社に対して善管注意義務を負い(民644条)、254条の3に基づき取締役は会社に対し忠実義務を負う
取締役は、法令・定款および株主総会決議に違反する場合や善管注意義務・忠実義務に違反して任務を怠る場合に、任務懈怠となり、民法上の債務不履行責任を負うことになる(民415条)
責任の原因および内容
法令または定款に違反する行為(266条1項5号)
法令・定款・善管注意義務(254条3項・民644条)ないし忠実義務(254条の3)に違反した場合、任務懈怠により、会社に損害を与えた場合すべて
本号は、連帯責任とする点で、民法上の損害賠償責任よりも強化されている
違法な配当議案の提出および違法な中間配当(266条1項1号)
違法な利益配当(290条1項)や中間配当(293条の5第3項)がなされた場合、その配当は無効となる
266条1項1号は、資本の充実・維持を図るため、違法配当に加担した取締役に違法配当額ないし違法分配相当分を会社に弁済するべき責任を負わせた
違法な財産上の利益供与(266条1項2号)
294条の2第1項に違反して利益供与がなされた場合、供与を受けた者は、会社に対しその利益の価額を返済すべき責任を負うことになる(294条の2第3項前段)
266条1項2号は、確実に会社財産の回復を図るため、利益供与を行った取締役にその供与額を弁済すべき責任を課し、取締役に保証人的責任を負わせた
他の取締役に対する金銭の貸付(266条1項3号)
266条1項3号は、取締役会の承認の有無に関わらず、貸付を行った取締役にのみ弁済額を弁済すべき責任を課し、取締役に保証人的責任を負わせた
取締役会社間の利益相反取引(266条1項4号)
取締役が取締役会の承認を得ないで利益相反取引をなした場合には、取締役は法令違反に基づく責任を負うことになる(266条1項5号・256条1項)
266条1項4号は、利益相反取引に関する特殊な危険性を考慮して、取締役会の承認を得て利益相反取引をなした場合であっても、取引に際して会社を代表した取締役に損害賠償責任を課した
責任の法的性質
266条1項5号〜過失責任
266条1項1号〜4号〜無過失責任
責任を負う取締役の範囲
行為をなした取締役自身のほか、当該決議に賛成した他の取締役も、行為をなした取締役とみなされ、行為をなした取締役と同一の責任を負わされる(266条2項)
*
取締役会決議に参加した取締役で、その議事録(260条の4)に異議をとどめなかった取締役もまた、当該決議に賛成したものと推定される(266条3項)
責任を負う取締役が複数いる場合には、取締役は連帯して責任を負い(266条1項)、監査役も責任を負う場合には(277条)、そのすべてが連帯責任とされる(278条)
取締役の責任免除
原則として総株主(議決権なき株主も含む)の同意(266条5項)
承認があった場合〜発行済株主総数の3分の2以上の多数(266条6項)
取締役の第三者に対する責任
266条の3第1項
266条の3第1項は、民法709条に基づく一般不法行為責任とは別に、取締役に対して特別の法廷責任を課す(特別法廷責任説)
不実の記載(266条の3第2項)
取締役が株式申込証、新株引受検証書、社債申込証、目論見書、計算書類および付属明細書に記載すべき重要な事項に附き、虚偽の記載をなしまたは虚偽の登記もしくは公告をなしたときは、その取締役は、注意を怠らなかったことを証明しない限り、第三者に対して損害賠償責任を負う(266条の3第2項)
責任主体の拡張
任務懈怠した取締役の行為が、取締役会決議に基づく場合には、その決議に賛成した取締役等も同一の責任を負うものとされる(266条の3第3項・266条2項、3項)
取締役には、監視義務があるため、自らはその違法な職務執行に関与しなかったとしても、第三者がそれによって損害を被った場合には、損害賠償責任を負うことになる
株主の代表訴訟
商法は、株主が、会社のために会社に代わって、取締役の責任を追及することができる代表訴訟の制度を採用している(267条)
代表訴訟の対象となる取締役の責任
取締役の会社に対する一切の責任であると解されている
提訴の手続
提訴権者
6ヶ月前より引続き株式を保有する株主に限られる(267条1項)
1株を保有する株主でもよく、持株数に関する要件はない(単独株主権)
提訴までの手続
株主は会社(監査役:275条の2後段)に対し、書面をもって取締役の責任を追及する訴えを提起するよう請求しなければならない(267条1項)。そして、この請求があった日から30日以内に会社が訴えを自ら提起することができる(同条2項)
*
30日の期間を経過すると債権が消滅時効してしまうときは待たずに、直ちに代表訴訟を提起できる(267条3項)
申立手数料(H5改正)
267条4項により、取締役に対する請求金額の大小を問わず、一律に8200円
悪意の株主の担保提供義務
原告たる株主が悪意で代表訴訟を提起したときは、被告となる取締役は、原告に対して担保の提供を命じるよう裁判所に請求することができる(267条5項)
*
取締役は、原告の悪意を疎明しなければならない(267条6項・106条2項)
原告たる株主に悪意があった場合、その株主は会社に対しても損害賠償責任を負う(268条の2第2項)
訴訟に要した費用(H5改正)
株主が代表訴訟を提起して勝訴したときは、弁護士費用に加えて、その訴訟を行うのに必要と認むべき費用にして訴訟費用にあらざる支出についても、会社に請求できることとした(268条の2第1項)
違法行為差止請求権
272条は、6ヶ月前より引続き株式を保有する株主に、監査役ないし取締役会に代わって、会社のために、取締役の行為の差止を請求しうる権利を認めた
*
新株発行に関しては、これとは別に、株主自身の不利益を回避するための差止請求権が認められている(280条の10)
差止の対象となる取締役の行為
善管注意義務(254条3項・民644条)や忠実義務(254条の3)などの一般的規定の違反を含む、一切の法令・定款に違反する行為
差止請求権の行使
会社に回復しがたい損害を生じる恐れのある場合に限られる
*
監査役〜会社に著しい損害を生じるおそれのある場合
W取締役会
取締役会とは、取締役の全員をもって構成され、その会議における決議によって業務執行に関する会社の意思を決定するとともに、取締役の職務執行を監督する株式会社の必要的機関をいう(260条1項)
取締役会は3人以上の取締役で構成される会議体とする(254条)
取締役会の権限
業務執行の決定権限(260条1項前段)
株主総会の決議事項を除く会社の業務的執行全般
商法は、特定の事項を取締役会の決議事項と定めるほか、260条2項で重要な業務執行については、必ず取締役会の決議を要し、代表取締役などの下部機構にその意思決定を委ねることができない旨を明らかにして、取締役会の形骸化の防止を図っている
業務執行の監督権限(260条1項後段)
取締役会は業務執行に関する意思決定をするだけで、業務の執行自体は取締役会が選任する代表取締役、その他の業務担当取締役、および、その指揮のもとに使用人がなす
取締役会は、これらの者が取締役会の意思決定に従い公正妥当に執行するよう監督する権限を有する
*
取締役会が監督を効率的に行えるようにするため、代表取締役に、少なくとも3ヶ月に1回、取締役会に対して業務執行の状況の報告を行う義務が課されている(260条3項)
取締役会の決議事項
取締役会は、法令・定款で株主総会事項とされているものを除き、業務執行に関するすべての事項について決議することができるが、その一部を代表取締役の決定に委ねることもできる
取締役会の招集
取締役会は、必要に応じて開催されるが、少なくとも3ヶ月に1回は開催が要求される(260条3項)
召集権者
取締役
原則として各取締役
ただし、定款または取締役会の決議により、召集権者を特定の取締役とすることもできる(259条1項但書)
*
召集権社を特定している場合であっても、他の取締役は会議の目的たる事項(議題)を記載した書面を提出して、召集権者に取締役会の招集を請求することができ(259条2項)、この請求から5日以内に、その請求の日より2週間以内の日を会日とする取締役会の召集通知が発せられない場合には、その請求をした取締役は自ら召集することができるものとする(259条3項)
監査役
監査役は、取締役の違法好意を取締役会に報告し、または、違法行為を事前に阻止する必要があると認めるときは、取締役会の召集を請求することができる(260条の3第3項)
召集手続は、259条3項と同様(260条の3第4項)
召集手続
会日より1週間前に、各取締役および各監査役に対して召集通知を発しなければならない(259条の2本文)
*
会社は定款をもって、この期間を短縮することができる(259条の2但書)
*
取締役および監査役の全員が事前に同意していれば、召集手続を省略することもできる(259条の3)
取締役会決議
決議要件
取締役の過半数が出席し(定足数)、出席取締役の過半数をもってなす(260条の2第1項本文)
*
定款をもって加重することができるが(同条但書)、軽減はできない
取締役の議決権
一人一議決権
取締役会では、各取締役が1個の議決権をもつ頭数多数決が採用されている(260条の2第1項本文)
議決権の代理行使・持回り決議の否定
特別利害関係人の議決権行使の否定(260条の2第2項・3項)
議事録
取締役貝の議事については議事録を作成し(260条の4第1項)、これに議事の経過の要領および結果を記載した上、出席した取締役および監査役が署名しなければならない(同条2項)
代表取締役は、議事録を10年間本店に備置くことを要する(260条の4第3項)
株主、会社債権者は権利行使、取締役・監査役の責任追及のために必要あらば、裁判所の許可を得て、議事録の閲覧・謄写を請求することができる(260条の4第4項)
取締役会決議の瑕疵
取締役会決議に瑕疵があれば、一般原則に従い、当該決議は無効となる
利害関係人は、時期や方法を問わず、取締役会決議の無効を主張できる
X代表取締役
代表取締役とは、会社の業務執行を行い、対外的に会社を代表する株式会社の必要的常置期間をいう(261条1項)
代表取締役の権限
代表権
代表取締役は、会社の営業に関する一切の裁判上または裁判外の行為に及び、この代表権に制限を加えても、善意の第3者に対抗できない(261条3項・78条2項・民54条)
共同代表取締役制度
会社は、取締役会の決議をもって、数名の代表取締役が共同して代表権を行使すべきことを定めることができる(261条2項)
共同代表の定めは登記事項であり(188条2項9号)、すべての共同取締役が共同して代表行為をしなければならず、一人の代表取締役が単独で代表権を行使したときは、無効代表取締役行為となり、原則として無効となる
受動代理は、各共同代表取締役は受領権限を有する(261条3項・39条2項)
代表取締役の選任・終任
選任
代表取締役は、取締役の中から取締役会の決議によって選任される(261条1項)
取締役以外の第三者を代表取締役に選任することはできない
代表取締役の氏名および住所は登記しなければならない(188条2項8号)
任期
特に定めはないが、取締役であることが前提となるので取締役の任期を超えることはできない
員数
特に定めはなく、一人でもよい
終任
取締役の任期満了、辞任、解任など、取締役の終任事由
代表取締役はいつでも辞任できる(民651条1項)
会社は、取締役会の決議によって、いつでも代表取締役を解任することができる(民651条1項)
仮代表取締役
代表取締役が欠けたときは、取締役会において新たな代表取締役を選任すべきことになる
必要があるときは、裁判所は、株主、取締役、監査役、使用人などの利害関係人の請求により、一時代表取締役の職務を行うべきものを選任することができる(261条3項・258条2項)
表見代表取締役
262条は、権利概観理論に基づき、会社が代表権のない取締役に対し、あたかも代表権を有する取締役であると誤認させるような名称を使用することを許諾したときは、会社は第三者に対して、その者のなした行為の責任を負う旨を規定している
262条適用の要件
・
平取締役が代表権を有するものとみとむべき名称を使用して会社代表行為をなしたこと(概観の存在)
・
会社が代表権を有するものとみとむべき名称の使用について許諾していること(帰責性)
・
相手方が善意・無住過失であること(外観への信頼)
Y監査役
意義
監査役とは、取締役の職務執行の監査にあたる株式会社の必要的常置機関である(274条1項)
監査役の選任・終任
監査役の資格
自然人
兼任禁止(276条)
監査役の任期
就任後3年内の最後の決算期に関する定時総会に終結のときまで(273条1項)
会社成立後の最初の監査役の任期は、就任後1年内の最終の決算期に関する定時総会の終結の時まで(同条2項)
監査役の選任
1人以上の監査役が、株主総会決議により選任される(280条1項・254条1項)
定足数を発行済株式総数の3分の1未満にすることはできない(280条1項・256条の2)
*
監査役は、株主総会における監査役の選任の決議の際に、その適否に関する意見を述べることができる(275条の3)
監査役の終任
委任に関する民法の規定が適用(280条1項・254条3項)
監査役の死亡・破産・禁治産、任期の満了、欠格事由の発生(254条の2)、辞任および解任などにより終任
監査役はいつでも辞任することができる(280条1項・254条3項・民651条)その他、損害賠償(民651条2項)など取締役と同じ
会社は、株主総会の特別決議をもって、監査役をいつでも解任することができる(280条1項・257条)その他、事由も取締役と同等
監査役の報酬と費用
監査役の報酬
監査役の報酬額について、279条1項は、取締役の報酬(269条)と区別して、定款または株主総会の決議をもって定めなければならないものとする
監査費用
監査役が、職務の執行につき費用の前払いを請求した場合、または、支出した費用および利息の償還を請求した場合、会社はその費用等が監査役の職務の執行に必要でないことを証明しなければ、その請求を拒むことができない(279条の2)(挙証責任の転換)
監査役の職務権限
基本的職務権限
監査役は、複数選任された場合であっても、各自が単独で監査を行う独立性の機関である
監査権限は、会計監査だけでなく、会社の業務監査に及ぶ
個別的職務権限
報告請求権および調査権
営業報告請求権・業務財産調査権
監査役は、いつでも取締役および支配人その他の使用人に対して営業の報告を求め、また、会社の業務および財産の状況を調査することができる(274条2項)
*
取締役は、会社に著しい損害を及ぼすおそれのある事実を発見したときは、直ちに監査役にその報告をすることを要する(274条の2)
子会社調査権
親会社の監査役は、その職務を行うために必要があるときは、子会社に対して営業の報告を求めることができる(274条の3第1項)
また、その報告の真否を確かめる為に必要があるときは、親会社の監査役は、報告を求めた事項に関して、子会社の業務および財産の状況を調査することができる(同条1項)
*
子会社は、正当な理由がある場合には、この報告・調査を拒絶することができる(同条2項)
取締役の違法行為の阻止
取締役会出席権・意見陳述権
監査役は、取締役会に出席して、意見を述べることができる(260条の3第1項)
取締役会の召集通知は、各監査役に対しても発することが要求される(259条の2)
取締役会への報告義務等
監査役は、取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令もしくは定款に違反する行為をなし、または、なすおそれがあると認められるときは、取締役会にこれを報告しなければならない(260条の3第2項)
*
必要があれば、監査役は、取締役会の少数を請求することができ(同条3項)、迅速に召集されないときは自ら取締役会を召集することができる(同条4項・259条3項)
株主総会への報告義務等
監査役は、取締役が株主総会に提出しようとする議案・書類を調査し、法令・定款に違反しまたは著しく不当な事項があると認められる場合には、株主総会にその意見を報告することを要する(275条)
取締役の職務遂行に関し、不正の行為または重大な法令・定款違反行為を発見したときは監査報告書に記載することを要する(281条の3第2項10号)
違法行為差止請求権
監査役は、取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令・定款に違反する行為をなし、これにより会社に著しい損害を生じるおそれがあるときは、取締役に対してその行為の差止を請求することができる(275条の2第1項)
会社・取締役間の訴えの会社代表権(275条の4)
各種の訴えの提起権
ex)設立無効の訴え(428条2項)、株主総会決議取消の訴え(247条1項)、新株発行無効の訴え(280条の15第2項)、資本減少無効の訴え(380条2項)、合併無効の訴え(415条2項)など
監査役の責任
監査役の義務
委任に関する民法の適用(280条1項・254条3項)
よって善管注意義務(民644条)
会社に対する責任
監査役が、その任務を怠った場合には、会社に対し連帯して損害賠償責任を負う(277条)
監査役の責任を免責するには、総株主の同意が必要であり(280条1項・266条5項)、その責任の追及については、株主の代表訴訟が認められている(280条1項・267条〜268条の3)
第三者に対する責任
監査役が、その職務を行うにつき悪意または重大な過失があった場合には、第三者に対しても連帯して損害賠償責任を負う(280条・266条の3第1項)
挙証責任の転換
取締役との連帯責任
同時に、取締役も損害賠償責任を負うときは、その監査役および取締役は連帯して責任を負う(278条)
Z商法特例法上の大会社・子会社に関する特則
大会社に関する特則
大会社の監査制度
商法特例法は、大会社すなわち資本の学が5億円以上、または、負債の合計金額が200億円以上の株式会社(商特2条)について、監査役の監査体制を強化するとともに、計算書類およびその付属明細書(281条2項)について、会計監査人の監査を受けなければならないものとしている(商特2条)
監査役
複数監査役・常勤監査役
大会社においては、監査役は3人以上であることを要し、かつ、その監査役の互選によって常勤の監査役を定める必要がある(商特18条2項)
社外監査役
監査役のうち、少なくとも1人以上の監査役は、その終任の前5年間は、会社またはその子会社の取締役または支配人その他の使用人でなかったものでなければならない(商特18条1項)
監査役会
意義
監査役会とは、大会社において監査役全員によって組織される調整機関である(商特18条の2第1項)
権限
監査役の職務・役割分担の定める権限
監査役会は、その決議をもって、監査の方針、会社の業務および財産の状況の調査の方法、その他の監査役の職務執行に関する事項を定めることができる(商特18条の2第2項本文)
*
監査役の権限の行使を妨げることはできない(同条項但書)
監査役の報告の受領権限
監査役は、監査役会の求めがあれば、いつでもその職務の執行状況を監査役会に報告しなければならない(商特18条の2第3項)
決算手続において、監査役は監査を終えたとき、監査役会に報告しなければならない(商特14条1項)
書類・報告の受領権限
監査役会は、代表取締役から計算書類および付属明細書を受領する権限を有し(商特12条1項、2項)、また、会計監査人から監査報告書を受領する権限を有する(商特13条1項)
取締役が会社に著しい損害お及ぼすおそれのある事実を発見した場合に、取締役から報告を受ける権利(商特19条1項、商274条の2)
会計監査人が取締役の職務執行に関して不正の行為または法令などに違反する重大な事実を発見した場合に、会計監査人から報告を受ける権利(商特8条1項)
監査報告書の作成権限
監査役会は、会計監査人の監査報告書を受領した日から1週間以内に、監査報告書を取締役会に提出し、その謄本を会計監査人に送付しなければならない(商特14条2項)
監査報告書は、各監査役の監査結果の報告を基礎に(同条1項)、監査役会の多数決により作成される(商特18条の3第1項本文)
会計監査人の選任等に関する権限
監査役会は、取締役が会計監査人の選任負債認および解任の議案を株主総会へ提出することに同意を与えるほか(商特3条2項、5条の2台3項、6条3項)、それらを株主総会の議題とすることを取締役に請求することができる(商特3条3項、5条の2第3項、6条3項)
会計監査人を解任し、仮会計監査人を選任することもできる(商特6条の2、6条の4)
監査役会の運営と監査役の責任
監査役会の決議は、原則として、監査役の過半数をもってなす。会計監査人の解任については、監査役の全員一致が要求される(商特18条の3第1項)
その他の監査役会の運営は、取締役会に関する規定の準用(商特18条の3第12項)
会計監査人
商法特例法は、大会社について、会計監査人による決算の監査を受けなければならないものとした
選任
会計監査任は、株主総会の普通決議で選任され、会社設立の際には、発起人の議決権の過半数または創立総会の決議で選任される(商特3条1項、4項、5項)
資格
会計監査人は、公認会計士または監査法人であり、かつ、法廷の欠格事由のないものでなければならない(商特4条)
監査法人が会計監査人に選任されたときは、特定の欠格事由のない社員を職務を行うべきものに指定して、会社に通知する必要がある(商特5条)
終任
会計監査人の任期は、就任後1年以内の最終の決算期に関する定時総会の終結のときまでである(商特5条の2第1項)
職務・権限
会計監査人は、いつでも会社の会計帳簿・書類を閲覧・謄写し、取締役および支配認使用人に会計に関する報告を求めることができ、職務執行の為に必要であれば、会社の業務および財産状況を調査することができ、子会社に対しても同様の権限が認められている(商特7条1項〜4項、30条1項3号、4号、2項)
同時に、取締役・監査役も損害賠償責任を負うときは、会計監査人は取締役・監査役と連帯して責任を負う(商特11条)
子会社に関する特則
子会社とは、資本の額が1億円以下で、かつ、負債の合計金額が200億円未満の株式会社をいう
子会社においては、監査役の監督権限は、代表取締役が株主総会に提出しようとする会計に関する書類を調査し、株主総会にその意見を報告するという会計監査に限定され、業務監査に関する権限を有しない(商特22条1項)
T資金調達の方法
外部資金
自己資本
新株発行
他人資本
社債
借入金
内部資金
自己資本
準備金、引当金、減価償却費など
U新株発行の意義
新株発行の種類
通常の新株発行(280条の2〜)〜新たな資金調達を目的
特殊の新株発行
抱合せ増資(280条の9の2)
株式分割(218条)
転換株式の転換(222条の2〜)
転換社債の転換(341条の2〜)
新株引受権附社債の新株引受権の行使(341条の8)
吸収合併(409条2号)
授権資本制度
株式会社の定款には、会社が発行を予定する株式の総数が記載され(166条1項3号)、会社成立に際して、この発行予定株式総数の4分の1以上を発行しなければならないものとし(166条1項6号、3項)、この発行予定株主総数(授権資本)のうち、会社設立に際して発行される株式を除いた残りの株式については、会社成立後、原則としていつでも取締役会決議によって発行することができることとした(280条の2第1項)
*
定款を変更することにより、発行予定株式総数を増加させることができるが、その場合にも、発行済株式総数の4倍を超えて増加させることはできない(347条)
V通常の新株発行
通常の新株発行の意義
通常の新株発行とは、会社成立後、新たな資金調達を目的として株式を発行することをいう
既存株主を保護する必要性
@
会社支配面〜持株比率(議決権の比率)の低下
A
経済面〜利益配当の低下
既存株主を保護する為の通常の新株発行に関する一般的手続規制
新株発行の決定機関を代表取締役ではなく取締役会としている(280条の2第1項本文)
取締役貝の新株発行権限についても、会社設立字の会社発行総数を会社の発行予定株式総数は発行済株式総数の4分の1以上とする166条3項、発行予定株式総数は発行済株式総数の4倍以内とする347条により、無制限な新株発行を阻止する
株式譲渡が自由ないわゆる公開会社の場合(204条1項本文)
既存株主の経済的不利益については配慮するが、会社支配面の不利益については基本的に配慮せず、会社の機動的な資金調達を優先する
授権資本制度を有効に活用し、かつ、会社によってより有利な新株発行を可能とするため、株主には新株引受件を認めず(280条の2第1項5号)、株価の著しい低下を招く有利発行の場合を除き(280条の2台2項)、株主は新株発行に関与しえないものとする
定款に株式譲渡制限規定をおくいわゆる閉鎖会社の場合(204条1項但書)
280条の5の2第1項本文は、いわゆる閉鎖会社について株主の新株引受権を法定し、同条但書は、株主以外のものに新株を発行する場合には株主総会の特別決議を要求する
新株の発行方法と株主の新株引受権
新株発行の3態様
株主割当、第三者割当、募集
商法は、株主割当てと第三者割当について、取締役会でその数、発行価額その他の事項を決定すべきことを定めている(280条の2第1項)。募集の場合については、特に規定はない
株主割当
株主割当とは、既存株主にその持株数に比例して新株引受権を付与して新株を発行する方法
閉鎖会社を除き(280条の5の2第1項本文)、株主の新株引受権は保障されていない
*
発行価額は時価より低くてもよく、時価と額面の中間価額を発行価額とする例が多い
第三者割当
第三者割当とは、特定の第三者に新株引受権を付与して新株を発行する方法をいう
取締役会の決議で自由に第三者割当の方法をとることができるが、第三者に特に有利な発行価額で新株引受権を付与する場合には、株主総会の特別決議が必要である(280条の2第2項)
*
特定の株主または一部の株主にのみ新株引受権を付与する場合は、第三者割当
募集
募集とは、不特定のものから株式引受人を募集する方法をいい、広く一般から株式引受人を募集する公募と、株主・取締役・会社の取引先など特定の範囲のものから株式引受人を求める縁故募集とがある
株主の新株引受権
新株引受権とは、会社が発行する新株を優先的に引き受けることができる権利をいい、株主の新株引受権とは、株主がその持株数に応じて新株を優先的に引き受けることができる権利をいう
既存株主にとっての機能
旧株について生じる不利益を、新株の引き受けにより填補することができる機能を有する
・
持ち株比率の維持
・
旧株の価値下落による経済的損失の填補
会社にとっての機能
予定していた資金調達を確実に成功することができるという機能
株主の新株引受権に関する商法の立場
公開会社
新株引受権は認められないが、定款をもって、株主に新株引受権を与える旨を定めることができる(280条の2第1項本文)
取締役会決議により、株主割当の方法をとることもできる(280条の2第1項5号)
閉鎖会社
法律上、株主の引受権が保障されている(280条の5の2第1項本文)
株総会の特別決議により、株主以外のものに対し新株引受権を付与することができる(同条但書)
株主引受権の譲渡
株主に新株引取権を付与したうえで、その新株引受権の譲渡を認めるときは、その旨を取締役会で決定することを要する(280条の2第1項6号)
新株引受権の譲渡は、新株引受権証書の交付によってなす必要がある(280条の6の3第1項)
新株引受権の公告
割当日の公告
会社は一定の日(割当日)を定め、その日に株主名簿に記載されている株主に新株引受権を割当てられる旨を、その日の2週間前に公告しなければならない(280条の4第2項)
*
割当日が名簿閉鎖期間中であるときは、その期間の初日の2週間前に公告することを要する
失権予告附申込催告
会社は株主に対し、各自が引受権を有する株式の額面・無額面の別、種類および数と一定の期日(申込期日)までに申し込みをしないときはその権利を失うべき旨、また、新株引受権の譲渡を認めるときはその旨、および、一定の期間内に限り株主が新株引受権証書の発行を請求しえる旨の定めがあるときはその旨を、申込期日の2週間前に通知・公告をしなければならない(280条の5)
失権株の処置
失権予告つき申込催告をした場合に、株主が所定の申込期日までに申し込みをしないときは、その株主は新株引受権を失う(280条の5第4項)これを失権株という
失権株について、改めて株式引受人を募集する場合には、当初の発行価額ではなく、公正な発行価額によらなければならない
新株発行事項の決定
決定機関
通常の新株発行の決定は、原則として取締役会が行う(280条の2第1項本文)
会社は定款をもって新株発行の決定を株主総会で行う旨を定めることもできる
株主総会を要する場合
・
株主以外のものに特に有利な価額で新株を発行する場合(280条の2第2項)
・
閉鎖会社において株主以外の者に新株を発行する場合(280条の5の2第1項但書)
取締役の決議事項(280条の2第1項)
額面無額面の別・種類・数(1号)
発行価額・払込期日(2号)
@
発行価額の最低限の定めはなく、額面株式を券面額未満で発行することが禁止されるにすぎない(202条2項)
第三者に対して割当てる場合には、発行価額は原則として時価を基準とすべきことになる
第三者に特に有利な発行価額で新株を割当てる場合には、取締役会の決定だけでは足りず、株主総会の特別決議が必要となる
A
払込期日は、新株引受人が出資をなすべき最終日であって、この払込期日の翌日から新株発行の効力が生じる(280条の9第1項)
新株発行の除油研(発行価額、払込期日、申込証拠金など)は、その発行ごとに均一でなければならない(280条の3)
発行条件均一の原則は、同一種類の株式について適用され、株式の種類の違いに応じて格別の定めをすることまで禁じているものではない(222条3項)
現物出資(3号)
新株発行に際し現物出資をするものがあるときは、その氏名、出資の目的たる財産、その価額、ならびに、これに対して与える株式の額面・無額面の別、種類、数を取締役会で決定しなければならない
設立時と異なり、現物出資に関する制限はない(168条2項)
原則として裁判所の選任する検査役の調査を受けなければならない(280条の8第1項)
*
現物出資者に与える株式数が、発行済み株式総数の10分の1を超えず、かつ、新たに発行する株式の5分の1を超えず、または、現物出資の目的財産の価格の総額が500万円を超えないときは、検査役の調査を要しない(同条項但書)
払込剰余金の設定(4号)
株主の新株引受権(5号〜7号)
第三者に対する有利発行(8号)
抱合せ増資(9号)
新株発行の手続
株式引受人の募集
募集の方法をとる場合には、取締役会の決議に従って代表取締役が株式申込人を募集
株主割当・第三者割当の方法をとる場合には、それぞれ株主・第三者に新株引受権が付与される
株式の申込
代表取締役は、280条の6の規定された事項を記載した株式申込証を作成し、株式申込人は、この株式申込証に、自己の引き受ける新株の数、住所を記載して署名することを要する(280条の14第1項・175条1項)
株式の割当
募集の方法をとる場合には、株式申込人のうちの誰に新株を割当てるかは、取締役会が自由に決定することができる(割当事由の原則)
株主割当の方法をとる場合には、株主は持ち株比率に応じて当然に新株引受権を有するので、会社は株主に新株を割当てる義務を負い、さらに、第三者割当の方法をとる場合にも、代表取締役と第三者との契約により新株引受権が具体化すれば、同様の義務を負う
新株発行事項の公示
会社は払込期日の2週間前に、新株の額面・無額面の別、種類、数、発行価額、払込期日および募集の方法を公告し、または、株主に通知しなければならない(280条の3の2)
*
以下の場合には、会社は公示をしなくてもよい(280条の3の3)
・
株主に新株引受権を与えて新株を発行するとき(1項)
・
株主総会の特別決議で第3者に対し特に有利な発行価額で新株を発行するとき(1項)
・
株主割当の場合に生じる端数を合わせて株式を発行するときおよび失権株について株主を求めるとき(2項)
出資の履行
新株の引受けが成立したならば、株式引受人は、払込期日までに発行価額の全額を払い込まなければならず(280条の7)、また、現物出資の目的物の全部を給付しなければならない(280条の14第1項・177条3項・172条)
その際、資本充実を確保する為、払込取扱金融機関に対し払込をなすこと(280条の14第1項、177条2項)、払込取扱金融機関の保管証明を必要とすること(280条の14第1項・189条)、払込について相殺が禁止されること(200条2項)など、設立の場合と同様の規則がなされている
新株発行の効力発生時期と変更の登記
新株発行の効力発生時期
払込または現物出資の給付を履行した引受人は、払込期日の翌日より株主となる(280条の9第2項)
失権株式
新株発行は、払込期日までに出資を履行しなかった株式引受人は、当然に失権する(280条の9第2項)
新株の引受けをなしたが、払込期日までに払込をしない株式引受人は、失権するだけでなく、会社に対し損害賠償責任を負う(280条の9第3項)
変更の登記
新株発行が効力を生じることによって、会社の発行済株式総数や資本などに変更を生じるので会社は変更登記をしなければならない(188条2項5号、6号、3項・67条)
新株引受けの無効・取消主張の制限
新株発行による変更の登記が行われた日から1年が経過したあとは、錯誤もしくは株式申込証、新株引受証書の要件の欠陥を理由として引受の無効を主張することはできず、詐欺もしくは脅迫を理由としてその引受を取消すことはできない(280条の12)
取締役の引受担保責任
新株は項による変更の登記があったにもかかわらず、なお引受のない株式があるときは、取締役が共同してこれを引き受けたものとみなされ(280条の13第1項前段)、取締役は連帯して払込をなす義務を負う(203条1項)
引受が詐欺、脅迫、無能力を理由に取消された場合も同様である(280条の13第1項後段)
取締役の不足額填補責任
現物出資の目的たる財産の新株発行答辞における実価が、取締役会の決議によって定めた価格に著しく不足するときは、その決議に賛成した取締役は、会社に対して連帯してその不足額を支払う義務を負担する(280条の13の2第1項)
第三者に対する有利発行
株主以外の第三者に対し特に有利な発行価額で新株を発行する場合には、そのものに対し発行することができる株式の額面・無額面の別、種類、数および最低発行価額について、株主総会の特別決議を経なければならない(280条の2第2項)
理由の開示
株主総会の特別決議の際に、代表取締役は、株主以外のものに対し特に有利な発行価額をもって新株を発行することを必要とする理由を開示しなければならない(280条の2第2項)
株主総会決議の効力
株主総会の特別決議は、決議後最初に発行する新株であって、決議の日より6ヶ月以内に払込がなされるべきものについてのみ効力を有する(280条の2第4項)
違法発行に対する借置
新株発行差止請求権
要件(280条の10)
・
会社が法令・定款に違反しまたは著しく不公正な方法によって新株を発行しようとしていること
・
それによって株主が不利益を受けるおそれがあること
差止の手続
新株発行差止め請求権を行使する株主は、裁判害で直接会社に対し請求することも、また、会社を被告として新株発行差止の訴えを提起し、これを本案として差止の仮処分を求めることもできる
不公正価額での新株引受人の責任
公正価額との差額の支払
発行価額が著しく不公正であり、かつ、取締役との間に通謀があった場合、株式を引き受けた者は、会社に対し公正な発行価額との差額を会社に支払う義務を負う(280条の11第1項)
責任追及の方法
法は株主が著しく不公正な発行価額で新株の発行を受けたものを被告として代表訴訟を提起することができるものとしている(同条2項)
新株発行無効の訴え(280条の15第1項)
無効原因
・
授権株式数を超過した場合
・
定款で認めていない種類の株式を発行した場合
・
定款で認めていない株主の新株引受権を無視した場合
・
額面株式の発行価額を額面に満で発行した場合
無効主張の可及的制限
主張期間
新株発行の日から6ヶ月以内に限り、提起することができる(280条の15第1項)
主張権者
株主、取締役、監査役に限り、提起することができる(同条2項)
主張方法
訴えの方法によってのみ主張することができる(同条1項)
無効判決の効果
新株発行を無効とする判決が確定したときは、新株は将来に向かってその効力を失う(280条の17第1項)
新株発行無効判決には遡及効はない
会社は、株券を回収しなければならず、遅滞なくその旨および3ヶ月をくだらない一定の期間内に株券及び端株券を会社に提出すべき旨を公告し、かつ、株主および登録質権者に格別に通知しなければならない(同条2項)
会社は、新株の株主に対し、その株式につき払い込まれた金額の支払いをしなければならない(280条の18第1項)
無効判決は、当事者間のみならず第3者に対する関係においても効力を有する(対世的効力:280条の16・109条)
W特殊の新株発行
抱合せ増資
意義
・
利益もしくは法定準備金を資本に組み入れ、発行価額の一部を株主に払い込ませることによって新株を発行する
・
額面株式の発行価額中堅面額を超えて資本に組入たものがあるときは、新たに券面額を発行価額として新株を発行する際に、発行価額中の一部についてはすでに券面総額を超えて資本に組入た部分を当て、残額について株主から払込を受ける方法をとることができる(280条の9の2第1項)
制限
・
無償分については株主が権利を有している為、それに相当する新株につき株主に新株引受件を保障し、さらに無償分の換価を可能にするため、新株引受権の譲渡性を認めることが必要となる為、新株引受権証書の発行が不可欠となる
・
額面金額を発行価額として額面株式を発行する場合に限る
・
1株あたりの純資産額が5万円未満となる抱合せ増資は禁止
株式分割
株式分割とは、既存の株式を細分化して従来よりも多数の株式にすることをいう
株式分割の効力は、株式分割の取締役決議において別段の定めをなした場合を除き、割当日において効力を生じる(219条2項)
転換株式の転換
数種の株式が発行されている場合において、ある種類の株式から他の種類の株式に転換することのできる権利(転換権)が与えられた株式を転換株式という(222条の2)
転換権の行使により、既存の株式が消滅して、その代わりに別の株式が発行されるが、その新株の発行価額は転換株式の発行価額と同額とされ(222条の3)、新たな払込を要しないため、新株発行により純資産は増加しないが、場合により資本は増加する
新株引受権附社債の新株引受権の行使
新株引受権が付与された社債を新株引受権附社債という(341条の8以下)
新株引受権の行使により、株式が発行されるが、既存の社債は消滅しない為、新株の発行価額は現金で払い込まれるのが原則
新株引受権を行使したものは、払込のときに株主となる(341条の17)
社債権者の請求により新株引受件附き社債の償還に変えてその発行価額をもって新株の発行価額の払込とすることができる旨を定めておくこともでき(341条の8台2項6号)、この場合には転換社債の転換の場合と同様の効果が生じ、社債の消滅により負債も減少する
いずれの場合も、純資産も資本も増加する
吸収合併
合併とは、2個以上の会社が契約により1個の会社に合同することをいう(吸収合併:当時会社の一つが存続して他の解散会社を吸収する場合)
存続会社では、包括承継した解散会社の財産を引当に、原則として、新株発行がなされ、解散会社の株主には合併比率に応じて存続会社の株式が割当てられることになる
存続会社では純資産も資本も増加する
X社債の発行
社債の意義
社債とは、公衆に対する起債によって生じた株式会社に対する債権であって、これについて有価証券が発行されるものをいう
社債と株式の異同
共通点
・
株式会社が一般公衆から長期・多額の資金を調達する手段として発行される
・
原則として取締役会決議で発行できる(280条の2第1項、296条)
・
全体を多数の割合的単位に分けている(202条1項、299条)
・
流通性を高めるために有価証券が利用されている(226条1項、306条)
相違点
株主〜株式会社の構成員
社債権者〜債権者
・
株主は、配当可能利益より利益の配当を受けることができ(290条1項)、その額は予め確定したものではない
社債権者は、配当可能利益の有無に関わらず、確定額の利息の支払いを受ける権利を有する(301条2項4号)
・
株主は、会社存立中、原則として株金の払い戻しを受けることができない
社債権者は、償還期限が来れば償還を受ける(301条2項5号)
・
株主は、会社が解散したときには、残余財産の分配を受けることができるが(425条)、会社の構成員であるから一般債権者、社債権者の後順位であり全債務を弁済したあとに始めて残余財産の分配を受ける(430条1項・131条)
・
株主は、会社の経営に関与する権利として、株主総会における議決権を有し(241条1項)、種々の監督是正権がある
社債権者にはこのような権利はない
株式と社債の接近化現象
株式の社債化
株式の利殖証券化の面〜配当優先株(222条)、特に非参加的累積的優先株
非参加的累積的優先株とは、配当優先株の一種であり、ある年度に優先配当がなされないと、次年度以降に優先権が繰り越されるものであって(累積的)、他方、利益が多くあがっても、一定額以下配当を受けられない(非参加的)ものである
利益をあげ配当している会社であれば、長い目で見ればおおむね一定額の経済的利益を受けられる点で社債に似ている
投下資本の回収の面〜償還株式(222条)
発行当初から株式の消却が予定され、会社存続中であっても利益による償還が認められた株式
利益がなければ償還できない点で社債とは異なるが、任意積立金により実際には確実に償還できるようにするのが通常である
経営参加の面〜議決権なき株式(242条)
社債の株式化
転換社債(341条の2)
新株引受権附き社債(341条の8)
社債の種類
担保付社債と無担保社債
担保付社債
社債の元利金の支払いを確実にするため社債に物的担保をつけたもの
無担保社債
社債の元利金の支払いが発行会社の一般的な信用にのみ依存しており、何ら担保の提供のない社債
普通社債・転換社債・ワラント債
普通社債
期限がくれば社債権者が償還を受け、それまでの間は約定の利息の支払いを受ける通常の社債
転換社債
株式に転換することのできる権利(転換権)のついて社債
新株引受権附社債(ワラント債)
社債に新株引受権が付着したもので、社債権者は新株引受権を行使して株式の発行を受けると同時に社債権者としての地位も併せて保有できる
記名社債と無記名社債
記名社債
社債券および社債原簿に社債権者に氏名が記載されているもの
無記名社債
記載がないもの
社債の発行
社債の発行
社債発行限度の規制廃止
改正法(H5,297条)は、社債は項限度の規制を廃止する代わりに、社債権者の為に社債管理会社をおくべきことを義務付け、これに適切な権限を付与するとともに厳重な義務と責任を負わせ、その管理を通じて社債権者の利益を図ることにした
社債の合同発行
2つ以上の会社が合同して社債を発行することもできる(304条)
この場合には、各会社の負担部分について社債申込証に記載させることについて定める(301条2項9号)
社債発行の制限
・
会社は前に募集した社債総額の払込をなさしめた後でなければ、さらに社債を募集することはできない(298条)
・
同一種類の社債にあっては書く社債は均一の金額であるかまたは最低額をもって整除できる金額でなければならない(299条)
・
割増償還の場合の割増率の同一
すなわち、社債権者に償還すべき金額を券面額以上のものと定めるときはその超過額は各社債につき同率にしなければならない(300条)
社債の発行手続
取締役会で発行事項に関し決議しなければならない(296条)
発行会社は、銀行または信託会社との間で社債権者の為に社債の管理をなすべきことを委託する契約を結ぶ必要がある(297条本文)
社債金の払込・社債券の発行
社債金の払込
社債の募集が完了したときは取締役は遅滞なく各社債につきその全額または第1回の払込をさせなければならない(303条)
社債募集の完了
社債の応募額が社債申込証に記載した社債総額に達しないときでも応募額をもって社債を成立せしめる旨を社債申込証に記載していたときは、その応募額をもって社債の総額とする(301条3項)
社債券の発行
商法は、社債全額の払込があった後でなければ債権を発行してはならないとだけ定める(306条1項)
社債の管理
社債原簿
取締役は、会社が社債を発行したときは社債原簿を作成し、これを本店に備え置かなければならない(263条1項)
社債原簿には、社債権者の氏名・住所、債権の番号、無記名社債のときはその数、番号、発行年月日などを記載することを要する(317条)
株主および会社債権者は、発行会社に備え置かれた社債原簿を閲覧・謄写することができる(263条2項)
社債管理会社
発行会社が社債管理会社を定め、社債権者の為に弁済の受領、債権の保全その他の社債の管理をなすべきことを委託することを義務付けた(297条本文)
社債管理会社の資格は、銀行、信託会社または担保付社債信託法5条の免許を受けた会社に限られる(297条の2)
例外(297条但書)
・
各社債の金額が1億円を下らない場合
・
社債権者の数が50人未満である場合
社債管理会社の権限
法定権限
社債管理会社は、社債権者のために弁済を受けまたは債権の実現を保全するのに必要な一切の裁判上または裁判外の行為をなす権限を有する(309条1項)
社債権者集会を召集する(320条1項)など
約定権限
社債管理会社と発行会社との間で社債の管理についての委任契約が締結される際に、法定権限以外に約定によって社債管理会社に種々の権限が付与されることがある
社債管理会社の義務
公平誠実義務
社債管理会社は社債権者の為に公平かつ誠実に社債の管理をなすことを要する(297条の3第1項)
社債管理会社が一部の大口社債権者のみを優先的に扱うなど不公平な扱いをしたために損害を受けた社債権者は社債管理会社に対し損害賠償請求を有する(311条の2第1項)
善管注意義務
社債管理会社は社債権者に対し善良な管理者の注意を管理する義務を負う(297条の3第2項)
社債管理会社の責任
社債管理会社が商法または社債権者集会の決議に違反する行為を行い、これによって社債権者に損害が生じたときは、社債管理会社は、2つ以上あるときは連帯して損害賠償をする責任がある(311条)
社債権者集会
社債権者集会とは、同じ種類の社債権者で構成される臨時的な会議体である
召集権者
発行会社または社債管理会社が召集する(320条1項)
社債総額の10分の1以上にあたる社債権者は、会議の目的たる事項および召集の理由を記載した書面を提出して発行会社または社債管理会社に社債権者集会の召集を請求することができる(同条3項)
召集手続については株主総会の規定が準用されている(339条1項)
決議事項・決議方法
商法に規定されている事項のほか裁判所の許可を得て社債権者の利害に重大な関係を有する事項について決議することができる(319条)
各債権者は社債の最低額につき1個の議決権を有する(321条1項)
書面による議決権行使も認められている(321条の2)
発行会社および社債管理会社も出席して意見を述べることができる(322条1項)
社債権者集会の召集権者は議事録を作る義務があり、議長ならびに発行会社および社債管理会社の各代表者は署名しなければならない(339条2項)
社債権者集会の決議は裁判所の認可によりその効力が生じる(327条1項)
社債の譲渡・質入
記名債権(我が国ではほとんどない)
譲渡の合意と債券の交付により当事者で成立
会社その他の第三者に対抗する為には、社債原簿に取得者の氏名および住所を記載しかつその氏名を債券に記載しなければならない(307条1項)
無記名債券
当事者間の譲渡の合意と証券の引渡しにより譲渡の効力が生じ、その継続的占有(所持)が会社その他の第三者に対する対抗要件となる
利息の支払・償還
利息の支払
記名社債の場合は、発行会社の社債原簿の記載に従ってそれぞれ所定の日に利息が支払われるべきことになる
無記名社債の場合は、社債券に利札がつけられており、利札と引き換えに支払われる
利札は、それ自体が利息支払い請求権を表章した有価証券であり、債券と切り離して譲渡することもできる
社債の償還
所定の期限までに会社は社債を償還しなければならない
転換社債
転換社債とは、社債権者にその発行会社の株式に転換する権利(転換権)が与えられた社債である
転換社債は、社債の持つ安全性と株式の持つ投機性が併存している
発行手続
転換社債は、原則として取締役会決議によってはこうでき、株主以外の第3者に対し特に有利な転換の条件を付して発行する場合には株主総会の特別決議が必要(341条の2第2項7号、3項)
株主に引受権を与えて転換社債を発行することができ、その場合には、転換により発行すべき株式の発行価額が額面であるときでも、取締役決議で足り、株主はその持株数に応じて引受権を与えられる(341条の2の4第1項)
閉鎖会社の株主にはこの引受権が保障され、第三者に発行する場合には株主総会の特別決議が必要である(341条の2の6)
新株引受権附社債(ワラント債)
新株引受権社債とは、社債権者に起債会社(発行会社)の新株引受権を与えた社債である
社債権者は、所定の期間内に、発行時に定められた所定の価額で起債会社の新株を引き受けることができる権利(新株引受権)を与えられている
分離型と非分離型
商法は、新株引受権附社債の発行に際して、発行会社は新株引受権だけを社債から分離して譲渡することができるものとして発行すること(分離型)も、または新株引受権だけを社債から分離して譲渡することはできないもの(非分離型)として発行することもできることとしている(341条の8第2項5号)
代用払込型
新株引受権附社債の権利者が、引受権を行使して新株の発行を受けるには、所定の発行価額(行使価額)の全額を現金で払い込まなければならない(341条の16台1項)が、発行会社は引受権を行使しようとするものの請求があるときは、新株引受権附社債の償還に代えてその発行価額をもって払込があったものとみなす方式のワラント債を発行することができる(341条の8第2項6号)
新株引受権附社債の発行の決議
新株引受権附社債は、定款で株主総会の決議による旨の定めがないかぎり、取締役会の決議によって発行する(341条の8第2項)
分離型の発行および第三者に対する有利な内容のワラント債の発行については、株主総会の特別決議が必要である(341条の8第4項、5項)
T計算書類の作成・開示
計算書類
貸借対照表
損益計算書
営業報告書
営業報告書には、会社の状況に関する重要な事項を記載しなければならない(計規45条)
利益処分案(損失処理案)
P/LおよびB/Sによって算出された当期未処分利益または当期未処理損失について、どれだけの額を利益配当、役員賞与などとし、どれだけの額を会社に留保するか、あるいは当期損失をどのように処理するかについて取締役が立てた案
付属明細書
付属明細書は、B/S、P/L、営業報告書の記載を補足する重要な事項を記載した書類である(計規46条1項)
計算書類の開示
代表取締役は、計算書類、付属明細書および監査役の監査報告書を(大会社はこれに加えて会計監査人の監査報告書)本店に5年間、その謄本を支店に3年間備え置かなければならない(282条1項)
株主および会社債権者は営業時間内いつでもこれらの計算書類の閲覧を請求することができ、会社の定めに費用を払うことによりその謄本もしくは抄本の交付を請求することができる(282条2項)
中会社の定時総会の召集通知には、計算書類および監査報告書の謄本を(283条2項)、大会社の定時総会の召集通知にはそれに加えて会計監査人の監査報告書の謄本を(商特15条)添付しなければならない
計算書類は、定時総会で報告され、その承認を受けなければならない
承認後、代表取締役は遅滞なくB/Sまたはその要旨を公告しなければならず(283条3項)、大会社の場合には、それに加えて損益計算書またはその要旨を公告しなければならない(商特16条2項)
株主の経理検査権
株主は計算書類を通じて会社の業務および財産の状況を知りうるが、さらに必要があれば、会社の経理について検査する権限も付与されている〈帳簿閲覧権と検査役選任請求権〉
株主の帳簿閲覧請求権(293条の6)
請求権が認められるのは、会社の発行済株式の総数の100分の3以上にあたる株式を有する株主(293条の6第1項)
株主が会計帳簿などの閲覧・謄写を請求するには、理由を付した書面を会社に提出しなければならない(同条2項)
会社は、株主の請求が、株主としての資格において会社に対して有する権利の行使とは認められず、権利の濫用にあたる場合には、その請求を拒むことができる(293条の7)
検査役の選任請求
会社の業務の執行に関し不正の行為または法令・定款に違反する重大な事実があることを疑うべき事由があるときは、発行済み株式総数の10分の1以上にあたる株式を有する株主は、会社の業務および財産の状況を調査せしめるため、裁判所に検査役の選任を請求することができる(294条1項)
裁判所により選任された検査役は、会社の業務および財産を調査し、調査の結果を裁判所に報告し、裁判所は、必要と認めたときは代表取締役に株主総会の招集を命じることができる(294条2項)
U資本・準備金
資本
資本とは、会社財産を確保するための基準となる一定の計算上の数額をいう
資本制度の趣旨
株式会社において、株主は有限責任を負うだけで、会社債権者に対しては何らかの責任も負わない(200条1項)ため、会社債権者の担保となるのは、会社財産のみとなる
商法は、会社財産を確保するために資本制度を採用する
資本制度の概要
商法は、株式会社に対し、会社財産を確保するための基準となる一定の計算上の数額として、1000万円以上の資本の額を定め(最低資本金制度:168条の4)、登記と貸借対照表により、この資本の額を公示することを要求する(188条2項6号、188条3項・64条2項・67条、283条3項)
これにより、少なくとも、この資本の額に相当する現実の会社財産を保有すべきことを要求する
発行価額に関する制限
額面株式の発行価額は、券面額未満となること(割引発行)が許されない(202条2項)
資本組入に関する制限
資本の構成は、額面株式も、無額面株式と基本的に同様であって、原則として発行済株式の発行価額の総額が資本となる(284条の2第1項)
ただし、発行科学の2分の1を超えない額を資本に組入ないことができ(同条2項本文)、この資本に組入ない額は、払込剰余金として資本準備金となる(288条の2第1項1号)
額面株式の場合は、少なくとも券面額相当分は資本に組入なければならない(284条の2第2項但書)ため、会社の設立に際して額面株式を発行する場合には、5万円以上(166条2項、202条2項)の資本組入が強制される
現行法における券面額のもつ機能(株金総額=券面額x発行済株式総数<資本)
現行法のもとでは、額面株式は券面額以上で発行され(202条2項)、しかも、その発行価額のうち券面額相当分の資本組入れが強制される(284条の2第2項但書)
このため、券面額は、資本の最低限度額を画する機能を有していると解されている
準備金
貸借対照表の資産の部の合計額から負債の部の合計額を控除した残額を純資産といい、会社の純資産額が資本額を超える場合に、その超過した額を一定の目的の為に会社に積立てた額が準備金(または積立金)である
準備金には、商法の規定に従って積立てられる法定準備金と、定款または株主総会の決議によって積立てられる任意積立金とがある
法定準備金
法廷準備金とは、資本の欠損を填補するために商法が積立てを強制する準備金をいう
法定準備金は、その積立ての財源により利益準備金と資本準備金の2種がある
利益準備金
利益準備金は、利益を財源とする準備金である
会社はその資本の4分の1に達するまでは、毎決算期に利益の処分として支出する金額(利益配当、役員賞与)の10分の1以上を、および、中間配当をなすごとにその分配の10分の1を、利益準備金として積立てなければならない(288条)
会社の純資産額がその資本と法定準備金の合計額に満たない場合を資本の欠損というが、利益準備金はこの資本の欠損に充てられる
資本準備金
資本取引から生じる剰余金を財源とする積立金を資本準備金という
資本準備金は、その財源が資本の性質を帯びているがゆえに積立てるべきものとされるのであって、その限度額を定めるべき性質のものではないから、その財源に属する金額はすべて積立てなければならない
商法は、資本準備金の財源として、3つを定めている(288条の2)
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株式の発行価額中に資本に組入ない額(払込剰余金)
発行科学の2分の1を超えないこと、株式については券面額を超える部分であること、設立時の無額面株式については5万円を超える部分であること、という法定要件(284条の2第2項)を満たす範囲で資本に組入ないことができる
この場合、資本に組入ない額(払込剰余金)は、必ず資本準備金として積立てる必要がある(288条の2第1項)
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減資差益金
減資差益剰余金ともいわれ、資本減少により減少した資本の額が、そのための株式の消却または払戻しに要した金額および欠損の填補に充てた金額を超える額のことである
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合併差益金
合併により消滅した会社から承継した財産の価額が、その会社から承継した債務の額、その会社の株主に支払った金額および409条の2の規定によりその会社の株主に移転した株式につき会計帳簿に記載した価額の合計額ならびに存続会社の増加した資本額または新設会社の資本額を超える額(合併差益金)は、資本準備金として積立てなければならない(288条の2第1項5号)
法定準備金の使途
資本の欠損填補
資本の欠損の填補または資本組入れ以外の者に使用することはできない(289条1項)
法定準備金で資本の欠損を填補する際には、取り崩しの順序が法定されており、利益準備金をもって、まず資本の欠損填補に充て、それでなお不足する場合に資本準備金をもって充てるべきものとされている(同条2項)
法定準備金の資本組入
会社は、取締役会の決議により法定準備金の全部または一部を資本に組入ることができる(293条の3)
任意準備金(任意積立金)
定款の規定または株主総会の決議によって積立てられる準備金
続きはまだあるのですが、ここで断念。